64話 神の呪い(あっさり)
ちょっとだけえちぃ展開あります。
「うわぁ、これはまた……」
呪いの釣り針を見た来栖さんの第一声がそれだった。自分でも解るくらいにヤバい代物なのだ。これから解呪する来栖さんは自分達以上に危険な代物だと肌で感じているのだろう。
「嬢ちゃん、無理なら別にいいからな。ワシやこの迷宮よりも嬢ちゃんの命の方が大事だからな」
「まさか迷宮に創られた存在から命を大事になんて聞くとは思わなかったよ。優しいね、けどやるよ。ううん、やってみせる」
「嬢ちゃん意外と剛毅だねぇ。解った、ならワシからはもう何も言わねぇ。この呪いを解いてくれ」
来栖さんを心配する火照命だったが、来栖さんの本気を感じ取ったのか、彼女に一礼し、釣り針を地面に置く。
「志郎さん、いいよね?」
来栖さんが七津見さんの方を向くと、七津見さんが頷く。
真面目な顔の来栖さんがメイスを構え。
「アフェクタルクス、展開!」
そう言った途端、メイスの柄が伸び、鎚の部分が開き、蓮の花を象ったような形になる。
これはもうメイスじゃないな。錫杖だ。
『聖杖アフェクタルクス』
それが彼女の持つ武器の名だ。展開する前はただの鈍器でしかないが、この様に展開すると杖になり、魔法の威力、効果を大きく上昇させる。ただし七津見さんの許可が降りないと展開出来ないらしい。あまりにも負担が大きいとの事だ。
「それじゃいくよ。『リムーブカース』」
杖の先、蓮の花から淡い光が釣り針に降り注ぐ。解呪の光だ。釣り針を汚染していた呪いが浄化され、解かれていく。
「中村さん、祟りと呪いの違いって解る?」
「七津見さん、唐突ですね。そうですね、何か罰当たりな事をした時に神仏が罰を与えるのが祟り、人が特定の人物に怨みを込めて攻撃するのが呪い、ですかね。もっと端的に言えば祟りは受動で呪いは能動。そして祟られるのは大抵は悪さを働いた人物ですが呪われるのは対象の善悪は関係ないですね」
「概ねあってる。けど呪いは何も人だけじゃなくて今回の様に神がかける事もある。そして呪いを解こうとすると、その呪いは更に攻撃的になる。その対象は呪いを解こうとしている人物、ここでは莉愛だね」
光に包まれていた釣り針がカタカタと震えだす。そして、黒い靄みたいな何かが出てくる。
その靄はウネウネと蠢き、軟体動物を思わせる。
「ぅ怨怨怨怨怨怨怨怨!」
と形容しがたい叫び声をあげると、触手を生やし、来栖さんが手にしている杖を弾き飛ばした。
「しまっ!?」
そのまま触手は来栖さんに絡みつき、宙に吊り上げ、触手の1本が来栖さんの口を無理矢理こじ開け、口内に侵入してきた。
「んぶっ!? んんっ! んんーーーーーーっ!?」
呼吸が出来ないからかなのか、それとも呪いが浸透してきているのか、来栖さんが身悶える。
しかしなんだ、その顔はどこか恍惚としてる様な……
:エッッッッッッロ!
:エッッッッッッド!
:江戸。東京の旧い呼び名。または徳川家康がたてた江戸幕府。江戸時代。
:そうだけどそうじゃない。
:聖女が性女になりました。
:……ふぅ
:色々と捗る。
:ちょっと男子ぃ〜
:これ流して大丈夫なんか?
