60話 その勘違い屑野郎に鉄槌を
:ぎゃーーーーーーーー!!
:マンドラちゃんが!?
:あのヤロウなんて事しやがる!
:ゆ゛る゛ざん゛!!
:スコおじーー! アイツ処せ! マジで処せ!
コメントが荒れている。
「オイ、女性ハ狙わナイんじゃ無かっタのカ?」
龍さんの手には矢が1本。どうも龍さんに対しても矢を放っていたらしい。探索者としての動体視力と身体能力で掴めているが、適性が低かったりしたら間違いなく当たっていただろう。
睨みつける龍さんに対し、火遠理命は。
「敵対する者の言う事を信じるバァカが何処にいるのかね。兵は詭道なり、信じる方が悪いのだよ。大体貴女は手癖足癖が悪すぎる。私が使うにはそれは邪魔でしかない、そこな少女もそうだ。尤も、小さすぎて使いものになるかどうかは疑問だかね。第一、人間の身でありながら私に使われるのだ。寧ろありがたく思ってもらいたいのだがね」
と悪びれもせずに言い放つ。
コイツ、真性の屑野郎だ。女性をモノとしか考えていない。
「さあ、痛い目を見たくないなら降参したまえ。おっと、そこの男は降参しても殺すがね。ハハハハハハハハハハハ!!」
「マンドラちゃんの様に、か?」
「なんだ? 性の道具にそんな名前をつけていたのかね? ま、頭は要らないから吹き飛ばしたが。ハハハハハ!」
高笑いする火遠理命。当初はただ殴るだけで済ませようと思っていた。仮にも日本神話に出てくる由緒ある神様だ。
だがコイツは醜悪すぎる。ならば本気を出そう。もう殴るだけでは済ませない。
「フハハハハハハ!」
「あー、死ぬかと思ったのです」
「ハハハハハ……は?」
腰から聞き覚えのある声。そこにはしっかりと頭があるマンドラちゃんの姿。
「おぉい!? 私、頭吹っ飛ばしたよな? なんで生きてんの? てかなんで頭あんの!?」
「マンドラちゃんの生命力を舐めるな、なのです」
それはそうだろう。そもそもマンドラちゃんのあの姿は擬態だ。頭が吹っ飛んだくらいでは死なない。そもそも植物というのは生命力が強い。木を伐採しても根が無事なら枝葉が生えてくるのだ。何よりマンドラゴラは万能回復薬の素材だ。そんな薬の素材なんだから生命力も段違いだろう。自分の身体をあっさり修復してしまうのも頷ける。尤も、引っこ抜かれたら死んでしまうが。
それよりも火遠理命だ。マンドラちゃんを射抜いた矢に自分は気付かなかった。なんなら龍さんに放たれた矢もだ。
恐らくは影矢と呼ばれる弓系のアーツだ。普通に放った矢とは別にもう1本、影に隠れて対象を射抜く。某ゲームにもあり、学ラン忍者バトルマンガでも似た技を使うキャラがいた。
けど……次は通用しない。
「本気だすぞ……『限界突破』」
自分の髪が金色に輝く。徹底的に潰す。そのプライドも何もかも。
「おいクソ神様、もう一度それ、やってみろよ」
「く、クソ……? いいだろう。今度はキッチリとトドメさしてやろう」
火遠理命が矢を番える。やはり1本しか見えない。
「死ね」
矢を放つ。限界突破で更に上がった動体視力は弓の軌跡をしっかりと捉え、矢の影に隠れたもう1本の矢がマンドラちゃんの方に向きを変え。
そのどちらの矢をあっさりと弾いた。
「高適性探索者に同じ技は通用しない、これ常識」
:そんな常識あったか?
:スコおじが言うんだからあるんだろう。
:高適性探索者=聖◯士説
:てか絶対言いたかっただけだろw
そうだよ、言いたかっただけだよ!
けどそれはさておき。
「まーたマンドラちゃん狙いやがって。汚えにも程があるな。それとも、自分を殺せないからマンドラちゃんを狙ったんですかぁ?」
「ぐぎぎ……許さんぞ貴様。ならば私の最速最大威力の技で貴様を葬ってやる!」
火遠理命が矢を番え、弓弦を目一杯に引く。
「マンドラちゃん、ちょっと待っててね」
肩掛けバッグごとマンドラちゃんを地面に下ろし。
「On Your Mark」
クラウチングスタートの態勢に入る。
「Set」
腰を上げ。
火遠理命はために溜め。
「Go」
自分が駆けると同時に矢を放つ。
視界がスローモーションになる。矢が迫る。
最速? 遅い。スコップで軽くうけながし、矢は明後日の方向へ。
一瞬すらも遅く感じる刹那、スコップを振り上げ、火遠理命の右肘を砕き、返す刀で左下腕めがけ振り下ろし、骨を砕く。
「え? あ……うぎゃあああああああああ! 私のっ! 私の腕があああああああ!!」
両腕が粉砕され絶叫を上げる火遠理命。元の位置に戻りマンドラちゃんを掲げ。
「狙いはあそこ」
「はいなのです! 『シードキャノン』!」
マンドラちゃんの放ったゴルフボール大程の種子は見事股間に命中し。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
火遠理命が声にならない悲鳴をあげ。
「龍さん!」
「OK! 後は任せるネ!」
火遠理命に詰め寄った龍さんが気を纏った拳を握り。
「去死吧你这混蛋!」
思い切りふりかぶり、拳が火遠理命の顔面にめり込んだ。
***
:勝ったーーーーー!
