第020話「派遣勇者とルー二―事件(中編)」
第一章【レグナ王国編】
第020話「派遣勇者とルー二―事件(中編)」
「我々はシンキチさん達に助けられた後、領主様の言いつけの通り安全に気を配って街近郊の簡単な依頼のみをこなしていました。今日も獣狩りの依頼をこなしていたのですが、突然林の方からコイツらがやってきてルーニー様を連れ去ってしまったのです…。」
「この賊に心当たりは…。」
「近郊で盗賊が出ている事は知っていたがどれも商人の荷馬車を狙っていたからな…。まさか人攫いをするとは思ってもみなかった。」
「シンキチさん。貴方の腕前を見込んで頼みがある。我々のルーニー様救出に手を貸していただけないだろうか。報酬は出来る限り用意しますので…。」
「わかりました。まずその前にこの捕まえた賊をどうにかしなくてはいけないですね。」
「そうだな。領主様にもルーニー様の件をご報告しなければ…。」
「シャントお前は俺と一緒に街まで行って衛兵を呼びに行くぞ。ピアザとオズはシンキチさんと残って賊を見張ってくれ。俺は街に行くついでにルーニー様の件をご報告してくる。」
「わかった。」
「任せろ。」
「レックスさん申し訳ないのですがお二人にこの子達を同行させてください。ルー、アルメイ二人とも街へ戻って宿で待つんだ。」
「「えっ!?」」
「二人にこの仕事はさせられない。同行させるのも許可できない。」
「やだ!ルーもいく!」
「ダメだ!これだけは譲れない。レックスさん達と街に帰るんだ!」
いつも通り駄々をこねたルーも俺の険しい顔に今回は引き下がってくれた。行動をある程度予測したり誘導できる魔物と違い、人質を取ったりする可能性のある人間相手の戦いに二人を同行させることは現状出来ない。さらに人が死ぬ可能のある依頼なので出来る限りこういう状況に巻き込みたくもない。
「レックスさん二人を街まで頼みます。アルメイもルーを頼んだよ。」
「任せてくれ。」
「わかったよ。シンキチも気を付けてね…。」
「うぅ…。シンキチ…。」
四人は足早に街へ向かっていった。
(さてと…。)
「ピアザさん、オズさん。このいままで荷荒らししかしていなかった盗賊がなぜルーニー様を連れ去ったのか心当たりはないのですか?もちろん他言はしませんので。」
残った二人は俺の問いかけにお互いの顔を見合わせて頷く。
「他言無用でお願いしたいのだが、ルーニー様を狙っているのはロイセンなんじゃないかと俺達は睨んでいるんだ。」
「ロイセンというと領主補佐のビクセルフ準男爵ですか…?」
「あぁ。」
「今回ルーニー様に魔物討伐を進言したのもロイセンなんだ。ルーニー様に立派な領主とは民衆の仕事を理解するだけでなく、敵を恐れない強さも必要だとね。」
「元執事長の今はルーニー様の教育係をしている爺さんがいるんだが、今の領主様も冒険者登録はしていたらしい。ただ魔物の討伐なんて危ない真似はしていなかったそうだ。」
「よくレマーレ伯爵が魔物討伐を許可してましたね…。」
「あの方もルーニー様に甘いからな。俺達伯爵お抱えの私兵を付ける事で最初は許可を出していたんだ。」
「皆さんは冒険者ではないのですね。」
「俺達は元冒険者だな。ビル・レマーレをホームにしていたシルバーランク冒険者だったんだが年齢的なもんが要因で今は引退して伯爵の私兵として色々な仕事をしているんだ。」
「なるほど。でも今回の誘拐がお家騒動だとしても、おかしくないですか?仮にルーニー様に何かあったとしても継承権は奥様に移るだけなのでは…?まさか…。」
「そう。夫人もグルの可能性があるんだ。」
「そもそもルーニー様は前夫人との間に生まれたからな。今の奥様と血のつながりは一切ない。」
「しかも奥様とロイセンには前から不義の噂すらある。」
「なんと…。」
「だが証拠が一切ないからな。」
「あぁ。まずは無事にルーニー様を取り戻すのが先決だ。」
「事情は分かりました。俺も精一杯お手伝いしましょう。」
「頼む。」
暫くすると騎馬と馬車に乗った街の衛兵とレックスさん達がやってきた。ルーとアルメイは無事街に帰ったそうだ。
捕まえた賊を衛兵達に引き渡し、俺達は今後の打ち合わせをする。
「領主様はどうだった?」
「報告してきたが俺達はクビになるかもしれん…。俺の報告を聞いて顔は真っ青だったよ。とりあえずルーニー様を命を掛けて連れ戻してくるって言って出てきたわ。」
