62話 『D.B』との邂逅
「莉愛チャーン! ほのかチャーン! 会いタカタヨー!」
「きゃあ!?」
「いやあ!?」
龍さんがどこぞかの3代目怪盗みたいに2人の女性めがけてダイブするが、スーツの男性が間に入り2人を庇う。
更には龍さんのダイブが途中で失速し床に落ちる。というか縄で縛られている。しかも亀甲縛り。ロープを手にしているのは七津見さんだ。いつの間に。
「ちょ、待つヨ。ワタシ縛らレルよりモ女のコ縛ル方ガ」
「美麗、君全然懲りてないね」
「あ、待っテ。ゴメンナサイ、アレだけハ勘弁して」
龍さんが七津見さんに怯えている。何があった?
「前にも似た様な事があったたんだよ。あ、俺は神野勇人。勇者と言えば解るか?」
スーツの男性、神野さんが肩をすくめ、やれやれといった感じでそう言う。
しかし、まさかの有名人とは。
勇者神野勇人。迷宮適性SS、スキルは『逆境』で、相手が強ければ強い程、己の身体能力が強化されるという特殊スキルだ。性格は正義感が強く、一方で迷宮を危険視している。
「で、あんたが中村浩士さんかい?」
「はい、そうです。宜しくお願いします」
「別に敬語は要らねえよ。俺の方が年下だし、普通でいいぜ。あと俺は敬語が苦手でね、悪いな」
「はは、会社員時代の癖でして。解りました、あーいや、解ったよ、神野さん……神野君かな?」
「どっちでも。好きに呼んでくれて構わないぜ」
人によっては生意気だとか礼儀がなってないとか言うだろうが、自分はそこまで気にしない質だ。
「そうだ。1つ、中村さんに聞きたい事があってな。中村さんは迷宮をどう思っている?」
「ふむ……そうだね……」
ここは素直に思った事を言おう。
「暮らしを豊かにすると同時に迷宮門崩壊など危険をはらんだモノと思っているよ。中には浪漫を求めている人もいるだろうが……それで死んでしまったら元も子もない」
元々興味はあったし、探索者になりたかったのも事実だ。けど、迷宮が危険なものなのは事実だし、一方で魔石のおかげで日本のエネルギー問題が改善されているのも事実だ。
「そうか、中村さんとは仲良くなれそうだ。宜しく頼む」
神野君は笑みを浮かべ手を差し伸べてきたので握手を交わす。成程、噂通りの人物だ。
一方、龍さんは縛られたまま正座をさせられ、七津見さんから説教を食らっている。
「全く、公共の場なんだから、もっと考えて行動しろよ」
「ハイ……スミマセン……ん? 公共の場でナイなら良いのカ?」
「それは僕の相手もすると思っていいのかな?」
「ソレだけは勘弁してしてクダサイ!」
なんというかブレないな龍さんは。あと亀甲縛りで縛るのも公共の場でしていいものじゃないと思うんだが。
「ホント懲りねえな……」
「うちのマンドラちゃんも被害に遭ってるし……アレさえ無ければ頼りになるんだけどねぇ」
いやホント、龍さんは七津見さんに何をされたんだ!?
