表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
133/135

行くぞ


 朝。


 庭に光が落ちる。


 草が、軽く揺れる。


 ここちゃんが走る。


 きゅる。


 むぎが桶の縁に乗る。


 キュ。


 静かだ。


 拠点の朝。


 扉が開く。


 アクセルが立っている。


 短く言う。


「行くぞ」


 それだけ。


 レインは顔を上げる。


「どこにだ」


 アクセルは答えない。


 そのまま外へ出る。


 ノアが立ち上がる。


「目的はありそうだ」


「あるだろうな」


 レインも立つ。


 ここちゃんを抱き上げる。


 むぎはポケットへ。


 外へ出る。



 通り。


 朝の空気。


 店が開き始めている。


 アクセルは迷わない。


どんどん進んでいく。


 足が止まる。


 家具屋だ。


 扉を開ける。


 木の匂い。


 店主が顔を上げる。


「おや、また来たな」


 アクセルが言う。


「椅子」


 それだけ。


 店主が笑う。


「追加か?」


「ああ」


その一言でアクセルの目的を理解した。


 レインが横から言う。


「同じやつあるか」


 店主が奥を指す。


「あるぞ。揃えたのがな」


 アクセルが一脚持ち上げる。


 重さを確かめる。


 軽く押す。


 ぎし、と鳴る。


 うなずく。


「これだ」


 店主が聞く。


「何脚だい?」


 アクセルは迷わない。


「一つ」


 一拍。


 レインは何も言わない。


 ノアもすでに理解し、椅子を確認する。


「同じだな」


 アクセルが続ける。


「寝台も」


 店主が眉を上げる。


「壊れたのかい?」


「違う」


 短い。


「追加だ」


 店主は肩をすくめる。


「あるにはあるが、運ぶか?」


「ああ」


「配送だね。明日には届けるよ」


 話は早い。


 配送料も含めて支払いを済ませる。


 店主が言う。


「増えるんだな」


 アクセルは答えない。


 椅子を持つ。


 それで十分だ。



 家具屋を出て、通りを歩く。


 次の場所へ。


 鍛冶屋。


 炉の熱。


 鉄の匂い。


 親父が顔を上げる。


「……また来たな」


 アクセルが言う。


「ばね」


 親父が笑う。


「やっぱりか」


 レインが苦笑する。


「察しがいいな」


「三日かかる」


アクセルが頷く。


「いい」


 即答。


 ノアが言う。


「前回と同等以上を」


 親父が鼻を鳴らす。


「分かってる」


 弟子が横で笑う。


「今度は誰用ですか?」


 アクセルが短く言う。


「来る」


 それだけ。


 親父が一瞬だけ目を細める。


 それ以上は聞かない。


「数は増やす。前より詰める」


「頼む」


 金を置く。


 それで終わりだ。



 最後に、大工の工房。


 木の匂い。


 削り屑。


 大工が手を止める。


「今度は何だ」


 レインが言う。


「寝台の枠だ」


 大工が笑う。


「また囲うのか」


「揺れるからな」


 ノアが補足する。


「横方向の安定が必要」


 大工はうなずく。


「寸法は?」


 アクセルが言う。


「同じでいい」


 一拍。


 レインが少しだけ笑って補足する。


「一人用の寝台の寸法で頼む」


 アクセルは頷くだけ。


 だが視線は逸らさない。


 大工が頷く。


「わかった。明日には形にする」


「頼む」



 椅子を抱えて拠点へ戻る。


 庭。


 風が抜ける。


 草が揺れる。


 ここちゃんが跳ねる。


 きゅる。


 むぎが桶を回す。


 キュ。


 椅子をひとつ、置く。


 いつもの並びに追加で。


 席がひとつ、増えた。


 レインは黙ってそれを見る。


 アクセルも何も言わない。


 ただ、置いた。


 それだけだが、アクセルはどこか満足そうだ。


 風が抜ける。


 拠点は、静かだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