待ち望んだ再会
昼下がり。
拠点の空気は、ゆるい。
風が庭を抜ける。
草が揺れる。
ここちゃんがその上を跳ねる。
きゅる。
レインは椅子に座ったまま、軽く伸びをした。
「……平和だな」
ノアが短く言う。
「悪くない」
アクセルは何も言わない。
ただ、目を閉じている。
静かな時間だ。
⸻
そのとき。
レインの胸ポケット。
むぎがぴたりと動きを止めた。
キュ――
鳴かない。
耳が、わずかに動く。
「……むぎ?」
次の瞬間。
飛び出した。
膝、そして脚を伝い地面に着地。
そのまま、一直線。
庭を横切る。
門へ。
「おい!」
レインが立ち上がる。
ここちゃんもぴょんと跳ねる。
きゅる。
⸻
門の前。
むぎが止まる。
キュ。
じっと前を見る。
レインが追いつく。
視線を上げる。
⸻
人影。
門の向こう。
立っている。
旅装。
弓。
見慣れた姿。
少しだけ、土の匂いをまとっている。
テラだ。
⸻
一瞬、間が空く。
レインは小さく息を吐く。
「……来たな」
テラがわずかにうなずく。
「ああ」
短い。
それだけ。
⸻
足音。
後ろから。
アクセルとノアが出てくる。
アクセルの視線が、まっすぐテラを捉える。
止まらない。
そのまま歩く。
距離が縮まる。
目の前。
一拍。
「……遅い」
低く。
短く。
それだけ。
⸻
テラが、わずかに息を吐く。
「ああ」
同じように短い。
少しだけ、口元が緩む。
⸻
ノアが言う。
「来たな」
「来た」
それだけで足りる。
⸻
レインが肩をすくめる。
「まぁ、とりあえず入れよ」
軽く言う。
だが声は少しだけ柔らかい。
⸻
門が開く。
テラが一歩、庭へ入る。
ここちゃんが近づく。
きゅる。
むぎがキュ、と鳴く。
テラが少しだけ目を細める。
「……変わらないな」
レインが笑う。
「そっちもな」
⸻
風が抜ける。
草が揺れる。
空いていた場所が、埋まる。
それだけのことだ。
だが。
それで十分だった。
⸻
誰かが小さく笑う。
それにつられて、空気が緩む。
声が重なる。
遅れてきた時間が、ようやく追いついた。
テラは、戻ってきた。




