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ラスボスに転生したのでダンジョン1階層で勇者パーティを待ち構えた。  作者: エース皇命


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第14話 ハイエルフの美女

 正直なところ、俺はミルのことを完全になめていた。


 最初は師匠とか言って尊敬していたわけだが、実はモンスターが怖くてただ逃げるだけのヤツだと知り、彼に対する期待値をゼロに落としていたわけだ。


 だがどうだ。


 今、この光景を見ろ。


 まさにミルの無双シーン。


 ほとんどのエルフの武器は弓矢。

 さっと構えると、ミルを的にして狙いを定めてくる。


 さっとナイフを取り出したミルは、飛んでくる矢を丁寧に空中で斬り落とし、そのまま一気にエルフたちとの間合いを詰めた。


 素早い身のこなしに、正確無比のナイフ捌き。


 もう一度師匠と呼びたいなと思ったが、やっぱりやめておいた。調子に乗りそうだし。


「これがエルフとの戦い方だよ。よく見ておくといい」


 そう爽やかに言うと、周囲にいたエルフ10人をあっという間に倒し、あっさりした顔で俺たちのところに戻ってきた。


 周囲にいる一般人のエルフは唖然としている。

 反撃されたことに対する怒りというよりは、ミルの優雅な身のこなしに驚いているような感じだ。


『もしかして、本当に勇者パーティのメンバーだったり……?』


 ひとりのエルフの口から、そんな可能性の一言が。


 まあ、それは事実なんだけど。


「だから最初から言ってますよね」


 少しムカついたので、俺も口を開いた。

 最初から素直に話し合いに応じていれば、こうはならなかったからね。


 今回の件に関してはほとんどエルフが悪い。エルフを相手に戦っている時のミルの表情が、生き生きしすぎていたことも問題かもしれないけど。


「何の騒ぎですの?」


『これは……エミリー様』


『エミリー様だ』


『本物だ』


 どうやらいつの間にか報告が行っていたのか、この騒ぎが大きすぎたのか。


 エミリーご本人が登場した。

 相変わらず美しい容貌なのは変わりないが、今ここで改めて驚くこともない。


「ミル、デューク、お久しぶりです」


「やあ、エミリー。一応言っておくけど、先に手を出してきたこのエルフ君たちだよ」


「ええ、見ておりましたので」


「見てくれていたなら、早めに来てくれれば良かったのに。それとも、ボクが戦う姿が見たかったのかい?」


 エミリーは上品にうふふと笑うと、周囲のエルフをざっと見回した。


「こちらの方々はわたくしの友人です。共に戦った仲間ですの」


 地位の高いハイエルフということで、周囲のエルフは畏れ多いという表情をしながら、できるだけ目立たないようにこの場を離れていった。


 いつの間にか、この場にいるのが4人だけになる。


 ここで、エミリーがようやく俺の方に視線を送った。


「まさか、あなたとこんなに早く再会できるなんて」


「俺のこと覚えてるの?」


「ええ、もちろんですとも」


「なんかこう……それにしてはやけに友好的だけど」


 こうして向かい合う見目麗しいエルフの美女。

 彼女からは一切の敵意を感じない。


 どちらかと言えば、俺に会えて嬉しい、というような感情さえ読み取ることができる表情だ。


 なんだろう。

 俺って本当にラスボスだったんだよな?


「詳しいお話は、わたくしのおうちで伺いましょうか」




 エミリーのおうちは、やっぱり豪華だった。


 なんだろう。

 身分の差って残酷だし、お金って素晴らしいね。


 ざっくりと言えば、そんな感じの豪邸だ。


 エミリーは応接室に俺たちを案内すると、そのままメイドを呼んでお茶を出させた。


 そして――。


「わたくしも、戦いに参加させてください」


 びっくりするくらい単刀直入に言ってきたエミリー。


 ダンジョンの新しい支配者が現れた、とかいう情報も伝えていないのに……だが、どこかでその情報を耳にしていてもおかしくはない。


「あなた方がこうしてここにお越しになったということは、また新しい戦いが始まる、ということでしょう?」


「物分かりが良くて助かるよ。もう知っているかもしれないけど、ダンジョンの新しい支配者が誕生したんだ。どうやらデュークとかつての支配者であるフェニックス君が戦っても勝てない相手だったらしい」


 正直なところ、戦ってすらないんだけどね。

 ダンジョンの40階層で門前払いを食らったわけだ。


「そうでしたのね。初耳ですわ」


 口をポカンと開け、動揺した様子を見せるエミリー。


 ダンジョンのことは知らなかったか。


 物事がここまでスムーズに運んでいるのは、ただ彼女の察しが良かっただけだった。


「良ければ、キミにも戦いに参加してほしい、って頼みにくるつもりだったんだけど、頼み込む前にキミの方から言ってくるなんてね」


「実はこの1年、暇でしたの」


 小さな溜め息をつき、頭に手を当てるエミリー。


 その様子から考えて、相当暇だったっぽい。


「噂で結婚して子供がいると聞いたが」


 デュークがここに来て初めて口を開いた。確かに、子供や夫がいると考えれば、無事に帰還できる可能性が高くはない戦いに巻き込むのは、気が引ける。


「ああ、それは嘘ですわ、嘘」


「嘘?」


「半分は本当ですわね。親が勝手に進めた婚約話で弱い男と結婚させられましたの。ですが、すぐに離婚して、今は一族の腫れ物扱いですわ」


 それにしては、さっきのエルフから敬意を払われていたようだけど。


「わたくしは美しいから、多くのファンを抱えてしまいますの。美女の宿命ですわね」


「……」


 なるほど。

 納得はした。


「ひとつ、質問をしてもよろしくて?」


 エミリーが俺を見ながら、優雅な笑みを向けてくる。

 その笑みに静かなプレッシャーを感じつつも、頷いた。


「かつてダンジョンで戦った相手であるあなたが、どうしてわたくしたちに協力してくださるのでしょう?」


「フェニックスは無害だ。我々と戦ったのは平和な暮らしを守るためだった。1年間ストーカーをしていたオレから言わせてもうと、彼は強く、温厚で、魅力的な男だ」


 顔を真っ赤にして言うんじゃありません、デューク君。


「そ……そうでしたのね」


 そんなデュークを見て、エミリーが引いているのがはっきりとわかった。

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