帰宅
王都を出て四日目。
丘を越える。
その先に。
見慣れた街が見えた。
「サイファだな」
俺が言う。
アクセルも頷く。
「ああ」
ようやく帰ってきた。
ノアはあれからも時折考え込む仕草を見せていた。
だが。
普段通りでもあった。
答えはまだ出ていないらしい。
それならそれで良い。
今は帰る方が大事だった。
⸻
拠点へ戻る。
扉を開く。
見慣れた部屋。
見慣れた庭。
旅の間は恋しくなるものだ。
荷物を置く。
一息つく。
すると。
アクセルが真っ先にソファへ向かった。
どさり。
遠慮なく腰を下ろす。
「生き返るな」
「分かる」
俺も頷いた。
⸻
テラは違った。
旅装を丁寧に外している。
弓を確認する。
矢筒を整える。
いつも通りだった。
⸻
ノアは無言だった。
そのまま自分の部屋へ入っていく。
考え事の続きだろう。
放っておくことにした。
⸻
俺は庭へ出る。
ここちゃんとむぎを下ろした。
⸻
途端。
ここちゃんが走り出す。
ぴょん。
ぴょん。
ぴょん。
庭を駆け回る。
嬉しそうだった。
久しぶりの庭だ。
無理もない。
⸻
一方。
むぎは違う。
一直線だった。
迷いがない。
庭の隅。
いつもの桶。
⸻
ぽす。
⸻
飛び込んだ。
「そこかよ」
思わず笑う。
むぎは満足そうだった。
どうやら帰ってきたらしい。
⸻
ここちゃんが跳ねる。
むぎが桶に収まる。
その光景を見ていると。
自然と肩の力が抜けた。
⸻
「帰ってきたな」
小さく呟く。
誰に言うでもない。
ただ。
そう思った。
⸻
その後はゆっくり過ごした。
アクセルはソファ。
テラは手入れ。
ノアは部屋。
俺は荷物整理だ。
⸻
王都で買った物を並べる。
ドライフルーツ。
保存瓶。
雑貨。
そして。
塩入れ。
⸻
トリュフ塩。
レンネ塩。
ズーラ塩。
ジグレ塩。
香草塩。
⸻
新しい容器へ移し替える。
「良いな」
思わず呟いた。
専用容器は良い。
非常に良い。
⸻
一通り終わった後。
俺は一人でギルドへ向かった。
帰還報告だけ済ませる。
ドラン達にも顔を見せておきたかった。
⸻
そして夜。
拠点へ戻る。
いつも通り料理を作る。
食べる。
片付ける。
⸻
最後に。
ドライフルーツを取り出した。
「ほら」
ここちゃんへ渡す。
きゅる。
嬉しそうな声が返ってくる。
むぎもキュと鳴いた。
⸻
旅は終わった。
王都も。
遺跡も。
今は置いておく。
⸻
その日は。
少しだけ早く休んだ。




