三度目の正直
数日後。
三度目の荷車が白兎の庭へやってきた。
レインは外へ出る。
そして。
荷車の上を見た。
「……増えてないか?」
最初の感想だった。
鍛冶屋が笑う。
「気のせいだ」
「気のせいじゃないだろ」
明らかに大きい。
明らかに立派だ。
大工が咳払いした。
「細かいことは気にするな」
「気になる」
家具屋は何も言わない。
妙に満足そうだった。
⸻
長椅子が運び込まれる。
レインは近付いた。
まず座面。
前より広い。
厚い。
そして柔らかい。
背もたれも変わっていた。
以前より少し後ろへ傾いている。
さらに。
肘置きまで付いていた。
「増えてるだろ」
「増えたな」
鍛冶屋が認めた。
「必要だった」
大工も認めた。
「必要だった」
家具屋も認めた。
三人とも悪びれない。
⸻
レインが近付く。
布が張られていた。
丈夫そうな幌布。
綺麗に張られている。
座面。
背もたれ。
別々に固定されていた。
縫い目も増えている。
家具屋が言った。
「綿は寄らん」
「そうか」
「寄らん」
自信満々だった。
木枠を見る。
接続部分には金具。
背板もしっかり固定されている。
鍛冶屋が胸を張った。
「緩まん」
「そうか」
「緩まん」
こっちも自信満々だった。
大工は背板を叩く。
「角度も変えた」
「なるほど」
「なるほどじゃない」
三人同時だった。
⸻
その時。
ぴょん。
ここちゃんだった。
長椅子へ飛び乗る。
中央へ移動。
座る。
少し沈む。
止まる。
きゅる。
満足そうだった。
「テスターじゃない」
家具屋が言う。
ここちゃんは聞いていない。
そのまま丸くなった。
早い。
さらに。
むぎが胸ポケットから顔を出す。
きょろきょろ。
長椅子を見る。
レインの腕を伝う。
ぴょん。
着地。
とことこ歩く。
ここちゃんの横へ。
そして。
埋まった。
クッションの隙間へ半分沈む。
「キュ」
気に入ったらしい。
「テスターじゃない」
家具屋がもう一度言った。
むぎも聞いていない。
⸻
「で」
鍛冶屋が腕を組む。
「本命だ」
全員の視線が集まる。
テラだった。
「また私か」
「またお前だ」
即答だった。
テラは少し笑う。
そして。
長椅子へ座った。
少し沈む。
背もたれへ寄りかかる。
肘を置く。
本を開く。
読む。
⸻
ページをめくる。
読む。
まためくる。
読む。
さらにめくる。
読む。
鍛冶屋が呟いた。
「長いな」
「読書だからな」
大工が答える。
「前回も長かった」
家具屋も覚えていた。
⸻
しばらくして。
ようやく。
テラが本を閉じた。
立ち上がる。
誰も喋らない。
鍛冶屋。
大工。
家具屋。
三人とも見ている。
レインも見ていた。
「どうだ」
聞いた。
テラは長椅子を見る。
少しだけ考える。
そして。
「良いな」
それだけだった。
⸻
沈黙。
そして。
「よし」
鍛冶屋が言った。
「よし」
大工も言った。
「よし」
家具屋も言った。
三人とも満足そうだった。
レインは苦笑する。
「そこまで嬉しいか」
「嬉しい」
家具屋が即答した。
「二回持って帰ったからな」
大工も頷く。
「三度目でようやくだ」
鍛冶屋も笑う。
⸻
その横では。
ここちゃんがぴょんっとソファから降りて伸びをした。
むぎはいつの間にかテラの肩によじ登っている。
テラは再び本を開く。
アクセルは肘置きへ腕を乗せた。
少しだけ目を細める。
「悪くない」
珍しく感想が出た。
レインは長椅子へ座る。
背中を預ける。
確かに。
悪くない。
いや。
かなり良い。
職人達を見る。
三人とも妙に満足そうだった。
たぶん。