:いよっしゃあああああああ!
:スコおじ最強! スコおじ最強!
:マンドラちゃんさいかわ! マンドラちゃんさいかわ!
:さすロン! さすロン!
:ざまぁあああああああ!
:でもマンドラちゃんの金的はヒュッてしたの。
:たし蟹
:あれだけは男として同情する。あとは知らん。
火遠理命が膝から崩れ落ちる。鼻は潰れ、前歯は折れ、男前が台無しだ。尤も、ざまあみろとしか思えないが。
「はひぃ、はひー、この私になんて事を……」
「知るか。最初はただぶん殴るだけだったがな。こうなったのは自分で言った事覆したてめえの自業自得だ」
「ふざ、けるな……っ! とよ、豊玉姫ぇ! 私を助けろ!」
豊玉姫に助けを求める火遠理命に対して、当の豊玉姫は冷ややかな目で火遠理命を見ていた。
「おい、豊玉姫! 早く助けろと言ってるのが解らないのか!?」
「なんで貴方を助けなければならないのです?」
「……………………は? 妻は夫を助けるものだろう? なら私を助けるのは当然の義務だ!」
「あなたは私との約束を破った。決して覗いてはいけないと言ったのにも関わらず」
伝承では豊玉姫が子を出産する時に火遠理命にそう約束させている。だがそんな約束事を破り覗いてしまい、豊玉姫は嘆き、海に帰ってしまうのだ。恐らくその事を言っているのだろう。
「た、たかがそんな事で」
「たかがではありません。この事で貴方は私の夫として相応しくないと判断したのです。故に貴方は私の夫ではなく、ましてや約束事を平気で破る男の戯言など聞く必要はありません」
憐れ火遠理命、妻である豊玉姫にも見捨てられてしまった。
というかどう考えてもたかがで済ませてはいけないと思うぞ。
「う、ぐぐ、そうかい! だが私にはもう1人妻がいる事を忘れたか! たま! 玉依姫! 私を助けるだ! 玉依姫!」
火遠理命の声が木霊する。だが誰も現れない。それでも何度も何度も玉依姫を呼ぶ火遠理命。実に憐れだ。
「あー、火遠理命様、貴方に大変残念なお知らせがあるのですが……」
「五月蝿いぞ、人間! 私は玉依姫を呼んでいるのだ!」
「えー、その玉依姫ですが、貴方の息子に寝取られました」
「…………………え?」
火遠理命が今までで一番の間抜け面を晒す。
:草
:草
:www
:wwwwwww
:ぶひゃひゃひゃひゃひゃwwwwwwwww
:これは大草原不可避
:おハーブ園ですわ
:いえーい! 親父見てるぅ? あんたの2番目の嫁さん寝とっちゃいましたぁw
:息子いて草
:ごめんなさいあなた。だって彼の方が素敵なんですもの(ポッ)
:嫁さんもいて草
NTRがどうかは別として、玉依姫が息子である鸕鷀草葺不合尊の妻であるのは古事記にも書かれている。因みに、その2人の子が神武天皇だ。
しかしこうも憐れだと見てられんな。介錯するか。
「じゃあな、火遠理命。絶望しながらあの世へ行け」
スコップを思い切り振り抜き、火遠理命の頭をグシャリと潰し、先のマンドラちゃん同様頭を吹き飛ばした。
火遠理命とは決着(笑)が着きましたが、青島ダンジョン編はもう少し続きます。
尚、鸕鷀草葺不合尊は名前だけでこれといった記述がありません。NTRとかは作者(というか中村ァ)の解釈です。でも火遠理命の性格からしたらそうとしか思えないんだよなぁ。いや、乳母であり、義母である玉依姫を寝取る息子も息子だけど……
受付嬢「今日は……」
小鬼殺し「ゴブリンだ」
受付嬢「あの、今日くらいは違うのを……」
小鬼殺し「ゴブリンだ」
受付嬢「は、はい。解りました……」




