41話 魔物のフシギ
さて、もう1つの要件を終わらせよう。
「泡手さんはいますか?」
「あ、例の件ですね。いらっしゃいますよ。基本研究室に籠ってますので先に連絡入れておきますね」
受付さんが来客の旨を伝える。いきなり行くと裸族がいそうで怖い。
「では中村様、研究室へどうぞ。泡手所長がお待ちしております」
「解りました。ありがとうございます」
受付さんにお礼を言い、研究室へ。尤も、研究室とは名ばかりで、何の設備もない泡手さんの私室なのだが。
扉をノックし、
「泡手さん、中村です」
『いいわよ、入って』
「失礼します……っ!?」
扉を開けた瞬間、あるものが目に入り、勢い良く扉を閉める。
「服を着ろやーーーーーー!」
裸族がいた。
『別に見られても恥ずかしくない身体をしてるからいくらでも見てもいいのだけれど……あなたがそう言うなら服を着るわね』
「いやホント勘弁してくれませんかね。女性なんですからもう少し恥じらいというものを……」
『私の主はいい身体してると褒めてくれるわよ。恥じらいよりも主に褒められる事の方が嬉しいからいつも裸なんだけど……二斗も莉愛もちゃんと服着なさいって五月蝿いんだから。莉愛なんて色欲の塊なのに……』
何言ってんだコイツ。
「中の人、マンドラちゃんと同じなのです」
「同じ?」
「マンドラちゃんも何も着てないのです。中の人とお揃いなのです」
色々付いてないから気にしてないけど全裸だったな……やはり何か着せるべきか。
『もういいよ、入って』
時と場所によっては極めて危険な台詞だな。
とりあえず扉を開ける。流石に裸ではなかったが、やはり白衣のみだ。一応見えないようにボタンをしてるが。
「迷宮の土を持ってきました……よっこいしょ」
バックパックから土の入った土嚢袋を取り出す。地上では身体能力は人並み……というかおっさんだから重くて腰をやりそうである。
「ありがとう」
と泡手さんが礼を言うと植木鉢を持ってきた。
「これに入れてくれないかしら?」
「解りました」
植木鉢に土を入れる。少し床に溢れてしまったが、泡手さんは気にしてない様だ。
「それで、どうするんですか?」
「ん、ちょっとね。実験」
そう言って泡手さんが種を植える。すげー見覚えある種だ。小学生の頃に植えた記憶ある。てか朝顔の種だ。
「迷宮の土で地上の植物がどう育つのか、その成長のスピードは? 気にならない?」
「あー……少しは」
今は3月。本来ならもう少し後に植えるのだが。
しかし確かに気にはなる。
「しかしマンドラゴラの変異種ね……面白い子をテイムしたわね」
「可愛いですよね」
「わーい、褒められたのです」
「いえ可愛いとかではなく。変異種自体色々と存在がおかしいのよ。だから面白いの」
言ってる意味が解らない。確かに変異種というのは珍しいが、おかしいというのがよく解らない。
「あまり解ってない様なので少し講義をしましょうか。まず迷宮の魔物は迷宮が生み出した存在。それは理解できるわね?」
「それは、まあなんとなく」
「よろしい。その魔物なんだけど、基本どれもこれも全く同じ姿してない? ああ、種別毎に、という意味ね」
「そんな事言われても同じにしか見えないんだが……」
実際、ゴブリンはみな同じ姿にしか見えない。それがおかしい事とも思わないのだが……んん?
いや待て、それ生物としておかしくないか? 泡手さんは全く同じ姿と言った。それって全く同一の存在ってならないか? クローンみたいなモノだ。
先に例に出したゴブリンだって何かしら何処か違う筈だ。背丈やら肉質やら。けどコピーしたかの様に全部同じだ。
「気がついた様ね。そう、迷宮が生み出した魔物はそれぞれの種別毎に同一の個体よ。クローンどころではないわ。あと問答無用に襲ってくる事から自我なんてのも無いんじゃないかしら?」
尤も、迷宮門から出てきた魔物はその限りではないけど、と続ける泡手さん。例えばだが、迷宮のオークは男女関係なく殺しにくるが、迷宮から出たオークは女性を別の意味で襲う。そんでもって孕ませる。
だが今は変異種の話だ。
「そんな中で変異種はまるで意思があるかの様な行動をとるわ。この子もそうだけど、有り体にいえば自我がある。言わば迷宮でもイレギュラーな存在、それが変異種」
思い返して見れば確かにそうだ。バグベアの変異種は好戦的だが、自分との戦いを楽しんでいた。あと正々堂々とした戦いに拘っていた様な気がする。カースソーサラーの変異種に至っては不利と見るや命乞いをしてきた。そしてマンドラちゃんは普通に助けを求めていた。それ以前に普通のマンドラゴラの姿から大きくかけ離れていたが。
「そう考えると……確かにおかしいですね。完全コピーされたのではなく、全く別の個体。自我を持った特殊な個体が変異種という事ですか」
「そう捉えて間違いないわ」
意思を……自我を持った魔物か。何故迷宮はそんな魔物を生み出したのだろうか。だが、残念ながら泡手さんでもそれは解らないと言う。その辺は要研究との事だが……
「渡しませんよ」
「失礼ね。あなたが思ってるような事はしないわ。色々聞きたい事はあるけど……それはまた今度かしらね」
確かにもう遅い時間だ。時計を見れば4時半を回っている。
「解りました。ではまた……あ、そうだ」
「何かしら?」
「余ってる植木鉢とかありません?」
「生憎と植木鉢はこれだけよ。というか買いなさいホームセンターに行けばあるでしょ」
ご尤もで。
解りやすく説明すると迷宮の魔物はゲーム……RPGとかに出てくる雑魚モンスターです。CGとか能力値とか同一です。一方で変異種はある種のバグみたいなものです。迷宮の意思? から逸脱した存在です。
「ブクマと★、どこに入れた?」
「……君のような勘のいい(以下略)」




