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義理チョコキングと頑張り屋さん ~心優しい二人が寄り添っていく、幸せに包まれた半同棲生活~  作者: バランスやじろべー
第二章前編 二人の関係と親友達

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第59話 距離の縮まった四人

 チキンライスを作り終えた蓮がふとリビングを見ると、凜と美鈴が顔を寄せ合って楽しそうに話をしていた。

 ノリが良くすぐに距離を詰めることの出来る二人だが、思った以上に仲が良い。


「楽しそうだな。何話してるんだ?」


 そう声を掛けると、二人は話を中断してこちらの方を向く。


「いやー、ちょっとした女子トーク?」


 美鈴のごまかすような冗談に、蓮は凜の方を向く。


「なんだ。凜、お前いつから女子になった?」


 にやりと笑う美鈴に蓮も乗ると、凜が勘弁してくれと肩をすくめる。


「生まれてから常に男子だっての。まあ、他愛ない話だよ」


「へえ」


 まあ、親友にすら内緒にすることもあるだろう。

 もしかしたら自分の過去のエピソードでも話されていたのかもしれない。

 その場合深く突っ込むと面倒なことになりそうなので、蓮はそれ以上追及せず視線をコンロへ戻す。


「蓮さん、次はどうしますか?」


 横から桜季が少し身を乗り出してくる。


「ああ、卵焼くぞ。火、弱めてくれ」


「はい」


 すぐにコンロのつまみを調整する桜季。

 フライパンにバターを落とすと、じゅわっといい音が広がる。

 溶けたところに桜季から手渡された溶き卵を流し入れ、手早くかき混ぜながら形を整えていく。


「……おお」


 背後から小さく感嘆の声が聞こえた。

 気付けば凜と桜季が立ち上がり、リビングからキッチンを覗き込んでいる。


「見てて面白いな、それ」


「お前だって作ったことあるだろ」


 振り返らずに言うと、凜の苦笑した声が聞こえてくる。

 どうやら二人とも完全に見物モードらしい。


「桜季、皿持ってきてくれ」


「はい」


 差し出された皿に、タイミングを見てオムライスを滑らせる。

 綺麗に形が決まったそれに、桜季がぱっと表情を明るくした。

 その後も同じ要領で次々と仕上げていき、ハンバーグも焼き上がる頃には、キッチンはすっかりいい香りに包まれていた。


「よし、こんなもんか」


 最後にサラダを盛り付けて一息つく。

 ちらりとリビングを見ると、相変わらず二人はこっちを見ていた。


「完成だ。運んでくれ」


「あいよ!」


「はーい!」


 桜季が出来上がったワンプレートを二人に渡している間、簡単に後片付けを済ませてしまう。

 そしてエプロンを脱いでリビングへ。

 テーブルの上には四人分のワンプレートとアイスティー。


「うわ、やば……。これめっちゃ美味そう! お店みたい!」


「大袈裟だなあ」


「大袈裟じゃないって!」


 美鈴は目を輝かせながら、テーブルに並んだ皿をぐるりと見回す。


「ほんとに凄いです」


 桜季も隣で小さく感嘆の声を漏らしていた。

 自分も手伝っていたはずなのに、完成したそれはまるで別物のように見えるらしい。


「まあ、冷める前に食おうぜ」


「ああ、そうだな。いただきます」


「「「いただきます!」」」


 まずはオムライス。

 スプーンを入れると、ふわりとした卵が崩れて中のチキンライスが顔を出す。


「……っ、うまっ!」


 最初に声を上げたのは美鈴だった。

 目を丸くして、もう一口とすぐにスプーンを運ぶ。


「そうだろ? 蓮の料理は美味いんだ!」


「はい、本当に……凄く美味しいです」


 桜季も嬉しそうに頷きながら、丁寧に味わっている。


「三人とも褒めすぎだから」


 毎度毎度こうも褒められると照れくさい。


「ですが本当に美味しいです。先日のビーフシチューと一緒に食べた時のも美味しかったですけれど、これも……」


 桜季も本当に美味しそうに手を動かす。

 今回はバターライスではなくチキンライス、それを薄焼き卵で包んでケチャップを掛けた、いわゆる昔ながらのオーソドックスタイプだ。

 中の具材が程よくアクセントとなっており、飽きさせない。


「ハンバーグも美味しーっ! 何これ、今までのハンバーグとは別物なんだけど! せんぱい、どんな魔法使ったの!?」


「魔法ってな……。まあ、繋ぎを使わずに牛百パーセントのハンバーグだ。ソースも肉汁を使ったグレイビーソースってだけ」


「マジで!? うわっ、ホント手が止まらない!」


「はい! こんなの食べたことありません……!」


 美鈴も桜季も一口食べる毎に美味しそうに頷く。

 やはり自分の作った物を美味しそうに食べてもらえるのは嬉しい。


