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研究員の聞き取り


検査室の中央で、装置が台の上に置かれている。


金属枠の中を細い管が巡っていた。

水晶が弱く光を返している。


研究員たちは台の周囲に集まり、それぞれ違う角度から装置を観察していた。


誰も触らない。


ただ視線だけが装置の構造を追っている。


レインはその様子を見てから腕を組んだ。


胸ポケットの中でむぎが小さく動く。


キュ。


布越しの振動が伝わる。


レインは軽くポケットを押さえ、それから年配の研究員を見る。


研究員は帳面を開いていた。


ペン先が紙の上に置かれている。


「状況を」


短い声だった。


レインは台の装置を見る。


迷宮で見た姿と同じだ。


少し息を吐く。


それから話し始めた。


「ティリ迷宮」


研究員の手が動く。


ペンが紙を走る。


「第一層」


アクセルが横で言う。


「奥に隠し通路があった」


研究員が顔を上げる。


レインは肩をすくめる。


「むぎが壁を引っかいた」


アクセルが笑う。


「偶然だ」


研究員の手が一瞬止まる。


だが何も言わない。


また書き始める。


「通路の先に石室」


研究員が聞く。


「人工か」


カインが答える。


「石室のみ人の手が入っています」


短い。


研究員は頷く。


ペンが動く。


レインは顎で装置を示す。


「その中央にこれ」


研究員の視線が装置へ落ちる。


「帝国試験機」


ルカが言う。


「研究院の管理刻印です」


研究員は番号を書き写す。


それから聞く。


「状態は」


レインが答える。


「不安定だった」


ノアが小さく言う。


「揺れてた」


それだけ。


研究員が書き込む。


「そのあと」


レインは少し間を置く。


「止めた」


「破壊か」


「停止」


短く返す。


研究員のペンが止まる。


「方法は」


レインは少しだけ考える。


それから言う。


「魔力を流した」


一拍。


「流れを押さえた」


それ以上は言わない。


ノアが装置を見る。


「……止まった」


研究員は装置へ近づく。


枠を見る。


接続部を見る。


刻印を見る。


指で金属を軽く叩いた。


小さな音。


「停止痕がある」


カインが外殻を見る。


「損傷はありません」


アクセルが肩を回す。


「壊してない」


研究員は装置を見つめたまま黙る。


少し長い沈黙。


やがて息を吐いた。


「理屈が合わん」


小さく言う。


誰も答えない。


ルカも黙っている。


やがて研究員が言う。


「解析する」


周囲の研究員たちが動き始めた。


机が動く。


器具が運ばれる。


白衣が台の周囲へ集まる。


誰も声を上げない。


だが手は止まらない。


ノアがその様子を見ていた。


少しして言う。


「慣れてる」


アクセルが笑う。


「研究院だ」


レインは台の装置を見る。


迷宮の奥で見つけた機械。


今は帝国研究院の中央に置かれている。


研究員たちの手が、その枠へ伸びた。


だが。


停止の方法だけは。


まだ誰も理解していなかった。


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