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派遣勇者の世直し観光記  作者: あおまる軍曹
第一章【レグナ王国編】
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第019話「派遣勇者とルーニー事件(前編)」

第一章【レグナ王国編】

第019話「派遣勇者とルーニー事件(前編)」



 領主に呼び出された日の夜。久々に酒が飲みたくなり俺は一人で街の酒場へ来ていた。

 ルーもアルメイも眠くなっていたので宿で寝かせてお留守番をしてもらっている。


 「親父さんエールを一つ、あとこの肉串も二本貰おうかな。」

 「はいよぉ!」


 少し待つと注文したエールと肉串が来る。


 「くうっ!!」


 エールはビールに良く似た発泡麦酒だ。ビールに比べると炭酸感やのどごしがイマイチだが長い異世界生活ではもうこの味にも慣れてきた。

 

 (最初は食事や飲料が不味く感じて困ったけど慣れるもんだよなぁ…。)


 酒場のカウンターで一人酒を楽しんでいると聞き覚えのある声に気付く。ふと振り返ると後ろの席には昨日領主の息子ルーニーと一緒にいた冒険者風のの四人組だった。やはりあの時俺達の顔は見ていなかったのかこちらに気付く様子はない。


 「そういえば今日、ルーニー様を助けたって言う冒険者を屋敷に呼び出したらしいな。」

 

 「あぁ、なんでもルーニー様が助けた冒険者の顔を見ていたらしくて領主様が補佐官に言って冒険者ギルドで調べさせたらしいぞ。」


 「領主様もルーニー様大好きだからなぁ…。」

 「まぁ、前奥様の忘れ形見だしな。」


 「でもよ、ならなんでルーニー様の魔物討伐の許可出したんだって話だよな。」

 「ビル・レマーレの領主を継ぐ者は剣技の鍛錬もするってのは知ってるぜ?でもいままで実際に魔物を討伐するなんて事はなかったらしいじゃないか。」


 「そうなのか?」

 「あぁ、元執事長の爺さんが言ってたぜ。今の領主様も若い頃に鍛錬はしてたらしいが実際に魔物と対峙するような事はしなかったそうだ。」


 「まぁ、世継ぎになんかあれば騒ぎ所じゃないしな。」

 「それは俺も疑問に思ってたんだよ。」


 どうやら彼ら自身も領主の息子がなぜ危険を冒してまで魔物討伐をしようとしたのかまでは知らずにいるらしい。しかしここでリーダーらしき男が少し声を抑えて話し出す。


 「なんでも魔物討伐に関しては領主様も反対されたらしいが、ルーニー様がどうしてもって説得して最後は押し切ったらしいぞ。」

 

 「…。そうなのか?」

 「あぁ、これも元執事長の爺さんが俺達にルーニー様を預ける時に聞いたんだがな。どうしてもと聞かなかったんだそうだ。」


 「ルーニー様もなんでそんな事にこだわるんだろうな?」

 「わからんが、領主たるもの領民も生活の実情を知らずに統治は出来ませんなんて言ったらしいぞ?」


 「あんな子供がそんな大そうなことを?」

 「大人な考え方だよなぁ。やっぱ育ちが違うと考え方も違うのかね?」


 「俺達がルーニー様位の頃なんて鼻ほじりながら勇者ごっことかしてたわ!」


 「そーだよな!だははっ!」

 「虫とか捕まえてたよな!」


 (それが本当ならルーニー様は大人びた考えをするんだな。会った時の印象はそれほど凛としている様には見えなかったが人見知りとかだったのだろうか…。)


 「…そういやよ。」

 「んん?」


 「この前補佐官のロイセン様とルーニー様の武器用の鉱石の買い付けに同行した時、ロイセン様はミスリルと一緒にダイヤの原石も買ってたんだよ。でも館に帰ってきて使用人にはミスリルしか渡してなかった気がするんだけどダイヤの方は何に使うんだろうな?」


