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義理チョコキングと頑張り屋さん ~隣の姉妹にご飯を食べさせたら、半同棲生活が始まった~  作者: バランスやじろべー
第一章前編 家庭科部へようこそ

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第6話 ビーズ人形

「でもそうか。蓮らしいわ」


 後輩二人との出会いを聞いた凜が紅茶のカップを傾けながら、どこか納得したように呟いた。


「なんだそりゃ」


 凜の言葉に蓮は手にしていた紅茶のカップをソーサーへと戻す。

 怪訝そうに眉をひそめ、呆れたようにため息を吐く。

 そんな蓮に、凜は笑いながら背中をバンバンと叩いてくる。


「褒めてんだって。お前はそういうやつだろ。そういう優しい所がいいとこなんだから」


 紅茶を飲みながらうんうんと頷く凜。


「うんうん! せんぱいってそういうとこ優しいよねー。荷物持ってくれたりとか」


「はい。助かりました」


「……別に大したことじゃない」


 三人がかりで褒められるむず痒くなる。

 そんな蓮に対し、三人は笑顔のままクスクスと笑っていた。


「あ、ししょーっ! ちょっといい?」


 そこへ部長の麻美から声が掛かる。

 凜と後輩二人の方を向くと、凜が行って来いと手を振ってジェスチャーしてくれたので席を立つ。

 とはいえ離れる前に釘を刺しておくことにする。


「おい凜、二人にくれぐれも変なこと教えるなよ!」


「分かってるっての。いってらっしゃーい」


 そんな蓮に親友は笑いながら返事を返す。

 凜の軽い返事に一抹の不安を感じながらも麻美の方へと向かって行く。

 まあ、さすがに分別は付いているはずだ。

 親友ということもあり、その辺りの信用は高い。


「部長、どうかしたんですか?」


「去年の活動について話してたんだけどさ、去年作ったマフラーとか出してもらえる?」


 そう言って部室に置かれているロッカーを指差す麻美。

 どうやらこちらはこちらで家庭科部の活動について説明していたらしい。


「それはかまわないんですけど、だったら部長達が作った作品を出せばいいんじゃないですか?」


 昨年部活をしていたのは蓮だけではない。

 当然目の前にいる部長や他の上級生、同級生もいくつかの作品を作っている。

 しかしそんな蓮の疑問に麻美は頭を振る。


「いや、確かにあたし達も作ったけどさ、ししょーの方がクオリティ高いでしょ?」


「うんうん。ししょーの方が得意だもんねー」


「そうそう。正直ししょーがいなかったらこの部活成り立ってないしー」


 と他の部員も部長の意見に同意する。

 若干頭が痛くなりそうな内容だが、とはいえこれはこれで言っていることは正しい。

 客観的に見た場合、この部活で一番スペックが高いのは蓮だ。

 同じ作品を作っても、明らかに出来が違う。


「分かりました。ちょっと待って下さい」


 そう言って家庭科室の隅に置かれているロッカーの方へと向かう。

 家庭科室には家庭科部専用のロッカーがいくつか置かれており、その内の一つは蓮が一人で使用している。

 鍵を開けて、昨年部活で作ったいくつかの物を取り出し手に抱えて麻美の元へと戻る。


「はい。持ってきましたよ」


「お、ありがとね」


 調理台の上に置いたのはマフラーやあみぐるみ、ビーズワークにパッチワーク、コースターなどなど。

 昨年蓮が作った物の一部だ。

 それ見て他のグループもわらわらと集まって来た。


「わあっ。これ可愛いですね」


 ビーズ人合のウサギを手に載せた一年生から驚きの声が上がる。

 ビーズを糸で繋いでウサギを形作ったものだ。


「これも先輩が作ったんですか?」


「ああ。まあ作り方さえ覚えれば意外と簡単だぞ」


「マフラーも作ったんですね」


「それは十二月に作った物だな」


「うんうん。クリスマス前に手作りのマフラー作り講座をやった時だよね」


 あの時は家庭科部員やその友人から、彼氏にプレゼントするマフラーを作りたいから教えてくれ、という意見がいくつか上がった。

 その為、何回かに分けてマフラー作りを行ったのだ。

 当然ながらマフラーの作り方を教えたのは蓮だが。

 そんな蓮の作品を一年生達は興味深そうに手に取って眺めていく。

 すると、桜季が先ほどのウサギのビーズ人形を掌に載せてじっと見ていた。


「どうかしたのか?」


「あ、いえ。その、これが可愛くて……」


 照れたように頬を赤くして答える桜季。

 その顔を見て蓮の顔も同じように少しばかり赤くなってしまう。


「先輩?」


「ああ、なんでもない」


 むしろ可愛いのはビーズ人形より――

 ついそんなことを思ってしまったのだが、さすがにそれは口に出せない。


「本当にこれ、可愛いですよね」


「興味があるのか?」


「あ……えっと、はい……。とても可愛くて……」


 その返事を聞いて少しばかり考える。


(まあ、そうだな。このままロッカーの中に入れておくよりは……)


 この後、ビーズ人形はこの後再びロッカーの中へと入れられて、再び日の目を見るのはずっと後の事だろう。

 それであれば――


「それ、欲しいんなら持って帰っていいぞ」


 他の一年生と少し離れてビーズ人形を持つ桜季に、蓮は小声で口にした。


「えっ!?」


 蓮の言葉に桜季が慌ててこちらを向く。

 そんな慌てる姿も可愛らしいと思ってしまうのは、やはり桜季が美少女だからか。


「ですが、これは先輩が作った物ですし……」


「別に気にしないでいいぞ。作ってからずっとロッカーの中にしまっておいたものだしな。なんだったら、半分無理やり体験入部に誘ったお詫びってことにしておいてくれ」


「あ…………」


 蓮の言葉にビーズ人形を見たまま桜季が考え込む。

 そして再び蓮の方を向いて笑顔で告げる。


「ありがとうございます、先輩。ですが、お詫びということであれば受け取れません。無理に誘われたわけでもありませんし、実際に体験入部してみて楽しいですし。ほら、先ほど言ったじゃないですか。わたし達はウィンウィンだと」


「あ、えっと…………」


「ですから、お詫びではなくお礼、ということにしていただけませんか?」


 そうくすりと笑いながら提案してくる。

 これは一本取られた形だ。

 桜季の提案に蓮も笑顔で頷く。


「……そうだな。分かった。それじゃあ体験入部に付き合ってくれたお礼として貰ってくれ」


「はい。ありがとうございます」


 そう言って桜季は大事そうにビーズ人形を両手で抱え込む。

 微笑んだり、慌てたり、驚いたり、喜んだり。

 出会った時からは考えられないくらい、まるで百面相のように桜季の表情がコロコロと変わっていく。


「今年度もこういうのは作るだろうし、もし入部しないとしてもその時は飛び入りで参加してくれてかまわないぞ」


「そうですね。その時はよろしくお願いします」


 最後にそう付け加えると、桜季は今日一番とも言える素敵な笑顔を浮かべて蓮に頭を下げた。

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