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揺れない


 二日後。


 門の外で、鉄の触れる音がした。


「来たぞ」


 鍛冶屋の親父の声。


 ばね袋が運び込まれる。


 前より重い。


 数も多い。


 アクセルがすぐに近づく。


 視線は袋から動かない。


 待っていたのは、見れば分かる。



 部屋。


 寝台の上に、木枠。


 そこへ、ばねを並べる。


 ひとつずつ。


 間隔を揃える。


 中央は密に。


 端は均等に。


 ノアが横から言う。


「中央、もう少し」


「分かってる」


 レインが返す。


 カインはいない。


 だが、手は止まらない。


 前と同じ。


 いや、少しだけ精度が上がっている。


 並び終える。


 隙間はない。


 ばねは枠の中で、きちんと収まっている。



 布団を上に重ねる。


 押す。


 沈む。


 戻る。


 横に逃げない。


 空気が少しだけ張る。


 全員の視線が、アクセルへ向く。



 アクセルが腰を下ろす。


 沈む。


 支える。


 揺れない。


 そのまま横になる。


 肩が沈む。


 腰が沈む。


 脚が沈む。


 止まる。


 ここちゃんがぴょんと跳ねる。


 沈む。


 揺れない。


 数秒。


 さらに数秒。


 アクセルが寝返る。


 右。


 沈む。


 戻る。


 左。


 同じ。


 問題ない。


 もう一度、体をずらす。


 肩。


 腰。


 足。


 順に沈む。


 均一ではない。


 支えがある。


 止まる。



 沈黙。


 長い。


 誰も何も言わない。


 アクセルが目を閉じる。


 呼吸が落ちる。


 一拍。


 二拍。


 ゆっくりと目を開ける。


「……揺れない」


 小さく言う。


 起き上がる。


 もう一度、寝台を押す。


 沈む。


 戻る。


 横に逃げない。


 わずかに、うなずく。


「これだ」


 確定。


「よし!完成だな!」


鍛冶屋の親父は満足気に言って帰っていった。



 見送ったあと、部屋を出る。


 そのまま庭へ出る。


 風が抜ける。


 草が揺れる。


 ここちゃんが後ろをついてくる。


 きゅる。


 むぎが庭の桶の中で回っている。


 キュ。



 アクセルが庭に出てきて、木箱の上に腰を下ろす。


 スラリ、と剣を抜く。


 布を当てる。


 刃をなぞる。


 静かな動き。


 一定のリズム。


 何も変わらない。


 ただ、いつも通りだ。



 風が抜ける。


 庭の匂い。


 木の匂い。


 鉄の匂い。


 すべて混ざる。


 アクセルは何も言わない。


 だが。


 手の動きは、どこか軽い。



 拠点は静かだ。


 寝台は完成した。


 それだけだ。


 それで十分だ。



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