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出発準備


 ギルドを出ると、昼の光がまぶしかった。


 サイファの通りはいつも通りだ。


 荷車が通り、商人が声を張り上げている。


 王都の整った石畳とは違う。


 石は荒い。


 だが、このざわめきは落ち着く。


 アクセルが歩きながら言う。


「帝国か」


 レインは肩をすくめる。


「遠いな」


 ノアが静かに言う。


「国境砦まで一日半」


 アクセルが頷く。


「そこで合流だな」


「帝国の調査団と」


 カインが穏やかに続ける。


「研究院の人員でしょう」


 レインが聞く。


「会ったことあるのか」


 カインは少し考える。


「直接はありません」


「ですが有名です」


 アクセルが笑う。


「学者か」


「ええ」


 カインは頷く。


「管理と研究を担う機関です」


 ノアが小さく言う。


「揃ってる」


 一拍。


「無駄がない」


 アクセルが肩を回す。


「面倒そうだな」


 レインが笑う。


「討伐じゃないからな」


「話が多そうだ」



 通りを抜ける。


 拠点の前に着く。


 庭の柵が見える。


 ここちゃんが腕の中で耳を動かした。


 きゅる。


 門を開ける。


 庭は静かだ。


 草が揺れている。


 アクセルが言う。


「時間はあるな」


 レインが頷く。


「準備は十分だな」


 ノアが庭を見る。


「補給は?」


「食料はある」


 レインが答える。


「足りない分は明日買う」


 アクセルが腕を組む。


「帝国までは?」


 ノアが答える。


「砦から先は帝国側の案内」


 カインが補足する。


「調査団が同行するはずです」


 レインが言う。


「護衛もいるか」


「可能性は高いでしょう」


 アクセルが小さく笑う。


「騎士団か」


 ノアが言う。


「管理国家」


「護衛は付く」


 アクセルは肩をすくめた。


「戦う相手じゃなければいい」



 レインは荷袋を確認する。


 干し肉。


 干し果物。


 水袋。


 数は足りている。


 むぎが胸ポケットから顔を出した。


 キュ。


 レインが手を出す。


 むぎがよじ登る。


 小さな体が軽い。


「お前も行くぞ」


 キュ。


 ここちゃんが腕の中で鳴いた。


 きゅる。


 アクセルが言う。


「うさぎも帝国か」


 レインが笑う。


「庭付きじゃないと怒るぞ」


 ノアが小さく言う。


「帝都に庭は少なそうだ」


 アクセルが言う。


「じゃあ怒るな」


 ここちゃんが耳を動かした。


 きゅる。



 カインが空を見上げる。


「天気は安定しています」


 レインが頷く。


「移動日和だな」


 アクセルが言う。


「問題ない」


 ノアが静かに続ける。


「厄介なのは、その先」


 アクセルが聞く。


「帝国か」


「研究院」


 ノアは短く言う。


 カインが穏やかに笑う。


「優秀な組織です」


 アクセルが言う。


「詳しいな」


 カインは少し肩をすくめた。


「商人は情報が命です」


 レインは何も言わない。



 夕方。


 庭に影が伸びる。


 レインは椅子にもたれた。


 空を見る。


 青い。


 ここちゃんが腕の中で丸くなる。


 むぎが胸ポケットで小さく動く。


 キュ。


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