69話 亜人症の娘
鶴嘴っ娘視点です。
前回書き忘れた事。
「いやあ、同年代の人と話すのは気が楽ですなぁ」
「ん? どういう事で御座るか?」
「え? 自分と縦井さんは歳が同じくらいでは?」
「某、天光院殿と同い年で御座るが?」
「なん……だと……」
縦井は老け顔です。
凄い人からDMが来た。
それはウチが尊敬してやまないスコおじこと中村浩士さんからだった。
最初は疑った。けど送り先を確かめてみたら確かに中村さんからだった。
「ほ、ほ、本人だあああああああああ!!」
嬉しかった。
思わず声が出てしまうくらいに。
しかも内容はコラボの案内。
「やる! 絶対やる! 返信、返信しなくちゃ!」
『萌葱五月蝿いわよ! 静かになさい!』
お母さんにめっちゃ怒られた。
***
「駄目だ」
「駄目よ」
お父さんとお母さんにこの事を話したら反対された。
了承の返信をすると、中村さんからちゃんとご両親の許可を取るように、と来たので話したらこれだ。
一応言っとくと家族仲は悪くない。寧ろ良好と言っていい。ただし問題が幾つか。
お父さんは心配性すぎる事。最早過保護と言っていい。そしてお母さんは探索者に偏見を持ってて毛嫌いしている事だ。
中村さんのいる宮崎はウチが住んでるとこからだいぶ遠い。新幹線にしろ飛行機にしろ乗り継ぎをしなくちゃいけない。それ以前に宮崎には新幹線が通っていない。因みにウチが住んでる県はちゃんと通っている。それに曲がりなりにも一人旅だ。そりゃお父さんが心配するのも無理はない。
お母さんの方はもっと厄介。メディアやマスコミは探索者の犯罪を良く取り上げる。そしてコメンテーターは探索者の事を悪しざまに言うのだ。
そりゃあ探索者だって人間だ。犯罪を犯す人だっている。けどそれで探索者全員が犯罪者って訳じゃない。けどお母さんはそう思い込んでしまっているのだ。実際のところウチが探索者になる事にお母さんは猛反対だった。お父さんがなんとか宥めてくれたけど未だに探索者=犯罪者予備軍と思ってる節がある。今でもその事で喧嘩する事もあるのだ。
第一、探索者じゃない人も犯罪を犯すし、なんならもっと重大な犯罪を犯す一般人だっているんだから。
探索で稼いだお金をある程度は家に入れるという事で許してくれたけど、やはり探索者にいい感情は持ってないみたいだ。
因みに亜人症に関しては両親共に偏見の目で見ていない。ウチが小人系亜人症だという事もあるんだろうけど、少し普通の人と見た目が違うだけで健常者となんら変わらないからと、普通に接している。
2人ともウチの事が嫌いという訳じゃない。そうじゃなかったらこんなに反対しない。
ウチが心配なのは解ってる。けど折角のコラボのお誘いなのだ。なんとしても行きたい。
けどウチでは2人を説得する事が出来なかった。
***
次の日の夜。
中村さんとウチら家族とリモートで話し合う事になった。
昨日両親に反対された事を伝えたら『ではお互い話し合いましょう』と返信が来た。
で、今日の朝、お父さんにその事を話したら、お父さんが仕事から帰ってから話そう、という事になり、今に至るという訳だ。
3人で夕食を摂り、食器を片付けお父さんのパソコンをテーブルに置く。ウチら3人が観れるように席に着く。
パソコンを立ち上げる。さあいよいよだ。
パソコンの画面に中村さんが映し出される。いつものジト目に少しくたびれた感じの初老のおじさんだ。それとは別に植木鉢に下半身埋まった人形大の少女、マンドラちゃんもいる。
『初めまして中村浩士といいます』
『こんばんは! マンドラちゃんなのです!』
そう言うと2人が軽く会釈をする。
「これはご親切にどうも。巴萌葱の父です」
「同じく母です。ところで……その子は? それと何で裸なの? 服を着せなさい服を!」
「ちょっとお母さん!?」
いきなり喧嘩腰のお母さん。だけどそれに対して中村さんは。
『申し訳ありません。この娘が嫌がるとのでして。化学繊維とか絹とか肌に合わないんです』
まあアレルギー体質みたいなものです、と中村さんが続ける。ウチもお母さんにマンドラちゃんが魔物で、中村さんがテイムした従魔である事を伝える。
「そう、それなら仕方ないわね……」
『あの、マンドラちゃん、何か悪い事しましたですか?』
「ああいえ、ごめんなさいね。アレルギーだものね……なら仕方ないわね」
素直に謝罪するお母さん。亜人症とかアレルギーとかには理解あるのに何で探索者だけは理解しようとしないのか。
『いえ、自分も少し浅はかでした。今マンドラちゃんは色々と学んでまして、それでこうやって会話に加わらせているんです』
なんとマンドラちゃんは小学校高学年程度の知識と知恵があるらしい。算数のドリルを一心不乱に解いてる動画をXeで観たことがある。
