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ラスボスに転生したのでダンジョン1階層で勇者パーティを待ち構えた。  作者: エース皇命


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第13話 エルフの街

 エルフの街は、正式にはエルラリオンっていう。


 そんなことはどうでもいいわけだが、とりあえず言っておくことにする。


 冒険者の街が港町であったことと比べ、エルフの街は内陸部にあって、豪華な神殿や闘技場が並ぶ都会だ。


 想像だと森の中の田舎って感じだったが、真逆じゃないか。

 もしかしたら、王都よりも発展しているかもしれない。


 そもそもエルフっていうのは生まれながらに高潔な存在とされていて、他の種族との馴れ合いを好まない。


 中にはエルフ至上主義と呼ばれる面倒なヤツらもいて、ヒューマンやドワーフ、ハーフリングといった他種族を差別したりすることもあるそうだ。


 コンプラ的に大丈夫?


「一応言っておくけど、ボクはエルフとの戦闘は得意だよ。喧嘩になったら教えてね」


 ミルが微笑みながら言ってくる。


 冗談だと思いたい。


 フラグになるようなことは言わないでほしかった。




 街を歩くのは、エルフだけ。


 ざっと見た限りだと、ヒューマンやハーフリングはいない。


 街への出入りが制限されてるってわけでもなさそうだ。

 俺たちが街に入る時は何も言われなかったし、街の周囲に堀や門もなかった。


「軽蔑の視線だ」


 デュークが近くを歩くエルフを睨む。


 ほんのり感じてはいたが、エルフの街に入った俺たちへの視線は、決して温かいものじゃない。


「耳を尖らせてくるべきだったね。でもボクは小さいからハーフリングだってバレるか」


「そのセリフが余計にエルフを刺激してるけど」


 ――耳を尖らせてくるべきだった。

 その発言が、エルフの反感を買ったらしい。


 非難の視線が、一気に降り注ぐ。


 注がれているのはミルだけじゃなくて俺とデュークも同じなので、ここはミルに責任を取ってもらいたい。


「すまないね、悪気はないんだ。ボクたちはエミリー・ホワイトブレスの旧友だよ。もし良ければ、彼女のところに案内してほしいんだけど」


「エミリー様の旧友だと? 冗談はよせ」


 武装した強そうなエルフの男が、ミルを蹴りつけながら言ってくる。


 蹴られた小人は、ぼふっと飛ばされて俺の胸にぶつかってきた。巻き込み事故だ。


「あの、ちょっといいですか?」


 手を挙げ、周囲の注目を集める。


「もし俺たちが本当にエミリーさんの知り合いだった場合、あなたたちはエミリーさんを怒らせることになりますよね? エミリーさんってハイエルフだし、その……ねぇ」


 後はわかるよね的な雰囲気を出しておけば、大丈夫だ。


 こうやって言葉を使って冷静に話をするだけで、大抵のことは穏やかに解決することができる。


 冒険者ギルドでやったことと同じような感じだ。

 あの時はおっさんも冷静になってくれたし、運が良かったことはあるけど。


「エミリー様がお前たちのような愚民どもと関わりを持つはずなど――」


「1年前、勇者パーティを組んだメンバーで――」


「勇者パーティだと? 確かにその話は有名だが、そこのチビが伝説の勇者パーティの一員だったなどとは思えん」


 どうやら武装エルフ男は、ミルのことを叩きたいらしい。


 怒ってもいい状況なのに、ミルは終始冷静だった。


「まずはエミリーをここに呼んでほしいね。それか、ボクたちをエミリーのところへ連れていくか。お土産もあるんだ。喜んでくれるといいけど」


「エミリー様を呼び捨てにするなど――」


「ボクたちはかつての仲間でもあり、友人なんだ。キミたちにとってはお偉いさんでも、ボクたちにとってはただの友人だということだよ」


 俺にとっては友人でもなんでもない、ただの元敵だけどな。


「生意気なハーフリングめ。痛い目に遭わないとわからないのか?」


「おっ、もしかしてボクと戦うつもりかい?」


 そんな嬉しそうな顔をするな。

 待ってました!って感じの表情になってるし。


 ミルは満面の笑みのまま攻撃の構えを取り、相手が手を出してくることを待っている。


「どこまでも愚かなハーフリングだ」


 武装エルフ、攻撃。


 長くしなやかな脚を上げ、優雅にキックを繰り出す。


「残念ながら、ボクはエルフとの喧嘩が専門なんだ」


 弾けそうな笑みで、武装エルフを吹っ飛ばすミル。


 拳を少し振るっただけなのに、その風圧でエルフは飛んでいった。それだけ強いなら、モンスターとの戦えるだろうに。


 そこら辺のアホなモンスターより、知性のあるちょっとイキったエルフの方が普通に怖いと思うけどね。


「やりすぎだ。少しは加減をしたらどうだ?」


「これでも加減したんだけどね」


 デュークが咎めるが、ミルはケロッとした笑みで応じるだけだ。


 吹っ飛ばされた武装エルフ男は、建物に激突してピクリとも動かなくなった。


「死んでないよね?」


 ミルに聞く。


「大丈夫。背骨が折れたくらいで死ぬようにはできてないよ。エルフは頑丈だからね。専門家のボクが言うから間違いないよ」


 いつからエルフ専門家になったのか。


 師匠と呼んでいた頃に言われれば納得して一安心したのかもしれないが、今ではただ疑いの念を覚えるだけだ。


 急に巻き起こったハーフリングとエルフの戦い。

 そしてそれは、一瞬にして終わりを迎えた。


 激しい音と風圧で、周囲の注目はミルとやられた哀れな武装エルフに向けられている。


『あの野蛮人どもを捕まえろ!』


 一斉に投げかけられる非難の声。


 ミルは嬉しそうに指をポキポキと鳴らした。


「エルフとの戦闘は専門分野。ここは存分に楽しませてもらうよ」

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