表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
153/158

三度目の正直


 数日後。


 三度目の荷車が白兎の庭へやってきた。


 レインは外へ出る。


 そして。


 荷車の上を見た。


「……増えてないか?」


 最初の感想だった。


 鍛冶屋が笑う。


「気のせいだ」


「気のせいじゃないだろ」


 明らかに大きい。


 明らかに立派だ。


 大工が咳払いした。


「細かいことは気にするな」


「気になる」


 家具屋は何も言わない。


 妙に満足そうだった。



 長椅子が運び込まれる。


 レインは近付いた。


 まず座面。


 前より広い。


 厚い。


 そして柔らかい。


 背もたれも変わっていた。


 以前より少し後ろへ傾いている。


 さらに。


 肘置きまで付いていた。


「増えてるだろ」


「増えたな」


 鍛冶屋が認めた。


「必要だった」


 大工も認めた。


「必要だった」


 家具屋も認めた。


 三人とも悪びれない。



 レインが近付く。


 布が張られていた。


 丈夫そうな幌布。


 綺麗に張られている。


 座面。


 背もたれ。


 別々に固定されていた。


 縫い目も増えている。


 家具屋が言った。


「綿は寄らん」


「そうか」


「寄らん」


 自信満々だった。


 木枠を見る。


 接続部分には金具。


 背板もしっかり固定されている。


 鍛冶屋が胸を張った。


「緩まん」


「そうか」


「緩まん」


 こっちも自信満々だった。


 大工は背板を叩く。


「角度も変えた」


「なるほど」


「なるほどじゃない」


 三人同時だった。



 その時。


 ぴょん。


 ここちゃんだった。


 長椅子へ飛び乗る。


 中央へ移動。


 座る。


 少し沈む。


 止まる。


 きゅる。


 満足そうだった。


「テスターじゃない」


 家具屋が言う。


 ここちゃんは聞いていない。


 そのまま丸くなった。


 早い。


 さらに。


 むぎが胸ポケットから顔を出す。


 きょろきょろ。


 長椅子を見る。


 レインの腕を伝う。


 ぴょん。


 着地。


 とことこ歩く。


 ここちゃんの横へ。


 そして。


 埋まった。


 クッションの隙間へ半分沈む。


「キュ」


 気に入ったらしい。


「テスターじゃない」


 家具屋がもう一度言った。


 むぎも聞いていない。



「で」


 鍛冶屋が腕を組む。


「本命だ」


 全員の視線が集まる。


 テラだった。


「また私か」


「またお前だ」


 即答だった。


 テラは少し笑う。


 そして。


 長椅子へ座った。


 少し沈む。


 背もたれへ寄りかかる。


 肘を置く。


 本を開く。


 読む。



 ページをめくる。


 読む。


 まためくる。


 読む。


 さらにめくる。


 読む。


 鍛冶屋が呟いた。


「長いな」


「読書だからな」


 大工が答える。


「前回も長かった」


 家具屋も覚えていた。



 しばらくして。


 ようやく。


 テラが本を閉じた。


 立ち上がる。


 誰も喋らない。


 鍛冶屋。


 大工。


 家具屋。


 三人とも見ている。


 レインも見ていた。


「どうだ」


 聞いた。


 テラは長椅子を見る。


 少しだけ考える。


 そして。


「良いな」


 それだけだった。



 沈黙。


 そして。


「よし」


 鍛冶屋が言った。


「よし」


 大工も言った。


「よし」


 家具屋も言った。


 三人とも満足そうだった。


 レインは苦笑する。


「そこまで嬉しいか」


「嬉しい」


 家具屋が即答した。


「二回持って帰ったからな」


 大工も頷く。


「三度目でようやくだ」


 鍛冶屋も笑う。



 その横では。


 ここちゃんがぴょんっとソファから降りて伸びをした。


 むぎはいつの間にかテラの肩によじ登っている。


 テラは再び本を開く。


 アクセルは肘置きへ腕を乗せた。


 少しだけ目を細める。


「悪くない」


 珍しく感想が出た。


 レインは長椅子へ座る。


 背中を預ける。


 確かに。


 悪くない。


 いや。


 かなり良い。


 職人達を見る。


 三人とも妙に満足そうだった。


 たぶん。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