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塩漬けの遺跡


 翌朝。


 白兎の庭は再び王都冒険者ギルドを訪れていた。


 レオンハルトが顔を上げる。


「決まったか」


「ああ」


 俺は頷く。


「受ける」


「そうか」


 レオンハルトは短く答えた。


 予想していたような顔だった。



 準備を整える。


 その日のうちに出発した。


 目的地は王都の南。


 徒歩で一日ほどの場所にある遺跡だ。


 街道を外れてからは人も減る。


 代わりに魔物は出た。


 だが。


 問題になるほどではない。


 アクセルが斬る。


 終わる。


 そんな程度だった。



 夕方。


 遠くに遺跡らしき影が見えた。


 そこで無理はしない。


 近くで野営する。


 明日調べれば良い。


 急ぐ依頼ではない。


 何年も塩漬けになっていたのだから。



 翌朝。


 遺跡へ向かう。


 近付く。


 そして。


 俺は見上げた。


「なんかパルテノン神殿みたいだな」


 柱が並んでいる。


 崩れている部分もある。


 だが。


 どこか荘厳だった。



 周囲に人影はない。


 柱の中央。


 地下へ続く階段だけが口を開けている。


「行くか」


 アクセルが前へ出る。


 俺達も続いた。



 地下は少しだけ冷えていた。


 ひんやりしている。


 だが。


 歩きにくくはない。


 階段を下る。


 やがて広間へ出た。



 壁一面に壁画が描かれている。


 らしい。


 崩れていた。


 欠けていた。


 風化していた。


「何だこれ」


 俺が呟く。


「分からん」


 アクセルも首を振る。



 一通り見て回る。


 人。


 動物。


 建物。


 そんなものが描かれていた気もする。


 だが。


 肝心な部分が崩れている。


 何を伝えたいのか分からなかった。



 その途中。


 妙な文様を見つけた。


 円。


 線。


 幾何学模様。


 どこか規則的だった。


「魔法陣か?」


「おそらく」


 ノアが近付く。



 難しい顔をしていた。


 珍しい。


「どうした」


「既視感がある」


 ノアが答える。


「だが分からない」


 さらに珍しかった。


 ノアが分からないと言うのは。



 俺は肩をすくめる。


 そのまま壁へ手をついた。


 瞬間。


 ゴゴゴゴゴ――


 低い音が響いた。



「……ん?」


 全員が振り返る。


 壁が動いていた。


 ゆっくりと。


 横へ。



 その奥。


 地下へ続く階段が現れる。



「俺か?」


 思わず言う。


「レインだな」


 アクセルが即答した。



「何かの装置だったのか」


 テラが呟く。


「らしい」


 俺にも分からない。


 だが。


 開いたものは仕方ない。



 警戒しながら下る。


 先頭はアクセル。


 その後ろを俺達が続く。


 やがて。


 次の階層へ辿り着いた。



 全員が足を止める。


 今度は崩れていなかった。


 壁画も。


 文様も。


 文字も。


 綺麗なまま残っている。



 正面。


 巨大な壁画。


 一見すると岩のように見えた。


 だが違う。


 表面には三角形の印が点々と刻まれている。


 線もある。


 規則性もある。


「……地図か?」


 思わず呟いた。



 右側。


 壁一面に描かれた魔法陣。


 先程見たものと似ている。


 だが。


 こちらは完全な形で残っていた。



 左側。


 文字だった。


 見たこともない文字列が壁一面に刻まれている。



 ノアは魔法陣へ向かう。


 テラは文字へ向かった。


 アクセルは周囲を警戒している。


 俺は正面の壁画を見る。


 役割は自然に分かれていた。



「何か分かるか」


 俺が聞く。


 返事は二つ同時だった。



「読める」


 テラ。



「分かった」


 ノア。



 思わず振り返る。


 ノアの目が見開かれていた。


 普段見ない顔だった。



「これは……」


 ノアが魔法陣を見つめる。


 声が僅かに震えていた。


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