***
「では改めて。パーティ『D.B』のメンバーだ」
空港から移動してチキン南蛮で有名なレストランにて。6人用のテーブルに自分と神野君に挟まれる形で龍さんが、その対面に2人の女性の間に七津見さんがそれぞれ席に着いている。
尚、ロープは解いている。龍さんが「このままデ! 莉愛チャンとほのかチャンにアーンしてもらうノ!」とか言ってきたから逆に解いた。あといつ暴走してもすぐに押さえられる様に自分と神野君が両脇を固めているというわけだ。
「神野君はしたんだっけ? じゃあ私だね。来栖莉愛、迷宮適性はSS、スキルは『聖女』だよ、宜しくね」
と、にこやかに自己紹介するボブカットの娘、来栖さん。年齢は七津見さんと同じらしい。彼女こそが龍さんの言うアテだ。
しかし神野君に続いてこれまた有名人だ。自分も知ってる。そのスキル同様聖女みたいな人で、彼女に助けられた探索者は数知れない。ただ、何となくだが、ちょっと怖い。七津見さんを見る目が他の人を見る時と違うのだ。こう、七津見さんを見る来栖さんの瞳は熱っぽく、そのくせハイライトが消えるのだ。それに距離も近い。
これがヤンデレってやつか。
あとスキル『聖女』だけど、これまたとんでもないスキルだ。回復魔法は勿論、付与魔法、神聖魔法の複合スキルだ。因みに『聖女』の男性版である『聖人』というスキルもある。こちらのスキル所持者はイタリア人の男性だ。クリスチャンでイタリアの迷宮を破壊しまくってるとか。聖人様曰く「迷宮=悪」らしい。あと景観を損ねるという理由もある。彼と一度会っているらしく、当然ながら神野君と聖人は相当ウマがあうとの事。
「そんな訳デこの娘ガ呪いヲ解いテくれるヨ!」
「神の呪いかぁ……まぁ頑張ってみるよ。解呪出来なかったらゴメンね」
その時はその時で仕方がない。日本でも最高峰の解呪持ちなのだ。これで駄目なら日本、いや世界の誰でも解呪は出来ないだろう。
「最後ボク? ボクは成海ほのか。適性はAでスキルは『調合』だよ。戦闘とか正直苦手だけど宜しくね」
パーカーっ娘はボクっ娘でした。本人は戦闘は苦手と言ってるけど、適性Aなら下手な探索者よりも強い。けど他のメンバーがSS以上なのだから過小評価するのも仕方ない。因みにこの娘も小柄だけど大きい。パーカーの上からでも解るくらいに。
しかし来栖さんに似てるな。
「1つ聞きたいんだけど、来栖さんと成海さんは姉妹?」
「え? あー……うーん……」
「血の繋がりもないし戸籍上でも姉妹じゃないよ。けど似た様なものかな」
他人の空似でもここまで似るものなのか。顔つきとか身体的特徴は背丈を除けばほぼ同じだし、性格に至っては殆ど変わらない。偶然もここまでくると凄いな。
「お待たせしましたー」
チキン南蛮が運ばれてきた。宮崎県民ならそう驚く事もないが、自分以外はそのボリュームとタルタルソースの量に目を丸くしている。
「宮崎のチキン南蛮と他所のチキン南蛮はまるっきり別物だからね。食べてみれば解るよ」
「そうなんだ。じゃあ明日の打ち合わせは食べてからにしよう。いただきます」
尚、自分と龍さんを除いた4人……『D.B』の面々からは「今まで食べてきたチキン南蛮はいったい何だったんだ」という感想を頂いた。気持ちは解る。自分も出張で県外に行った時に思わず「これはチキン南蛮じゃねえ!」と叫んでテーブルをひっくり返すところだった。
宮崎の人間にもチキン南蛮の好き嫌いはあれど、チキン南蛮の事となるとうるさいからなあ。自分含めて。
兎も角、彼らと良好な関係を結べたので良しとしよう。
***
『で、志郎さん。私と愛莉をハブったのは何で?』
「ごめんて」
キャラクター紹介
来栖莉愛
猫の様なツリ目にボブカット。身長はやや低め(一応150はある)ながら巨乳。というか爆乳一歩手前。一人称は私だが、時々ボクになる。
迷宮適性SS、スキルは『聖女』
誰にでも優しく、彼女に助けられた探索者も多く、スキル同様聖女呼ばわりされるが通り名は『色欲』で通り名の通りかなりのスケベ。見た目のせいもあってか、性女呼ばわりされる事も屡々。
実は七津見に依存レベルのヤンデレで七津見に言われた事は何でもしてしまうM気質。
宮崎県民からすれば他県のチキン南蛮は「唐揚げの甘酢かけタルタルソース添え」であってチキン南蛮ではありません!
『D.B』は決して『龍の玉』ではなく『ダンジョンバスター』または『ダンジョンブレイカー』の略です。
「脳がぁぁ!! 脳が痛いぃぃっ!!」(ゴ◯テロ様)




