3・聖女として生きる第二の人生
聖女の力を使えばオルスタード侯爵にだけでも分かってもらえるのではないか。その聖女の力の使い方なんてわからないことではあるのだがなにか方法があるはずだ。侯爵は王宮の副宰相という地位についている。上への情報伝達も早いので信じてもらえさえすれば、話は早く済みそうだ。
しかし、どうやって理解してもらおうか。しかし、その考えはメリッサさんの一言で片付きそうだ。
「お嬢様」
ふとメリッサさんに呼ばれて、お医者様の来客を告げられる。私の目が覚めたら、呼ぶように言われていたらしい。もしかしたら、先生に一役買ってもらえないだろうか。きっと、先生も私の傷の治りの速さに気づいているだろう。状況説明は、大事だし、娘の怪我の状態も知りたいだろう。その報告を侯爵にしてくれれば、もしかしたら、私の記憶喪失の事とも繋ぎ合わせてくれるかもしれない。
ただ。侯爵を悲しませることになる。馬車の事故で娘は命を落としたことになる。それだけが申し訳ない。きっと、私が死んだ時もこうして、両親は悲しんでくれたんだろうな。
でも、これから多くの人たちが瘴気に侵され命を落とすことになるよりはずっと良いことは分かっているはずだ。
* * *
その日の夜、私はオルスタード侯爵に呼び出された。聡明なオルスタード侯爵は私の説明とお医者様の説明に耳を傾けてくれた。そして、すべて理解したようだ。隣りには、副宰相補佐官のアルフ・レダニア侯爵の姿もあった。その人も巻き込めれば、良いかもしれない。飄々とした人で、表情だけでは、何を考えているのか掴めない人だった。レミリアとして覚醒した瞬間に、「君、レミリアなの?」と私に聞いてきた人だ。確かに今までのレミリアではない。明らかにすへての所作が私なのだ。オルスタード侯爵も同じように、娘ではないことを見抜いていたようだ。
「聖女殿のお名前をお伺いしても宜しいですか」
「荒坂恵美子です。残念ですが、私にこの体の持ち主であるレミリアの記憶はありません」
「それでも、聖女様には感謝します。聖女様と一緒に生きる事ができるのですから」
オルスタード侯爵にとってというよりも、この世界の聖女という存在がどれほどすごいものなのか理解できた。聖女がいなければ、瘴気の蝕まれ、この世界は滅びの道を歩むことになるのだ。聖女の情報も文献として、纏められているようで、私が荒坂恵美子と名乗っても、姓が最初で名が後だと理解してくれた。
記憶喪失と癒しの効力のお陰で、聖女認定してもらえそうだ。国も聖女が現れないことに対して、どれほど危惧していたか。オルスタード侯爵とレダニア侯爵の二人は信じてくれた。レダニア侯爵は、どう思っているのかは、分からなかったが、これから、実際に神殿に赴いて、水晶球を浄化する事が出来れば問題なく聖女として認定してくれるだろう。
私はほっと胸を撫で下ろしたのだった。怪しい事はわかっていたので、信じてもらえて本当に良かった。




