制御中枢への干渉
制御中枢の床に刻まれた回路が強く光っている。
すべての線が中央の柱へ向かっていた。
地下機構の唸りが続く。
低く、不規則な振動。
ノアは床にしゃがんでいた。
回路の線を目で追う。
しばらくして言う。
「……そこ」
柱の根元。
回路が重なっている一点。
アクセルが言う。
「中心か」
ノアは頷くだけ。
レインは柱を見る。
引かれる。
迷宮で感じた感覚と同じだ。
だが、規模が違う。
ルカが低く言う。
「止められますか」
レインは答えない。
そのとき。
《解析開始》
頭の奥に声。
《流入集中を確認》
《干渉点特定中》
レインは一歩前へ出る。
「ノア」
ここちゃんを差し出す。
ノアが受け取る。
そのとき。
胸ポケットの中で、むぎが強く動いた。
キュ。
レインが視線を落とす。
次の瞬間。
むぎがポケットの縁に爪をかける。
よじ登る。
そのまま、肩へ移った。
レインは一瞬だけ目を細める。
……普段は、やらない。
むぎはそのまま、柱の方を向く。
小さな体が、わずかに前へ出る。
キュ。
レインは動かない。
ただ、その向きを見る。
「……そこか」
小さく言う。
《干渉点特定》
《無属性魔力制御+固定による流入遮断を推奨》
レインは手を上げた。
柱へ向ける。
触れない距離。
魔力を流す。
――引かれる。
一気に持っていかれる。
「……っ」
足元が揺れる。
アクセルが一歩出る。
「無理するな」
「まだいける」
レインは動かない。
魔力を押し込む。
流れとぶつかる。
柱の光が揺れる。
その瞬間。
むぎが鳴いた。
キュ。
床の光がわずかに乱れる。
《否定の発動を確認》
レインの目が細くなる。
「通る」
固定。
流れに噛ませる。
吸引が、ほんの一瞬鈍る。
その隙に押す。
ずらす。
柱の光が大きく揺れた。
地下機構の唸りが乱れる。
だが止まらない。
再び引かれる。
強い。
レインは踏み込む。
足を固定する。
「……止まれ」
むぎがもう一度鳴く。
キュ。
光が崩れる。
《干渉成功》
《流入断続を確認》
流れが乱れる。
中央への収束が崩れる。
やがて。
静かに落ちていく。
地下の振動が弱まる。
床の光が薄くなる。
ノアが床を見る。
「戻る」
短い。
アクセルが息を吐く。
「……止めたか」
レインは数秒、そのまま維持する。
やがて手を下ろした。
「……戻ったな」
ルカは柱を見上げたまま動かない。
「循環が……」
言葉が続かない。
少し離れた位置で。
カインがその様子を見ていた。
レイン。
むぎ。
その動きを、静かに追う。
一歩だけ前に出る。
干渉の位置。
ずらし方。
流れの変化。
すべてを目で追う。
だが、何も言わない。
ただ小さく呟く。
「……なるほど」




