接続
地下の空間は広かった。
天井の奥が暗い。
灯りはあるが、壁の高さが視界から外れている。
中央の床に巨大な紋様が刻まれていた。
円。
その内側にさらに細い線。
幾重にも重なり、通路のように広がっている。
運ばれてきた装置は、その中央に置かれた。
白衣の男たちが周囲に散る。
急いでいる様子はない。
だが動きに迷いはない。
一人が膝をつき、床の刻印を指でなぞった。
別の男が器具を運ぶ。
細い金属管。
小さな水晶。
接続具。
ルカが枠の前に立つ。
水晶の表面を指先で軽く叩いた。
澄んだ音が響く。
年配の研究員が内部を覗き込む。
「状態」
ルカが聞く。
研究員は短く答えた。
「停止維持」
カインが横から覗き込む。
金属枠を見て言う。
「変化はなさそうですね」
ルカが頷く。
「外殻に異常はありません」
アクセルが腕を組む。
床の紋様を顎で指した。
「それで」
少し眉を寄せる。
「何するんだ」
ルカは足元を見る。
刻まれた回路を目で追う。
「確認します」
それだけ言う。
アクセルはそれ以上聞かない。
⸻
レインは中央の水晶を見る。
かすかな光。
迷宮の石室を思い出す。
その横でノアが床を見ていた。
しばらく動かない。
それから小さく言う。
「……流れてる」
アクセルが眉を上げる。
「何が」
ノアは足元を見る。
言葉を選ぶように、少し間を置く。
「何か」
それだけだった。
アクセルが床を軽く踏む。
石が鈍く響く。
「この下か」
ルカは視線を上げない。
床の紋様を見たまま言う。
「そういう構造です」
曖昧な返答だった。
⸻
白衣の男が枠の側面を開いた。
金属板が外れる。
内部の導管が露出する。
そこへ接続具が差し込まれた。
乾いた音。
金属が噛み合う。
レインはその様子を見ていた。
むぎが胸ポケットの中で動く。
キュ。
レインは軽く布を押さえた。
落ち着かせるように指先で撫でる。
ここちゃんが腕の中で耳を動かす。
きゅる。
⸻
研究員の一人が手を上げた。
「準備」
ルカが前へ出る。
水晶を見る。
床の紋様を見る。
それから静かに言った。
「接続します」
白衣の男が枠に手を置く。
中央の水晶がわずかに光を強めた。
床の紋様が、ゆっくりと淡く光り始める。
線が順に灯る。
外側へ。
広がる。
ノアがそれを見ている。
少し目を細めた。
「……速い」
低い振動が、足元を走る。
止まらない。
地下の機構が、動き出していた。




