第143話 未来への第一歩
『それにしてもタイムスリップの起点が酷すぎる……』
「し、仕方ないでしょ! こっちだっていろいろ拗らせちゃってたんだから!」
『まあ、それについては僕にも責任があるから何とも言えないけどさ』
何があったかを包み隠さず話したことで、白君は何とも複雑そうな声音になっていた。
『過去に飛んだ人間は後悔を晴らすと成仏する』
「あたしもクロもそうだったわよね」
『でも、それならどうして今、君はここにいるのか』
白君の指摘に、あたしは少し息を詰まらせる。
「……わからない。死んで過去に行ったなら、そのまま消えるわよね。でも、あたしはまた生きてここに戻ってきた」
『それこそが一番の謎だよね』
白君は考え込むように言葉を止めた。
「もしかして、クロも成仏したあと自分の時代で生きてるんじゃない?」
『その可能性は高いね』
白君はゆっくりと自分の考えを口にする。
『死んだ。もしくは死ぬかもしれない怪我をした。そんな人間は未練を抱えて過去に飛ぶ。そんな世界の仕組みがあるのかもね』
それは希望的観測も含まれていた。あたしは少ししか会えなかったけど、クロは白君にずっと付き添っていたのだ。
そんな彼がもう一度やり直していてほしい。そう思ったのだろう。
「それじゃ未来人だらけになってるでしょ」
『それもそうか。幽霊なんてあんまり見えるものじゃなかったし』
「そこそこ見てるのよね、白君……」
彼が心霊企画でガチ目に呪われたり、お祓いに行っているのを知っているだけに複雑気分だ。
『きっと、英さんが戻ってきたのには、何か意味があるはずだよ』
「意味、か……」
考えてみれば、あたしは過去でできることはやり切ったと思う。
自分自身と向き合い、リラとの関係も改善され、そして白君と過去のあたしは恋人になった。
『過去を変えたことによって、今の英さんが生きる意味ができたんじゃない?』
「……確かに過去を変えたことで、あたしも少しは変われたのかもね」
過去のあたしが言っていた延長戦。それがきっとあたしがここに戻ってきた意味なのだろう。
本当、過去のあたしには教えてもらってばかりだ。
自分に言い聞かせるようにその言葉を口に出す。
『未来は決まっていない。だからこそ、僕たち次第でどうにでもなるってことなんだろうね』
「……過去のあたしに教えられたって思うのは癪だけどね」
あたしはゆっくりと息を吐いた。
「今度こそ、疎遠にならないように未来をちゃんと生きてみせる。だから、覚悟してよね?」
『僕も、もう迷わない。ずっと傍にいるよ』
白君の言葉が心に響く。どんな未来になっても、もう迷わない。そう決めたのは、あたしも同じだった。
ゆっくりと夜が更けていく。
この会話が、あたしたちの新しい未来の第一歩になるんだ。




