表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/83

蒼の転移罠(閑話①:ノア視点)


時は遡り。


精霊大陸。

転移迷宮・第七層。


魔力が、乱れていた。


「……おかしい」


私は足を止める。


空気が重い。

精霊たちのさざめきが、揺らいでいる。


迷宮内部の魔力流動が一定ではない。

通常なら均衡しているはずの循環が、波打っている。


不規則。

外部干渉の痕跡。


「コア付近で異常?」


S級任務としての調査。

単独行動。


問題はないはずだった。


この階層で出る魔物も、罠も、私にとっては脅威ではない。


魔物が襲いかかる。


私は指先を上げる。


「退いて」


風が裂き、炎が走る。

数体が消える。


迷宮は揺らがない。


だが――


床の魔力紋が、不自然に瞬いた。


「……?」


一瞬、違和感。


紋様の構造が、この迷宮の術式と一致していない。


「――転移陣?」


気づいた瞬間には、遅い。


足元に、幾何学的な蒼い陣式が浮かび上がる。


精霊術式とは異なる構造。

精霊との共鳴を前提としない、閉鎖型転移式。


古い。

そして、意図的。


「転移……トラップ」


対象者をどこかへ飛ばすための罠。


魔力が圧縮される。


視界が歪む。


精霊との接続が、一瞬切断される。


――嫌な感覚。


空間が裏返る。


光。

圧縮。

無音。


そして。


――再構築。


足元に魔力が戻る。


空気が違う。


湿度。

匂い。

魔力の質。


精霊の気配が、薄い。


まるで、大気そのものが異なる。


「……ここは?」


即座に魔力感知を広げる。


構造解析。


迷宮内部。

だが、精霊大陸の術式体系ではない。


魔力循環が荒い。


土地に馴染んでいない。


大陸外。


その可能性が脳裏をよぎる。


だが。


思考する暇はなかった。


周囲に魔物。


ゴブリン。

牙狼。

小型魔獣。


十数体。


しかも興奮状態。


魔力暴走の兆候。


(転移直後に戦闘か)


ため息ひとつ。


判断は一瞬。


状況把握は後。


「邪魔」


指先を上げる。


足元に蒼の陣が広がる。


「――大精霊魔法」


風が収束し、炎が螺旋を描き、雷が絡み、氷が走る。


複合展開。


魔物は、一瞬で消えた。


静寂。


焦げた匂い。


砕けた氷片。


そして――


視界の端に、人影。


銀の耳を持つ獣人。

黒髪の青年。

そして、白い兎。


青年は、驚いている。


だが。


――恐怖が、薄い。


転移直後の戦場。


初対面での精霊魔法。


それでも、崩れない。


(……妙な立ち位置)


前に出すぎない。

だが、退きすぎない。


戦場の中心に、自然といる。


精霊は、彼の周囲でわずかに揺れた。


意図的ではない。

無意識。


それが、余計に不自然だった。


「……ここは?」


私は問いかける。


黒髪が答える。


「サイファ近郊の森だ」


聞いたことのない地名。


やはり。


「……精霊大陸ではない」


転移罠は、大陸を越えた。


だが今は――


解析よりも優先すべきものがある。


足元から伝わる、別の振動。


迷宮の核が、乱れている。


「……暴走前兆」


戦いは、まだ終わっていなかった。


私は視線を上げる。


黒髪の青年と、目が合う。


彼は頷いた。


まるで、状況を共有しているかのように。


「やるなら急ごう」


その言葉に、躊躇はない。


――面白い。


まだ何者かは分からない。


だが。


転移の先で出会った黒髪は。


静かに、戦場の軸に立っていた。


そして私は、コア破壊を選ぶ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