 「さぁ…。防具とかか?」

 「でも工房には武器しか依頼しなかったんだろ?」


 「そう聞いてるけどな。」

 「俺達には分からん使い道でもあるんじゃねぇのか?」


 (確かに貴金属屋の店主も両方買ったとは言っていたな。)


 結局この話も答えを知る者はおらず有耶無耶となってその後は下世話な話しかしていなかった。


 俺も彼らもしばらく飲んで帰ったのだった。



 それから数日、変わらず冒険者ギルドで依頼達成報告をしていると後ろから声を掛けられた。


 「こんにちはシンキチ殿。ルーさん。アルメイさん。」


 「ん?おやルーニー様ではありませんか。ギルドに御用ですか?」


 「依頼を受けに来たのです。」

 「そうなのですか。」


 「坊ちゃん、この方たちは?」

 「あぁレックス。この方達だよこの前僕達に助勢してくれたのは。」


 「シンキチです。こちらはルーとアルメイ。」

 「おぉ!そうでしたか!その節はありがとうございました!私はレックス。今はルーニー様の警護役をやっております。」


 俺とレックスは握手を交わす。


 「そういえばルーニー様。あのような事があってまだ魔物討伐を?よくお父様がお許しになりましたね。」


 俺がそういうとルーニーをはじめ一同が苦笑する。


 「流石になかなか許してはくれなかったのですが、街近郊ならということでお父様から許可をいただきました。」

 「なるほど。近郊でもはぐれた魔物は出ますから気を付けてくださいね?」


 「昨日お父様からこの剣もいただいたし、気を付けつつも頑張ろうと思っています!」


 そう言って腰に下げていた立派な剣を引き抜く。どうやら工房に依頼していたミスリル剣が完成したようだった。鞘も含め非常に綺麗な剣で正直なところ駆け出し冒険者で子供のルーニーが持つと違和感が凄い。


 「立派な剣ですね。無理せず頑張ってください。」


 「はい!シンキチ殿!それでは。」


 そう言ってギルドの受付へ依頼書を持っていくルーニーを俺達に会釈をしてから護衛の四人が追う。

まぁ街の近郊であればこの間のように護衛四人と実力が拮抗するような魔物は出ないだろう。



 ルーニーのミスリル剣が完成していたので俺達は工房に顔を出した。


 「おう、アルメイとツレの兄ちゃん。」

 「こんにちはウルグライムさん。」


 「丁度使いを出そうと思ってたんだよ。もしかして領主の息子に会ったか?」

 「はい。たまたまギルドで会いまして剣を見せてもらいました。」


 「そーかそーか。久しぶりのミスリル加工だったがなかなか上手く出来たからな。」

 「やはり、王国一と呼ばれる職人の武器だけあって素晴らしい出来でした。」


 「ありがとよ。そんで悪いんだが、久しぶりに硬い鉱石の武器を早いピッチで作ったもんだから疲れちまってな。兄ちゃんの武器に取り掛かる前に少し休みを貰いたくてよ。」


 「大丈夫ですよ。俺の方もまだ素材の確保に苦戦してますから。」


 「ちなみにどんな武器を考えてるんだい。」


 「欲を言えばミスリル剣をなるべく地味に作ってもらいたいんですが、なかなかミスリルなんて高級なものは手に入らないので鋼の武器になるかと…。」


 「ほー。なぜ地味なモンが良いんだい。」

 「個人的に性能の良い武器は欲しいのですが見た目が煌びやかなのはどうも好みでなくて。あとは旅人なので高価な武器と分かる物を携帯しにくいというのもありますね。」


 「なるほどな。」

 「まぁ休みは二、三日も貰えば大丈夫だ。それまでに素材を用意して持ってきてくれると助かる。」


 「わかりました。」


 工房からの帰り際にアルメイから剣の素材について提案があった。


 「確かにミスリルは高いけど依頼を沢山こなしていけば買えるんじゃない?」

 「まぁ、少し無理して依頼をこなせばギリギリ金額に届くかもだけどそうなると所持金がほぼ無くなって旅が不便になるし、剣以外も調達したいものもあるからそれはちょっとね。」


