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ラスボスに転生したのでダンジョン1階層で勇者パーティを待ち構えた。  作者: エース皇命


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第1話 ラスボス転生

 目が覚めると、自分が転生していることに気がついた。


 周囲に人はおらず、声をかけてくることもない。


 でも、ここがどこで、この世界がどういうものなのか。

 それだけはすぐに理解することができた。


 俺が転生したのは、大人気ダンジョンファンタジーゲームのラスボス、フェニックス・サンダーボルト。


 赤き覇者と呼ばれ、ラスボスでありながら、そのかっこいい容姿と圧倒的な強さで絶大な人気を誇るという、存在感がとてつもない強キャラである。


 種族はヒューマン。


 どういう裏設定があるのかは知らんけど、とりあえず人間なのにダンジョンでラスボスをしている、めっちゃ凄いヤツだ。


「なるほど……つまりここがダンジョン最下層」


 覚醒して数分くらいボーッとしていたが、ここで恐ろしい事実に気がつく。


 ――もしかして俺、ここで死ぬんじゃね?


 そう。

 もしあのファンタジーゲームの世界に転生したのであれば、俺は勇者パーティに倒されてしまう。


 奴らはダンジョンを攻略するために作られた、エリート集団。

 選ばれた精鋭たちがダンジョンに潜り、助け合いながらさらに成長し、最強のラスボスであるフェニックスを討伐する……。


 まだ俺が倒されていないということは、それは今後起こる可能性のある未来なんじゃないか。


 となると、状況は良くないよね。

 まずは彼らが今、どの地点まで来ているのかを確認すべきだ。


 神経を集中させ、ダンジョンに意識を向ける。


 公式設定によると、ダンジョンの支配者であるフェニックスは、ダンジョンのどこにどんな生命体がいるのかを完全に把握しているらしい。


「お、まだダンジョン1階層の序盤じゃないか」


 そして発覚する。


 彼らは今、ダンジョンの序盤だ。


 無論、普通の人間と比べれば、遥かに強い。

 だが、彼らはダンジョン探索を通して力を高めていく。


 そう考えると、今の時点では俺の方が遥かに実力が上だ。


「よし、なんか申し訳ないけど、勇者パーティ倒してくるか」




 ダンジョン1階層。

 俺がさっきまでいた最下層は、ダンジョン50階層だった。


 そこから1階層まで歩こうと思えば相当な時間を要するが、俺はラスボスであり、ダンジョンの支配者。


 モンスターと戦う必要はないし、ダンジョン内であれば好きな場所に瞬間移動できるというチート能力も持っている。


 最高じゃん。

 ダンジョンの中ではね。


 というか、そんな能力があるんだったら、ゲームの中でも1階層で待ち伏せしてさっさと勇者パーティを倒せば良かったのだ。


 頭が残念なヤツだな。


「待て」


 普通の人間が目視できるかできないかの場所にいる勇者パーティの諸君。


 リーダー格の長身の男が、低い声を放った。

 彼はデュークという名の、パーティのリーダー的存在だ。


 主人公の勇者ではなく、勇者の信頼できるクールな仲間ポジ。


「この先は危険だ。引き返した方がいい」


「いやいや、さっきダンジョンに入ったばかりだぜ? 盛大に送り出してもらったのが馬鹿みたいじゃないか」


 デュークの賢明な判断に文句を言ったのが、主人公のアクセルだ。


 金髪碧眼の勇者という、まさにテンプレイケメン勇者である。

 ちなみにナルシストすぎてモテないという、悲しき設定を抱えていたりする。


「ボクが矢を放とうか? 先端に火をつけた矢だから、遠くの敵も確認できると思うし」


「それだと気づかれる」


「今日のデュークは警戒心が強いね」


「それはいつもだっての」


 矢を放つという、なんとも絶妙な案を出したのがハーフリングのミル。


 彼は所謂小人で、120センチという小柄な体格ながら、近距離攻撃も遠距離攻撃もできる、万能な盗賊ポジションだ。


 最後のぼやきはアホのアクセル。

 主人公の勇者の性格や口調が勇者っぽくないって言われて、話題になってたこともあったな。


 まあ、それはともかく。


 今の彼らなら余裕で倒せそうだし、そろそろ登場しますか。


「やあ、勇者の諸君」


「「「「「――ッ」」」」」


 パーティ全員の警戒心が一気に高まる。


 それも当然だ。

 ラスボスが目の前に姿を現し、気さくに挨拶してきたのだから。


 まだ1階層なのにね。可哀想に。


「俺はこのダンジョンの支配者、フェニックス・サンダーボルト。君たちを倒しにきた」


「ダンジョンの支配者……? なんで1階層に現れるんだ? 普通、もうちょっとあるだろ。余興的なものが」


「うん、君の言いたいことはよくわかる」


 まあ、普通はこうなるよね。


 これに関しては君たちに心底同情するよ。


「なぜヒューマンの貴様がダンジョンを統治している?」


 デュークが的確な質問を投げてくる。

 それは俺も聞きたい。


「なんか……成り行きでこうなった。納得してくれなくてもいい」


「……」


 結局のところ、そんなことはどうでもいいのだ。


 俺はこれから勇者パーティを倒さなければならないし、今後友達になるわけにもいかない。


 というわけで、早速実力行使である。




 ――1分後――




「嘘だろ……ここで、終わるのかよ、おれたち……」


「貴様……それほどの強さを……」


「なんだかあっけないね……」


「わ、わたくしがこんな簡単に……」


「にゃー……」


 すまない、勇者パーティの諸君。


 これは俺が生き残るためにやったことなんだ。


 別に君たちを襲うつもりはないから……あれ?


 最初から襲うつもりがないって、正直に言えば良かったのかな? そしたら、戦わなくて済んだのか?


 そういう考えも思い浮かぶが、多分そんなことはできないだろう。

 勇者とダンジョンの支配者は戦う定めにある。


 ――その運命を無視することはできない。


 こうして、俺が勇者パーティにやられてしまう未来はなくなった。






《1話あとがき》

 タイトル回収は終わりましたが、物語はこれからです。

 楽しみにしていただけたら嬉しいです。


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