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ラスボスに転生したのでダンジョン1階層で勇者パーティを待ち構えた。  作者: エース皇命


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2/17

第2話 問題発生

 俺が平和な未来を手にしてから、1年が経過した。


 この1年、凄く充実していた。


 ヒューマンなのでダンジョンの外に出たとしても、ラスボスが地上に侵攻しにきた、と勘違いされることはない。


 普通の赤髪イケメン青年として、上手く人間界に溶け込んでいる。


 ダンジョンの中で陰湿な暮らしを送ることもできたが、モンスターに囲まれていると落ち着かないし、暇だ。

 だから地上に住んで、バイトをしながら生計を立てていくことにした。


 ダンジョンは王都の外れの森の中にある。


 少し歩けば――と言っても、普通は馬車で1日かけて移動する距離ではあるが――王都の中心部に着く。


 俺がバイトしているのは、王都にある有名な酒場。

 店主が訳ありも歓迎してくれるような器の広い人だったおかげで、俺は難なく仕事を見つけることができた。


 今はこの酒場のバイトだけで十分に生きられるだけの収入がある。


 というのも、俺は食事をしなくても生きられるという特殊体質で、その気になれば食費をゼロにすることだってできるからだ。


 家賃さえ払えば、あとはそこまでお金を必要としない暮らし。

 食べなくても生きられるとはいえ、やっぱり食事は楽しみたい。


 そんなわけで、たまに3つ星の高級レストランに行って食事をしたりしている。


「フェニックス君って、出身はどこなんですかぁ~?」


「さあ、どこだろうね」


 酒場に来る常連客は、女性が多い。


 意外だと思われるかもしれないが、実はその理由は俺にあった。

 イケメンであるということは素晴らしい。俺の噂は王都中の女性の間を駆け巡り、今では遠くの街からわざわざやってくる客もいる。


 俺も罪な男だぜ。




 賃貸の家に帰り、ベッドに寝転がる。


 1か月前、子猫を拾った。

 オスカーという名前をつけて可愛がっているが、実はメスであったことを昨日知ったのだ。


 名前を変えてやるべきか悩んだものの、結局呼び慣れているオスカーで通すことにした。


「オスカーちゃんは可愛いにゃ~」


 猫としゃべるっていうのは、いいね。

 一人暮らしは退屈なことも多かったから、ちょうどいい。


 前世でいろいろあったせいか、俺は女性が苦手だ。


 だが、猫との会話であれば疲れないし、最高の癒しになる。オスカーちゃんは俺のベッドにちょこんと座ると、そのまま体を寄せて寝始めた。


 ――ああ、にゃんこ最高。


 バイト先の酒場から、猫の餌になりそうな肉を持ち帰っているので、オスカーちゃんの食事は大丈夫である。




 ――コン、コン、コン――




 落ち着いた、3回のノック。

 これは……俺の家、だよな?




 ――コンコンコン――




 警戒して反応しなかったら、今度はさっきよりも速いノックが聞こえてきた。


 しかたない。

 少し怖いが、開けるしかないか。


 まあ、俺はそもそも強いわけだし、戦えば間違いなく勝てる。うん、問題ない。


「はーい」


 ベッドに猫を残し、玄関に移動する。


『みゃー』


 オスカーちゃんが鳴いた。


 どうやら起きたらしい。

 眠りを邪魔されたオスカーちゃんは少し機嫌を損ねたのか、俺の方まで来て猫パンチを繰り出してくる。


「ごめんな。ほら、お肉あげるから――」




 ――コンコンコン――




「あ、はいはい、開けまーす!」




 ――バコン――




 なんだろう。

 玄関から嫌な音がしたんだが。


 ドアをぶっ壊してないだろうな?


「ちょっと! それはあまりに乱暴というか……」


「久しぶりだ。少し、話がしたい」


「デューク……」


「オレの名を知っているのか?」


 なんと、玄関には――。


 俺が1年前に倒し、ダンジョンから追い出した、デュークが立っていた。




 誤解のないように言っておくが、勇者パーティを倒しただけであって、殺したわけじゃない。


 それは大きな違いだよね。

 もう来るなよって意味で、勇者パーティを壊滅させただけなのだ。


 だからここにデュークが生きて存在していることは、別に驚くことでもなんでもない。


 だが、問題は別のところにある。


 どうして、彼は俺の家を知っているのか。

 どうして、彼は今更ラスボスに会いにきたのか。


 それなりに謎は多いが、冷静に話ができる人間であることは知っているので、警戒しながらもリビングに案内する。


「猫を飼っているのか?」


「1ヶ月前からね」


「……そうか」


 デュークはクール系のキャラなのだ。


 適当な雑談は向いていない。


「それで、なんで俺の家に来たの? ていうか、なんでここがわかった?」


 これが何よりも重要である。


 復讐に来たとか言われても、戦うつもりなんてさらさらないからね。


「貴様を監視していた。この1年、ずっと」


「え……」


 もしかして、ずっとストーカーしてきてたのデュークだったの?


 しつこいファンの女の子かと思ってた。なんかちょっと恥ずかしいな。


「貴様も知っているとは思うが、俺は勇者パーティが解散してから、国王軍の騎士団に入り、今は騎士団長を務めている」


「そうだったんだ……おめでとう」


 全然知らなかった。


 まあ、納得はできるけど。


「貴様の監視は任務ではなく、個人的なものだ。だが、騎士団の一員として、ここ1年のダンジョンの変化も監視し続けてきた」


「ダンジョンの変化か……」


 そういえば、ダンジョンにはちょうど1年くらい帰ってないな。

 実家ってわけでもないし、戻ってもすることないから、帰省する意味がないんだよね。


「貴様と戦った後から、モンスターの動きが鈍くなり、地上で暴れ回ることが一切なくなった。それは貴様がダンジョンを出たからだろう」


 デュークの表情は変わらない。ずっと無表情に近い。


「この1年、貴様を見た限り、人間に敵意や害意を持っているようには見えなかった。実際、その通りだと考えていいのか?」


「そうだね。俺は平和に暮らしたいだけだし」


「……そうか。だが、ここ最近、以前のようにダンジョンのモンスターが地上に溢れ出し、暴走するという報告が何件もある」


「そんな……」


 俺はそんな指示出してないぞ。

 ダンジョンを出る時、外には危害を加えずに大人しくしろ、という命令を全モンスターに送ったのだ。


「知らなかったのか……」


「全然知らなかったんですけど」


「だが、それも無理はない。数日前、ダンジョンから膨大なエネルギーが放出された」


 なんだか嫌な予感がする。


「それってつまり……」


「貴様が1年間ダンジョンを留守にしていたことで、新たなダンジョンの支配者が誕生した――王国騎士団はそう考えている」

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