「サッキー、こんなに美味しいの毎日食べてるんだね!」


「はっきり言って羨ましいよなあ……」


「はい。それはわたしもそう思います」


 凜の言葉に桜季が深く頷く。


「だから褒めすぎだって。それに最近は桜季も手伝ってくれてるわけだしさ」


「は、はい……」


 今度は桜季が照れたように頷く。

 そんな感じで昼食の時間は恥ずかしくも楽しく過ぎていった。



 ✿



「ご馳走様」


 オムライスもハンバーグもサラダも、四人共全員が間食した。


「じゃあ、おれは片付けちゃうから」


「あ、わたしも手伝います」


「凜と白川は座って待っててくれ」


 そう言ってキッチンへと向かおうとしたところで、美鈴が何か考えるように首を傾げた。


「どうかしたのか? やっぱ口に合わなかったとか?」


 美味しいとは言ってくれていた物の、途中で飽きてしまったのだろうか。

 しかし蓮の言葉に美鈴は慌てて首を横に振る。


「え……? ノンノン! とっても美味しかったよ! じゃなくて、ちょっと気になったことがあったからさ」


「気になったこと?」


「うん!」


 食べる手を止めて身を乗り出す美鈴。

 その勢いに押され、若干たじろいでしまった。


「光井せんぱい、アタシとだけ距離遠い!」


 若干不満げな顔で美鈴が抗議して来る。


「距離遠い? そりゃあ白川とは対角に座ってるけど、テーブルの仕様上しょうがないだろ」


 今の配置は蓮の隣に凜、対面に桜季で、斜め前に美鈴だ。 

 とはいえ丸テーブルならともかく、この部屋の四角いテーブルでは、どうしても均等に配置することは不可能だ。

 そんな蓮の反論に、美鈴は大きく首を横に振る。


「ちーがーうーっ! そうじゃなくてさ、せんぱいはさ、峰岸せんぱいのことなんて呼んでる?」


「え? 凜だけど」


「じゃあ、サッキーは?」


「桜季」


「それじゃあそれじゃあ、アタシは?」


「白川」


「そう、それ!」


 ビシっと指を突き付けてくる。


「その呼び方! アタシだけ他人行儀なの凄い気になる!」


「と言われてもなあ……。じゃあ、何て読んで欲しいんだ?」


「そりゃあ名前に決まってるじゃん!」


「えっ!?」


 美鈴がそう言ったとたん、隣の桜季が声を漏らす。

 凜を含めた三人の視線が集中すると、途端に桜季は真っ赤な顔で視線を下ろした。


「ってわけでさ、ほらせんぱい! アタシのことは名前で呼んで!」


「えっと…………」


「さあ! さあ!」


 どんどんと圧を掛けてくる。

 これはもう呼ぶまで解放されないだろう。


「分かった。……美鈴、ほら、これでいいか?」


「うん! それじゃあアタシもせんぱいのこと、蓮さんって呼ぶね!」


「えっ!?」


 先程よりも大きな声が桜季の口から発せられた。


「あっ、い、いえ……。あ、洗い物しますね!」


 再び三人の視線が集中すると、桜季は慌てて洗い物を始めた。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(むぅ……。わ、わたしが蓮さんって呼ぶの、凄く勇気が必要だったのに)


 桜季の誕生日に行われた初めての名前呼び。

 あの時の琴乃の無茶振りに対して、終始緊張して名前呼びになったことを思い出す。

 それなのに美鈴とはこうまで簡単に名前呼びになるとは、少々胸がムカムカとしてしまう。

 横をちらりと見ると、蓮はいつもとあまり変わらないように洗い物を片付けている。

 それがまた少々腹立たしい。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 凜と美鈴は、そんな二人が洗い物をする姿をキッチンから眺めている。


「あはは。サッキー、すっごく驚いてたね」


「つか、ちょっと嫉妬してただろ。いいのか?」


 笑う美鈴に、凜も苦笑しながら尋ねてみる。

 そもそも蓮と桜季をくっつけたいと言っていたのに、これは逆効果になりかねないのではないのかと。


「あはは。大丈夫だって。アタシが蓮さんと仲良くしたいのも事実だしさ。それに、このくらいで関係崩れたりしないっしょ」


「まあそうだな」


 むしろ、桜季が自分の気持ちに気付くいいきっかけになるかもしれない。


「ってなわけでさ。せんぱい、アタシ達も呼び方変えない?」


「いいぞ。じゃあこれからはオレも美鈴って呼ぶわ」


「うんっ、ウェルカムだ! これからよろしくね、凜さん!」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 なおその後、桜季と凜の二人も名前で呼び合うことが決定した。

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