中にはAIだとか虐待だとか騒いでる人達もいたけど……
『それで本題ですが。自分とのコラボに反対との事ですが』
「いや、別に反対という訳じゃないんだ。ただ1人で宮崎まで行かせるのはちょっと……」
「私はそのコラボに反対です。探索者は好きになれませんし、あなたの素性も知りませんし」
2人の反対の理由が違いすぎる。お父さんは兎も角、お母さんのはどうなんだ……
けど中村さんは冷静だった。
『成程。お互い理由は違いますが萌葱さんを心配してこそ反対してるという事でよろしいですか?』
「ええ、まあ」
「そうですね」
『ふむ……確かにそうですね。お父様の娘を一人旅させるのはさぞかし心配でしょう。自分も娘がいましたからね、少しは解りますよ』
「そうでしょう! ……ん? いた?」
『はい、いました。実は自分、バツイチでして』
と、中村さんが身の上話をし始める。
中村さんは奥さんの不倫で離婚したそうで、その娘さんとは不倫相手との間に出来た子、婚外子だった。しかも小学生の頃くらいまでは懐いてたのに、中学生に上がる前あたりから反抗期を通り越して罵詈雑言を浴びせる様になってしまったとか。
『はは、何処で教育を間違えてしまったんですかねぇ』
と自虐的な笑みを浮かべる中村さん。流石にお父さんもお母さんも中村さんに同情する。
『すみません、こんな身の上話を聞かせてしまって。愚痴りたくなったのかもしれませんね』
「いえいえ、お構いなく」
「あなたが失敗したのではなく、その娘さんが選んだ結果ですから、中村さんが悪い訳じゃありませんよ」
『そう言っていただけると幸いです』
と軽く頭を下げる中村さん。
『その上で、お母様の誤解を解こうと思います』
「誤解、ですか?」
『はい。先ず探索者の何が嫌いなのか教えていただきますか?』
お母さんが答える。報道で探索者が起こした重大な事件の数々、そして探索者が考えられない程の強い力を持っている事、そしてそれを犯罪で使っているかもしれないと危惧している事。
ウチが何度説明しても聞く耳を持ってくれなかった。果たして説得出来るのか?
『成程、確かに殺人事件を起こした探索者がいるのは事実です。ですが殺人事件に限らずですが、何らかの事件を起こすのは探索者だけでしょうか?』
お母さんが固まる。
『例えば、先日刑を執行された死刑囚ですが、彼は探索者ではありません。他の事件でも探索者以外の人が起こしていたりしますね。なので探索者=犯罪者予備軍というのはマスコミの印象操作です。探索者協会もほとほと参ってるそうです』
「だけど強い力を持ってるのでしょう? そんな人達が街中を歩いてるのは怖いわ」
『それですけど、確かに100kgのバーベルを片手で持ち上げたり、100mを2秒もかからずに走る探索者はいます。ですがそれは迷宮の中だけです』
それ、中村さんの事では?
『何せ《探索者、迷宮外は、ただの人》て言葉があるくらいですからね。当然魔法なんて迷宮でしか使えません。なのでそう怖がる必要はないかと』
勿論メディアはこの事を報道していない。これも探索者を勘違いさせる要因の1つと、中村さんが付け加えた。
「だから言ってるじゃないか。母さんはメディアに踊らされすぎてるって」
「そ、それは……」
お父さんがお母さんを嗜める。
『それでお父様の方ですが、もし娘さんが海外に留学したいとか県外の大学に進学したいとか言ってきたらどうしますか?』
「う、むう……」
今度はお父さんの言葉が詰まらせる。
ウチは地元の大学に受かったから自宅から通ってるけど、もし滑り止めで受けた県外の大学だったらどうだったのだろう。
『それに大学を卒業したら県外に就職する可能性だってあります。心配なのは解りますが、過保護なのは如何なものかと』
「中村さんの言う通りよ。私が萌葱と同じ歳には県外の大学に行って一人暮らししてたわ。お父さんは心配し過ぎなのよ」
今度はお母さんがお父さんを嗜める。
『それで、どうでしょうか? 娘さんとのコラボを許可いただけますでしょうか』
「うむむ……」
「それは……」
お父さんもお母さんも歯切れが悪い。
「お父さん、お母さん、あれだけ中村さんに論破されたのにそれでも反対なの? ウチ、中村さんとコラボしたい!」
「いや、だが……」
「やっぱり探索者とか信頼出来ないし……」
『だったら皆さんで来たらどうですか? 遅めの卒業旅行、或いは家族旅行とか』
「「「え?」」」
ハモった。
一次選考落選しました(泣)
まあ落選したからと言って筆を置く気はありませんのでその辺は安心してください。
「私が(★とブクマを入れに)来た!」(説明不要のヒーロー。余談だけど中の人は息子に演じてるのを信じてもらえなかったそうな)