四人に重い空気が立ち込める。
「レックスさんとりあえず今後の救出についての話をしましょう。」
「あぁ、そうだな。とりあえず一人残したこの賊からアジトの場所を聞き出そうと思うんだ。」
「口を割るとは思えないな…。」
「いや、ここは魔法を使って話してもらいましょう。」
「そんなことが出来るのか?」
「あまり褒められたやり方ではないですがね…。〈強制起床〉」
気絶や眠りから目覚める魔法を掛けて賊を起こす。
「…ん?なんだ?クソ!!ほどきやがれ!!」
「単刀直入に聞きましょう。あなた方のアジトは何処ですか?案内してください。」
「はぁ?言うと思ってんのか?」
「まぁ普通は言わないよな。これならどうだ。〈心臓の恐怖〉」
俺はもう一つ魔法を使う。みるみる内に賊の表情が変化し絶望に満ちた顔つきになった。
「もう一度聞こう。アジトへ案内してくれるかな?」
「わ、わかった!言うとおりにする…!す、すまなかった…。」
賊の突然の掌返しに見ていた四人も唖然とする。
「シンキチ殿…。その…。なにをしたんだ?」
「魔法ですよ。相手を恐慌状態に落とす魔法を掛けました。拷問をかけた時のような状態になっているので正直良い方法ではないのですが今回は一刻を争うので。」
「まぁ、実際に拷問にかけたわけじゃないからいいんじゃないか?」
「そうだぜ。コイツらには情けを掛ける必要はないからな。」
実際この魔法は加減を間違えると死に至る。
肉体的な死ではなく精神が壊れてしまうという意味での死なのだ。
俺達は賊を引き連れ、案内の元アジトへ向かうことにした。
アジトへ向かう途中、賊から聞き取りできた情報はざっと三つ。
①以前より装備の良い子供を含めた五人組を襲撃し子供を攫う計画が立てられていた事。
②なぜその子供を攫うのかという詳細はリーダーしか知らないという事。
③賊はこの近辺で荷馬車略奪をしている盗賊団で三十人程の大所帯である事。
先ほど襲撃時に二十人程を捕縛したのでアジトにはリーダーを含め十人程しかいない計算になる。
「あ、あそこの洞窟が俺達のアジトだ。」
「シンキチ殿これからはどうするつもりなんだい。」
「俺は気配を消して先に中に入りルーニー様の安否確認をします。保護後は守りつつ脱出しますが。皆さんには正面から突入してもらいたいです。賊の意識が皆さんに向いてる隙に後方から順次賊を排除しつつ入り口を目指しますので。」
「ではこれから気配を消して中に入りますので十分程経ったら突入してください。くれぐれもお怪我の無いようにガード優先で時間を稼いでください。」
「「「「おう。」」」」
俺は隠密系のスキルで姿と気配を消しアジトへ入る。洞窟というよりは洞穴のような場所で基本一本道だ。アジトなので抜け道等はあるのかもしれないが、この前の鉱山跡地のような入り組んだ構造ではないので、これならルーニーも早めに見つけられるに違いない。
(襲撃の際に殺さずに攫ったということはここのどこかに捕えられているはず…。)
アジトの奥の方へ進むと木製の檻のようなものが見えてきた。動物を入れるような小さめの檻の中にすすり泣きするルーニーを発見する。
不用心ではあるが見張りもいないので檻に近づき、ルーニーへ話しかける。
「ルーニー様、大丈夫ですか。」
「―――!?え…!?」
突然の問いかけに驚いたルーニーは周りをキョロキョロとする。
「だ、だれかいるの?」
「お静かに。私はルーニー様を助けに来ました。これから檻から出しますので声を出さないで。」
大きくうなずくルーニー。俺は力技で木製の檻を破壊する。
その後スキルを解除してルーニーに姿を見せた。
「シンキチ殿だったのですね!ありがとうございます…。」
助かる希望の安堵からかポロポロと涙を流すルーニーにこれからの行動を話す。
「これからレックスさん達がこのアジトへ襲撃を掛けます。賊の注意が入口へ向くはずですので後方から排除しながら入り口を目指しましょう。ルーニー様は私の後ろから離れずついてきてください。くれぐれも勝手な行動はしないようにお願いします。」
「は、はい!!」
暫くするとアジト内が騒がしくなってきた。レックス達がアジトへ突入したのだろう。俺達も行動を起こすことにした。
初執筆作品です。
四、五日ペースで更新できるように頑張ってます。
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