 「調達したいものって?」

 「馬車だよ。」


 「え!?」

 「ばしゃ!」


 「この前アルメイも言っていたけど今は乾季なんだろ?この後雨季に入ると野営環境が厳しくなるし、今後旅を続ける上で必要になると思うんだ。」


 「それはそうだね。」


 (個人的にのんびり馬車で観光の旅をしたいのもあるけど…。)


 「そういうことで俺の武器は馬車資金と旅資金の予算から溢れた額で作ることにしたんだよ。だからもう一日二日冒険者依頼をこなしたらウルグライムさんに鋼鉱石を渡すつもりなんだ。」


 「そういうことならミスリルは無理だね。」

 「あぁ、馬車も稼がなきゃだからもう少し冒険者稼業頑張ろうね。」


 「「おー!」」




 次の日、冒険者依頼を終えて森から帰る途中に事件は起きた。


 「今日もいっぱい魔物倒せたね。」

 「がんばったー。」

 「アタシも結構強くなってきた気がする!」


 「もう二人だけでもブロンズクラス位の依頼なら達成できるかもしれないね。」


 森の入り口辺りを会話しながら歩いていると自分のマップに引っかかるものがあった。


 (ん!?)


 「シンキチ…。どうしたの?」

 「少し離れた所で戦闘している人がいるみたいだ…。しかも相手はかなり多いな。」


 「たすけにいく?」

 「そうだね。このままだと襲われている方は全滅するかもしれない。急ごう!」


 三人でマップに表示された戦闘区域に向かう。


 そこにはルーニーの護衛が四人戦っていた。しかも相手は人間だ。身なりからして盗賊や野盗の類だろう。マップに表示されている数はざっと数えても二十人はいる。


 「ルー!アルメイ!防御陣を張るからその中にいて!近づいてきた奴だけ相手するんだ!」

 「わかった!」

 「おっけー。」


 「レックスさん!助勢します!!」


 できればルーやアルメイに人を殺させたくないし、俺が人間を殺すところは見せたくない。ここは一気素手で倒していくことにする。


 「〈縮地加速〉!!」


 ルー達から近い賊、そして護衛の人達と戦闘を行っている賊から順に殴り倒す。しかしレベル差がありすぎるので普通に殴ると即死してしまう。素早くそれでいて優しく殴るというのは意外と難しい。


 (うーん。加減を間違えて死んだらそれはごめんなさいだな…。)


 「大丈夫ですか!?」


 「シ、シンキチ殿か…。助かった。しかしルーニー様が攫われてしまった…。」


 「―――!?とりあえずこの賊の相手は任せてください。」


 「なんだコイツは!!?どっからきやがった!」

 「お前たちの相手は俺だ!」


 「いくぞ!やっちまえ!!!!」


 「「「おおおおおぉぉぉ!!!」」」


 一斉に向かってくる賊を打撃で沈黙させる。

 多勢とは言えレベルがカンストしている俺の相手にはならない。勝負はあっという間についた。


 「シンキチ!」

 「大丈夫!?怪我はない!?」


 戦闘が終わりルーとアルメイが駈け寄ってくる。俺は気を失わせた賊を縛り上げていた。


 「ありがとうシンキチ殿…。痛てて…。」

 「とりあえず皆さんの傷を治します。〈魔法上昇〉〈治癒〉。」


 「おぉ…。」

 「回復魔法に大勢の賊相手に素手とは…。貴方は一体…。」


 「少し腕に自信のある旅人ですよ。傷は魔法で癒えてますが流した血までは戻りません。数日は無理をしないで下さいね。」


 「それよりもルーニー様をお助けしなければ!!」


 「何があったのか話してくれませんか…?」

 「あぁ…。それが…。」


 レックスが事の顛末を話し始めた。


初執筆作品です。

四、五日ペースで更新できるように頑張ってます。

少しづつ閲覧している方が増えてきていて嬉しいです。

皆さんの暇つぶしになるように頑張って書きます。

確認はしていますが誤字脱字等ありましたら気軽に教えてください。

評価点だけでも入れていただけると励みになります。

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