第6話 衝撃の告白
なんとまさか、デュークから告白された。
この1年間、女性から告白されることはあったが、男から好きだと言われたことはない。
もちろん、前世でもね。
ここから衝撃のBL展開が始まってしまうのか。
そう警戒したのも束の間、デュークが腰をふにゃりと折って、地面に座り込む。
銀髪が太陽の光を反射して輝いていた。
確かにデュークは美形だし綺麗な男なのかもしれないが、別にイチャイチャしたいとは思わない。って、なんでここでデュークとの恋愛について考え出しているんだ?
「それは……どういうこと?」
やっぱりよくわからない。
好きになられるようなことをした覚えはないからだ。
俺がしたことといえば、こいつのパーティを壊滅させ、勇者から自信を奪い……うわ、並べていくとなかなか酷いことしてるな。
生き残るためにしかたなかったとはいえ、これだと勇者パーティの面々が可哀想だ。
「1年前のあの日、オレは貴様に圧倒的な『強さ』を見た」
「ほう」
「王国最強と呼ばれたオレたちを簡単に制圧し、わざわざ殺すこともなくダンジョンの外まで逃がした余裕っ……」
殺そうなんてことは1ミリも考えていなかっただけだ。
余裕があったから逃がしたとかじゃない。
「その後1年間、貴様をストーカーし続け、オレは気づいた。貴様を見ると、胸がゾクゾクすることに」
「それは無意識のうちに俺を恐れてるからな気がするけど」
胸がゾクゾクって表現はやめてくれ。
少しキモいぞ。
「副団長のマックスに聞くと、ヤツはそれが恋だと言った。つまり、オレは貴様のことが好きだということだ」
さては、重要な部分を省いて聞いたに違いない。
マックス君も、さすがにダンジョンのラスボスのことを言っているとは思わなかっただろうし、男だとも思わなかっただろう。
「言いたいことはわかった。うん、わかった。よーくわかった」
要するに、デュークはアホだということだ。
「俺から言わせると、それは恋じゃない。単純に俺に憧れてるのか、強さに尊敬しているのか、ストーキングしていることの背徳感がアレしてアレになって……みたいなヤツだから、心配しなくていいと思う」
これで落ち着いてくれるといいけど。
デュークは先ほどまで鼻息を荒らげながら話していたが、少しだけ呼吸が穏やかになってきた。
バックグランドで流れている街の音楽や波の音も、いい鎮静剤の役割になったんだろう。
「オレは本気だ、フェニックス」
顔を近づけて囁かれる。
だから、これはBLじゃない。
そういった行動は慎んでもらいたいね。
冒険者の街、フィアンスフィアに滞在してから3日が経過した。
まだミルとは会っていない。
毎日ギルドに確認を取っているが、ミルがギルドに現れるのは不定期なので、誰も予測できないとのことだった。
彼がどこに住んでいるのかはわからないとのことだったので、これは気長に待つしかない。
街の雰囲気は気に入ったし、宿屋の近くに美味しいレストランがあった。
通常モードに戻ったデュークと一緒に行ってみたが、王都にある行きつけのレストランとはまた違う、港町ならではの海鮮料理を楽しむことができた。
そして、滞在3日目の夜。
ついに、宿屋の前にあの男が現れた。
「会うのは1年ぶりになるね、デューク」
中性的な声で挨拶してきたのは、ハーフリングのミル・ワンダーランド。
丸っぽい栗色の瞳に、黄土色の髪。
小学生みたいな背丈に、可愛らしい顔立ち。
こんな見た目だが、34歳という小人族の冒険者だ。
かつての勇者パーティでは盗賊ポジションとして、あらゆる攻撃を得意とするパーティの戦闘力における要だった。
「キミは……」
デュークに対しては笑顔だったが、俺を見た途端、表情が一気に変わる。
敵に対して向ける、鋭い目つきだ。
「……詳しく話を聞かせてもらおうか」
だが、その激しい敵意も、一瞬にして穏やかなものへと変わる。
俺に攻撃の意志がないことはわかっているだろうし、デュークと一緒にいるということで警戒する必要もないと悟ったんだろう。
ミルは賢く、察しのいい男だ。
ダンジョン探索中のトイレ休憩にも気を配れる、できる男としても知られている。
それもあって、キャラ人気ランキングではフェニックスに匹敵する2位なんだよなぁ。
「またキミと会えるなんて光栄だよ」
毒気のない笑みを浮かべながら、ミルは言った。




