指名依頼の完遂
ギルドの奥。
扉が閉まる。
外の音が少し遠くなる。
ドランが机の前で止まる。
振り返る。
視線が順に動く。
レイン。
アクセル。
ノア。
ここちゃん。
最後に、胸ポケットへ一瞬だけ視線が落ちる。
「聞こう」
短い。
レインが頷く。
「ああ」
それだけで始まる。
⸻
ティリ迷宮。
隠し通路。
試験機。
帝都。
地下機構。
順に話す。
長くはない。
必要な分だけ。
ノアが補足する。
アクセルが要点だけ足す。
カインとは帝都で別れた、とだけ伝える。
ドランは口を挟まない。
ただ聞いている。
⸻
話が終わる。
少しの間。
ドランが腕を組む。
目を閉じる。
それから開く。
「……なるほどな」
短い。
それで終わりかと思ったが、続く。
「依頼は完遂だ」
レインは小さく息を吐く。
⸻
ドランが机の上の紙を叩く。
「帝国からも連絡が来てる」
アクセルが言う。
「早いな」
ドランは気にしない。
「内容は簡潔だ」
一拍。
「迷宮異常の原因特定」
「試験機の回収」
「帝都機構の暴走停止」
順に言う。
淡々と。
だが重い。
ノアが短く言う。
「一通りだ」
ドランは頷く。
⸻
紙を一枚、滑らせる。
レインの前に止まる。
「評価は上に回ってる」
アクセルが言う。
「ランクの話か」
ドランは短く返す。
「ああ」
一拍。
「精霊大陸での動きも報告は来てる」
レインは何も言わない。
ドランが続ける。
「だが、あれは依頼じゃない」
「評価対象にはならん」
アクセルが小さく息を吐く。
「まぁ、そうだな」
ドランは視線を外さない。
「だが、内容は見ている」
一拍。
「積み上げはある」
それだけ言う。
ノアが短く言う。
「今回で足りた」
ドランは頷く。
「ああ」
紙を指で叩く。
「昇格だ」
一拍。
「Aランク」
部屋が少し静かになる。
アクセルが肩を回す。
「……やっとか」
レインは小さく息を吐く。
「ああ」
重すぎない。
軽すぎない。
それでいい。
⸻
ドランが続ける。
「本来ならSも見える内容だ」
一度切る。
「だが」
短く言う。
「まだ早い」
レインは頷く。
「ああ」
否定しない。
ドランはそれを見る。
少しだけ目を細める。
⸻
「商人の一時同行登録は解除しておく」
「報酬は後でミアから受け取れ」
短く言う。
「以上だ」
それで終わりだった。
⸻
レインは紙を見る。
Aランク。
それだけだ。
アクセルが言う。
「一区切りだな」
ノアが言う。
「通過点」
レインは小さく息を吐く。
「ああ」
それでいい。
⸻
ドランが背を向ける。
それ以上は何も言わない。
レインたちも振り返る。
扉へ向かう。
手をかける。
少しだけ止まる。
それから開く。
外の音が戻る。
サイファの空気だ。
「帰るか」
アクセルが頷く。
「ああ」
ノアも続く。
「問題ない」
⸻
ギルドの外へ出る。
長かった依頼は終わった。
白兎の庭は拠点へ歩き出した。




