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収まる場所


 翌日の昼頃。


 門の外で車輪の音が止まる。


 寝台が届いた。


 木の匂いが、庭に流れる。


 同時に枠を担いだ大工が入ってきた。


寝台と一緒に枠を運んできたらしい。


「どこに置く」


 短く言う。


 アクセルが歩き出す。


 迷いはない。


 居間を抜ける。


 廊下。


 いくつか並ぶ扉の前で、足が止まる。


 ひとつ、開ける。


 光が差し込む。


 空の部屋だ。


 床も壁も、静かだ。


 アクセルが中を見る。


 ゆっくりと一度、見渡す。


「ここだ」


 それだけ。


 テラの部屋が決まった。



 家具屋の従業員によって寝台が運び込まれる。


 大工が枠の向きを合わせて固定する。


 固定したあとは壁に沿わせる。


 ずれることなく、収まる。


 木の匂いが残る。


 アクセルが近づく。


 設置された布団に手を当てる。


 軽く押す。


 沈まない。


 まだばねを入れていない。


 だが。


 枠の位置。


 高さ。


 収まり。


 問題はない。


 一歩引く。


 部屋全体を見る。


 一拍。


 小さく、うなずく。


 それで十分だ。



 大工が工具をまとめる。


「ばね待ちだな」


「ああ」


 短く返す。


 仕事を終えた大工は帰っていった。


 足音が遠ざかる。



 居間に戻って自然と各々席に着く。


 食卓。


 椅子が並んでいる。


 同じ形。


 同じ高さ。


 その並びに――


 ふたつ、空いている。


 誰も座っていない。


 ただ、揃っている。


 それだけだ。



 風が抜ける。


 草が揺れる。


 ここちゃんが足元を跳ねる。


 きゅる。


 むぎがポケットから顔を出し、小さく鳴く。


 キュ。


 拠点は静かだ。


 少しだけ、増えただけだ。


 それでも。


 収まる場所は、もう用意されている。



 夜。


 食卓には料理の皿が並ぶ。


 湯気が立つ。


 皿の上には、香草をまぶした肉と、蒸した野菜。


川魚を香草で臭みを消して野菜と煮込んだスープ


 香りが広がる。


 アクセルが一口。


 噛む。


 静かに飲み込む。


「悪くない」


 それだけ。


 ノアが続く。


「安定している」


 レインは小さく笑う。


「どっちだ」


 返事はない。



 ここちゃんが足元へ来る。


 皿の横。


 葉をもしゃもしゃ。


 きゅる。


 むぎが小さく切った野菜を手で持つ。


 キュ。


 食べる。


 満足そうだ。



 食後。


 小皿が出る。


 ドライフルーツ。


 ここちゃんが耳を立てる。


 きゅる。


 少しだけ分ける。


 もぐもぐ。


 むぎにもほんの少し。


 キュ。


 頬がわずかに膨らむ。


 満足そうだ。



 食後の片付けも終わり、居間に戻る。


居間に灯りが揺れる。


食卓にはノアとアクセルがまだ座っている。


ノアはお茶の入ったマグカップを両手に持ち、どことなく優しい視線でここちゃんを眺めている。


アクセルは腕を組んだまま窓の外を見ている。


レインも自然と席に着く。


 椅子はそのまま。


 空いたまま。


 だが。


 違和感はない。


 ただ、そこにある。


 アクセルが背もたれに寄る。


 一瞬だけ視線が動く。


 真新しく、でも空いている席へ。


 一拍。


 何も言わない。


 それでも。


 どこか、満足している。



 外では風が草を揺らしている。


いつも通り、静かに夜が更けていく。


 拠点の中は、変わらない。


 少しだけ、家具が増えただけだ。


二日後にはばねも出来上がるだろう。


完成まで、あと少し。



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