「ハぅん!? 莉愛チャンエロエロなんだけど!? ワタシコレじゃ集中出来ないヨ!」
龍さんが変態な……もとい大変な事になってるが、安心してほしい、自分もだ。正直目のやり場に困る。
「全く、いつもの事とはいえ世話がやける」
神野君が触手を斬り、あっけなく切断される。だが切断した矢先に新たな触手が生え、結局また来栖さんは拘束されてしまう。
「なんだよこれタチ悪いな」
「呪いってのはそういう物だからね……せいっ!」
「神の呪いなら尚更、ですかっ」
自分と七津見さん、そして神野君の3人掛かりで触手を斬り落とす。七津見さんは大剣ではなく蛇腹剣を使用している。流石に3人だと触手が再生するよりも早く減らしていける。尤も、呪いにダメージが入っているようには思えないが。まあ『解呪』のおかげで実体化しているのだろう、攻撃が通っているのだが。
来栖さんが口内から侵入しようとする触手をなんとか吐き出す。
「えほっ、ごほっ! ごしゅ……志郎、ボクは大丈夫だから呪いを弱らせて……んぶっ!?」
新たな触手が来栖さんを襲う。触手の再生がさっきよりも早い。気付けば3人でも手が回らない状況だ。
「解った。莉愛、少しだけ耐えてくれ。神野君、それに中村さんも美麗も。武器を聖別化する。これで攻撃すれば呪いも弱体化する筈だ」
「了解だ」
「わかタヨ。悶える莉愛チャンずっと見てたイのはヤマヤマだけド……ほっといタラどうなるノカ解らナイシ」
「龍さん、アンタ……兎も角お願いします」
「了解、お願いされた!」
言うや否や、七津見さんが自分らの武器を聖別化、つまり『ホーリーエンチャント』をかける。流れる様に彼自身を含めて聖別化するとは、流石と言うべきか。
七津見さんが蛇腹剣を展開させる。どう考えても長すぎるだろ、と言わんばかりに伸び、呪いを雁字搦めに拘束する。
「これ、魔力を流すと中のワイヤーが長くなってね。展開すると下手な鞭よりも長くなるんだよ。だからこういう事が出来る」
実際鞭というよりもロープだ。それも刃の着いた危険なロープだ。
無論、こんな好機はそうそう無い。自分、神野君、龍さんがそれぞれ攻撃する。
龍さんは固定されているのを良い事に、思いきり近付きノーモーションの掌底、無拍子で呪いを打つ。神野君は剣を(八岐大蛇の骨で造られたという事で八岐叢雲という銘だそうだ)平突き、同じく自分も削る様に突き立てる。
痛覚があるかどうかは解らないが呪いが声にならない叫びをあげ、のたうち回る。しかし蛇腹剣で拘束されて居る呪いは逆に傷つく形となり更に力が弱まる。
拘束する力が弱まったのか、来栖さんがなんとか口と右手だけ拘束を解く。
「杖を!」
この中で一番身軽な龍さんがすかさず落ちていた杖を拾い上げ、そのまま投げ渡す。触手の邪魔が入りそうなところを、神会君と自分とで触手を切断、来栖さんの手に渡る。
「『リムーブカース』!」
再度『リムーブカース』を発動。解呪の光が文字通り降り注ぎ。
「おぉおおおぉぉぉぉおおおおおおん!」
今度こそ釣り針の呪いは消失した。
蓋を開ければサクッと終わってしまった。面子が面子だからなあ。これが自分達でなければ死人が出てもおかしくなかった。
「よっと」
七津見さんが落ちる来栖さんをお姫様抱っこで抱える。杖の方も元のメイスに戻っている。
「御主人様ぁ、ボクもう我慢出来ないよぉ……」
来栖さんがとてもじゃないが、人に見せられない顔でそんな事を言っていたが、聞かなかった事にしよう。
莉愛「うぅ、ボクもう我慢出来ないよぅ(意味深)」
志郎「はいはいあとで」
莉愛「え、このまま暫く放置するの!? 待ってよボクホントに我慢出来ないんだけど!?」
志郎&莉愛以外「何が!?」
何が我慢出来ないのかは読者様の想像にお任せします(^_^;)
「おい……先輩、あんた……今おれの、この頭のことなんつった!」(某殴りアコ)




