王国指名依頼
レインは少しだけ首を傾けた。
「内容は」
ドランは書類をめくる。
「ティリ迷宮の装置は、帝国側が回収する」
アクセルが言う。
「それは当然だろうな」
ドランは続けた。
「ただし」
一拍。
「発見者の同行を求めてきている」
ノアが言う。
「発見時の状況」
ドランが頷く。
「ああ。証言がいる」
「不正設置の可能性がある」
「設置経緯を調べるためだ」
アクセルが小さく息を吐く。
「なるほど」
「確認ってわけか」
「そういうことだ」
ドランは机の端を軽く叩く。
「それともう一つ」
視線がレインへ向く。
「回収と調査は帝国内でやる」
アクセルが眉を上げる。
「帝国まで行くのか」
「国境砦で合流だ」
ドランは短く答える。
「そこから帝国側の調査団と動く」
ノアが静かに言う。
「研究院の装置」
「帝国内で調べる方が合理的」
ドランは頷く。
「王都もそう判断した」
カインが口を開く。
「同行期間はどの程度でしょう」
ドランは書類に目を落とす。
「装置の回収」
「帝都への搬送」
「原因の調査」
短く区切る。
「しばらく帝国だ」
アクセルが小さく笑う。
「遠出になるな」
レインは静かに立っていた。
ここちゃんが腕の中で体勢を変える。
きゅる。
むぎが胸ポケットで小さく動く。
キュ。
レインは短く息を吐いた。
「いつだ」
「三日後だ」
「国境砦に集合」
アクセルが肩を回す。
「準備の時間はあるな」
ドランは最後に言った。
「これは討伐依頼じゃない」
「調査協力だ」
一拍。
視線がわずかに鋭くなる。
「だが国家案件だ」
「軽く考えるな」
レインは頷く。
「分かってる」
ドランは椅子にもたれた。
「行くか」
レインは答える。
「行く」
アクセルが頷く。
「決まりだな」
ノアが静かに言う。
「帝国研究院」
「興味はある」
カインが穏やかに続けた。
「私もです」
「帝国の研究施設は優秀と聞きます」
ドランが鼻を鳴らす。
「見学じゃない」
アクセルが笑う。
「分かっている」
レインは扉へ向かった。
ここちゃんが腕の中で耳を動かす。
きゅる。
むぎが胸ポケットから少し顔を出す。
キュ。
ドランが背中に声をかけた。
「レイン」
レインは振り返る。
「なんだ」
ドランは短く言う。
「帝国は王国と違う」
一拍。
「気をつけろ」
レインは頷く。
「覚えておく」
扉を開ける。
外は昼のギルドの喧騒だった。
白兎の庭は廊下を歩く。
アクセルが言う。
「帝国か」
レインは肩をすくめる。
「どんな国だろうな」
ノアが言う。
「管理国家と聞く」
カインが続ける。
「合理を重んじる国です」
アクセルが軽く笑う。
「面白そうだ」
レインは歩きながら窓の外を見る。
青空が広がっている。
数日後。
白兎の庭は帝国へ向かう。




