遺跡からの帰路
ノアは魔法陣を書き写した。
正面の壁画も。
文字も。
出来る限り記録していく。
テラも壁を調べていた。
隠し通路。
仕掛け。
追加の文字。
一通り確認する。
だが。
それ以上の発見はなかった。
アクセルも首を振る。
「魔物の気配もない」
静かすぎる遺跡だった。
⸻
「一旦戻るか」
俺が言う。
反対する者はいなかった。
分からないものは分からない。
資料は揃った。
なら考えるのは後だ。
⸻
上の階へ戻る。
出口へ向かう。
そして。
最後尾の俺が出口へ足を掛けた瞬間だった。
ゴゴゴゴゴ――
低い音が響く。
全員が振り返る。
⸻
壁が動いていた。
ゆっくりと。
横へ。
そして。
地下へ続く階段を完全に塞ぐ。
⸻
「閉じたな」
アクセルが言う。
「閉じたな」
俺も言う。
それ以上でも以下でもなかった。
⸻
「人が出ると閉じる仕組みか」
テラが呟く。
「そんな感じだろうな」
わざわざ開ける仕掛けがあった。
閉じる仕掛けがあっても不思議ではない。
今はそう考えるしかなかった。
⸻
「戻るか」
誰も異論はない。
白兎の庭は遺跡を後にした。
⸻
帰路は静かだった。
魔物は出た。
だが強くない。
問題にもならない。
ただ。
一人だけ違った。
⸻
ノアだった。
考え込んでいる。
歩きながら。
休憩中も。
焚き火の前でも。
ずっとだ。
⸻
「まだ考えてるのか」
俺が聞く。
「ああ」
ノアは頷く。
「分からない」
それだけだった。
だが。
ノアがそこまで悩むのは珍しかった。
⸻
翌日。
夕刻。
遠くに王都の門が見えた。
ようやく戻ってきたらしい。
ノアはまだ考えていた。




