4・攻略対象との出会い
王宮に集められたのは、四人の青年、多分、この四人が攻略対象なのだろう。それと、私とメリッサさんの二人だった。騎士、魔法使い、神官、商人、RPGのようなメンバーだ。その中で商人だけが異質だったが、今思うと彼が居ないと旅など出来ないだろう。旅の準備はすべて彼がやってくれた。必要な物資の調達に泊まる宿の手配。居なければ、きっとすぐにでも路頭に迷っていたことだろうから。
騎士は伯爵家の次男アルベルト・ハイトマン、騎士の中の騎士と言われる好人物で第三騎士隊の隊長を務めている二十六歳。基本、ゲームの知識で玲子が教えてくれた情報だ。筋肉! の人って玲子が一言で纏めた。年齢よりも少し、上に見られる。でも、真面目ですごく優しい人だ。黒目黒髪で、色だけなら日本人と変わらない。でも、身長が百九十センチに近いほどあるので、どうみても日本人には見えない。
魔法使いはリクセン・バーランド、最年少で魔法使いになった少年で、二十一歳。人懐こい性格で何事にも物怖じしない。明るい白髪、魔法使いは魔力が宿るとかで、白っぽい髪色になる人が多いらしい。攻略対象の中では癒し系。主人公にもよく懐く。
神官クリストファー・マクレーン。爵位はなく、神殿の生まれで、心優しい人で眼鏡キャラ、そこ大事! って玲子が言ってた。年齢はアルベルトの二つ下の二十四歳。長い銀髪に青い目の女性と見間違えるほどの美人。普段は、眼鏡でその美貌を若干、隠しているっていう設定だそうだが、眼鏡があってもなくても美人に見える。
最後は商人の青年で、フラム・ゴールド。二十八歳。細めの目は開いているのか分かりずらい。そういうキャラよくいるよね。計算高い商人だが、人付き合いは良い。この人は、玲子のお気に入りの推しだ。そういうキャラばっかり、好きになるって、ぼやいてた。赤い髪に開いた時に見える瞳は金という、ちょっと、狐っぽい感じの青年だ。
年齢だけなら、フラムさんと一緒になるのかな。攻略対象とどうにかなりたいと思ってはいないんだけどね。というか、乙女ゲームにしては攻略対象の年齢は高め。旅に出るんだから、危険な旅に王子という身分の人は同行しないのは当たり前なんだけど。
能力はどうやってあげるのかまでは、聞いていなかった。ただ、社会人の女性をターゲットにしてるゲームなので、攻略対象の年齢が高めなんだって言っていたような気がする。スマホで気軽に遊べるので、結構単純な操作なのかもしれない。
みんなの紹介が終わり、これからの説明をするために、一人の文官が部屋に入ってきた。ふと視線を送って、私の視線が止まる。
嘘、なんで、ここで。ゲームには出てこない一般人のはずだ。玲子にこの人の説明は一切無かった。リアル寄りのグラフィックなのだ、リアルに近いなら、違和感はほとんどなくて。
だって、そこには、ゲームではない、リアルの私の推しであるあの人が居たのだ。これから先、見る事も歌を聞く事も叶わないと思っていた。歌ってくれるとは微塵にも、思っていないんだけどね。
そんな、彼が。私の視線に気付いたその人は、不思議そうに私を見返した。こっちを見られている。
ライブ会場で遠くから見るだけ、参加したイベントで声を掛けてくれたのも、私が大勢の中のファンの一人だったから。そんな、有名な人が私を見てくれている。嬉しさと恥ずかしさに、私は、彼そっくりなその人に赤面したまま、俯いてしまった。その人じゃないって、頭では分かっているはずなのに。ここに、私の推しの浅生嘉隆くん、推しの嘉くんがいる。
「お嬢様?」
隣に立つメリッサさんも突然、下を向いて俯いてしまった私に驚いた様に声を掛けた。違う、あの人ではない。ただ、似ているだけ。そうしなければ、私はこの人を傷付けてしまう。
グラード・フランク侯爵が彼の名前だった。宰相補佐官で、現宰相の次男で宰相の持つ爵位の一つを賜って辺境伯領の一つを治めている。柔らかそうな茶色の髪に黒茶の瞳。今回は、旅の行動を文書に纏める書記官として、同行するようだ。
ああ、私、平常で居られる自信がない。その場にいるだけで、意識しちゃって、絶対に不審に思われる。一体、どうしたらいいのだろうか。




