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ラスボスに転生したのでダンジョン1階層で勇者パーティを待ち構えた。  作者: エース皇命


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第11話 エンシェントドラゴン

 ――モンスターが怖い。


 ヒューマンやエルフ、ハーフリングなどの人間とは違い、ほとんど知性を持たず、本能のままに襲いかかってくるモンスター。


 確かに怖いよ。

 それはわかる。


 だとしても、あのエリート集団である勇者パーティのミル・ワンダーランドが、モンスターが怖いので逃げ出します、なんてことがあるんだろうか。


 いや、実際にあるんだよな。

 今もこうやって姿を消してるし。


「逆に今までどうやってきたの?」


「……」


 黙ったまま、視線を地面に送るデューク。


 その意味ありげな視線を追っていくと――。


「あ!」


 ミル師匠が、そこにいた。


 地面に穴を掘り、そこに体を埋めていたのだ。


 ミルとかいうキャラにそんな裏設定があったとは……。


 もう師匠って呼ぶのはやめよう。なんかこっちが恥ずかしくなってきた。


「やあ、順調かい?」


 穴にハマったまま、笑顔で聞いてくるミル。


 とりあえず俺はミルのヌード付き非公式画集を取り出し、エンシェントドラゴンに放った。


「これは贈り物だ。くれてやる」


 そう言って、ドラゴンに背を向ける。


 収穫されるのを待つ大根みたいになっているミルを地面から引き抜き、そのまま全力疾走。


 もちろんデュークも後ろから追いかけてくる。


「戦わないことを選んだか。懸命な判断だ」


「いい判断だよ、フェニックス君」


 なんかムカついたので、ミルを落としてやった。


 自分で走って逃げるくらいはできるだろう。


「少々乱暴だね。でも、及第点をあげるよ」


 とかなんとか言いながら、あり得ないほどのスピードで俺の隣を抜けていくミル。


 逃げ足が速いとはこういうことだったのか。

 きっとこれまでも、モンスターが現れれば一目散に逃げることを繰り返してきたんだろうな。


 かなりガッカリだ。


「どうやらドラゴンはボクたちを追う必要はないと考えたみたいだね」


 悠長なことを言っているが、何もしてないぞ、こいつ。


 頼りになるのは言葉だけだったか。


「ボクは別に、モンスターが怖いわけじゃないんだ。モンスターがボクを怖がっている、と言った方が正しいかな」


 なんか言い始めたぞ。


「ボクを見るとモンスターは恐怖のあまり逃げ出す。でも、そしたら討伐できないだろう? だからボクは戦線を離脱して、いつもみんなのことを見守っているんだよ」


 それっぽい理由を言ったが、まったく信用できない。


 補足として言っておく。

 穴に埋まっている時のミルは、恐怖のあまりブルブル震えていた。


「なるほど。それはどうも」


 これ以上ミルに対して言うことはない。


 口数が異常に多くなったミル、呆れ顔のデュークと共に、エンシェントドラゴンの洞窟から脱出した。




 クエスト失敗。


 これには受付嬢も予想通りというような反応で、特に驚くようなことはなかった。


 これで俺たちも、エンシェントドラゴンの前に散っていた冒険者の仲間入りだ。

 実際に蹴散らされなかっただけまだマシなのかもしれない。


 ていうか、こんな状態で新しいダンジョンの支配者と戦えるんだろうか?


 ミルと合流したことは本当に正しい判断だったんだろうか?


 そこら辺はひとまず考えないことにして、なんとかなりそうなことを考えよう。


「ボクたちの次の目的地が決まった」


 ギルドのテーブルで落ち着きながら、堂々とした顔でミルが言った。


 ちなみに、彼が飲んでいるのは味わいが強烈なことで有名なウィスキーである。本人が言うことには、アルコールに対する耐性はどの種族よりも小人族であるハーフリングが優れているそう。


 もう3杯くらい飲んでいるが、確かに全然平気な様子だ。


「ズバリ、エルフの街だ」


 エルフの街、というと、勇者パーティのメンバーだった、ハイエルフであるエミリーの出身地だ。


「エミリーか」


 デュークが呟く。


「ボクがこの前酒場で聞き出した情報によれば、エミリーはあれからエルフの街に戻って結婚し、さらに身分を高くした上に子供まで産んでしまったらしい。噂にはなるけどね」


 エミリーも成長したなぁ。

 結婚おめでとう、と言ってやらないと。


「だとしたら、こういう戦いに巻き込まない方がいいだろうな」


 子供もいるんだったら、尚更だ。


 このわけのわからん連中とダンジョンに潜る必要なんてない。


 エミリーは勇者パーティの中でも飛び抜けて高潔で、正義感の強いメンバーだった。

 それを知っているからこそ、引退してからの人生を満喫してほしいと思う。


「んー、それはどうだろうね。キミはわからないかもしれないけど、ボクとデュークはエミリーのことを知っているんだ。彼女がそう簡単に結婚して子供を作るとは思えない」


「子供を産むタイミングも早すぎる。その噂は事実ではない可能性が高い」


 ミルの言葉に、デュークも賛同する。


 まずは仲間の結婚を素直に祝ってやれよ。


 美人な友達が結婚したことの悔しさというか、なんとも言えない複雑な気持ちはわかるけどさ。


「真偽を確かめに行こう。エルフの街はここからそう遠くないからね」


 お互いに頷き合うミルとデューク。


 正直なところ、俺はこの2人の二の舞になってしまうんじゃないかと警戒している。


 頼れるヤツかと思えば急に告白してくるし、師匠と慕えばモンスターから逃げ出す。


 エミリーは公式設定によれば世界最高の美女。

 そんな美女エルフに期待を裏切られると……もう俺はこの世界の何にも期待しなくなるだろう。

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