第018話「派遣勇者とお坊ちゃま」
第一章【レグナ王国編】
第018話「派遣勇者とお坊ちゃま」
工房でウルグライムに素材は自己調達するように言われて俺達は街の貴金属屋へ来てみた。
「やっぱオカコットと違って貴金属の品揃えが凄いや!」
「色んな鉱石を売ってるもんなんだな。」
「ほらシンキチ!ミスリルもある!すごっ!高っ!!」
「ウチの店は王都には負けるがミスリルや宝石の品揃えに自信あるからな!そのミスリルも標準値段だぜ。それでもこの前領主様んとこの補佐官様がミスリルのインゴットとダイヤの原石を買っていってくれたからな。」
「へぇ~。流石は貴族様だね。」
取扱いは通常の鉄や銅、銀、鋼、この店で取り扱っている最高硬度の金属はミスリルだった。しかし金属屋へ来たのは何も素材を買うためではない。
この周辺で手に入る手ごろな金属がどのくらいのレベルなのか知りたくて来たのだ。ちなみに素材となる金属は前の世界から持ってきたものでミスリルとさらにその一段階上のアダマンタイトまで持っている。ちなみにオリハルコンも持っていたこともあったが以前勇者用武器を作成するのに使用してしまって今はない。
(勇者用武器はもう使えなくなってるから、魔法鞄に死蔵中なのはもったいないけど…。)
アルメイが驚いた通り購入できる最高硬度の物はミスリルなのだが値段が恐ろしく高い。一般人ましてや旅人がおいそれと購入できる金額ではないので手持ちのミスリルを工房に出せば工房の人だけでなくルーやアルメイにも驚かれてしまう事は間違いない。
(現状は鋼の武器を作ってもらう事になりそうだけど、また壊してしまいそうなんだよなぁ…。)
個人的にはミスリルクラスを持ち歩きたいが現状難しいのかもしれない。
次に俺達はビル・レマーレの冒険者ギルドへ来てみた。理由は二つ。
一つはアルメイを冒険者登録する事。俺達とクラスは離れるが登録は無料で出来るからしておいて損はないということで登録をしに来た。
もう一つは近くにダンジョンや遺跡などが無いか情報収集にきたのだ。ミスリルをダンジョンで手に入れた事に出来ないかと思ったからだ。
「近くにダンジョンや遺跡ですか?ちょっと聞いたことないですね…。」
「ダンジョン?この辺には無いな…。」
アルメイの登録後にギルド職員や親切そうな冒険者に聞いてみてもこの辺にそういった類の場所は無いようだ。ちなみに依頼板を確認したがそこにも手持ちのミスリルをカモフラージュできそうな依頼はもちろんなかった。
(まぁそんな都合のいい事はないか…。)
とりあえずは三人で相談し、旅の資金や銃の弾用の金属代も稼がないといけないのでしばらくはビル・レマーレでも冒険者稼業で稼ごうということになった。
「ルーっ!シルフでかく乱してくれ!」
「うん!」
「アルメイ!集団から外れた魔物は任せたぞ!」
「あいよ!」
前衛の俺が指示はしているものの、ルーもアルメイも無難に魔物を狩っていく。相手はアルメイのレベルに合わせてシルバーランクでも低い魔物の討伐系依頼だし、相変わらず二人とも安全圏からの援護、攻撃ではあるがチームとしては十分機能するようになってきた。
実際今日の相手もシルバーウルフより強い個体であるウォーウルフの群れを討伐するというものだが危険な場面もなく退治できている。
「お疲れ様。アルメイの狙撃も無駄弾が無くなってきてるね。」
「うん!それに実際に使うとやっぱり改善点が思いつくもんだね。」
「シンキチ!ルーは??」
「ルーも精霊を呼び出しながら銃を使えるようになってきたね。凄いよ。」
「むふー。」
あれから数日、剣の素材の件に進展はないが冒険者稼業の方は順調で初めは二人でシルバーランクというのも実力を疑われていたが依頼を複数こなすうちに徐々にビル・レマーレの冒険者ギルドの人達に信頼してもらえるようになってきた。
ウォーウルフの回収も終わり、街への帰路の途中少し離れた所から戦闘音と大きな声で叫ぶ声が聞こえる。
「誰かが魔物と戦っているみたいだから様子を見に行こう。」
「「はーい。」」
音のする方へ向かうと、冒険者らしき武装した一団が大きなカマキリの魔物バトルマンティスと交戦中だった。
それにしても不思議な一団だ、少年一人と中年男性四人のパーティなのだが少年の方はお金の掛かってそうなプレートアーマーを来ているが後衛で、前衛担当の男性四人は冒険者より身なりは良いが騎士団ほど装備が整っている感じでもない。
「坊ちゃんは下がってください!」
「でも!僕の修業で来てるのに!」
「このバトルマンティスは強い魔物です!坊ちゃんが相手できる奴じゃありません!」
「シンキチ助ける?」
「うーん。下手に出て獲物を横取りされたとか言われたくないしもう少し様子見ようか。」
冒険者稼業をやっていてまだそういう事態に巻き込まれたことはないが、オカコットで登録した際にアマンダさんから緊急時や要請時以外で乱入すると難癖をつける冒険者もいるから気を付けるよう言われたことがあった。
バトルマンティスは冒険者ランクで言えばシルバーランク程度といった所だ。基本単体行動の魔物で一体でシルバーランク相当なのでなかなか強い。
戦況はやや拮抗しているが、四対一なので少しずつ四人組がバトルマンティスの体力を削っている。このまま行けば十分勝てるだろう。
「よし!あと一息だ!」
「いくぞ!はぁ!!」
『ギチギチ…!!』
「トドメだぁぁ!!」
背後からバトルマンティスに切りかかった男の一撃が決め手となり、魔物が倒れる。
「やっと倒したね。大きな被害もなかったね?」
「そうだな。…ん?どうしたルー?」
「〈シルフ〉」
「「え?」」
「〈エアカッター〉」
「「んん!?」」
ルーは突然シルフを召喚して攻撃を少年の方向へ飛ばす。とっさの事で俺もアルメイもルーを止める事は出来なかった。
「うわぁぁぁぁ!!」
物陰から突然魔法が飛び出してきたことに驚く少年。
「「「「坊ちゃま!!!」」」」
『ギーッ!!!!』
シルフの放った魔法は少年の後方、少年を頭上から狙っていた蜘蛛の魔物を直撃した。
一人後衛で距離を取っていた彼を別の魔物が狙っていたのだ。ルーはいち早くそれに気づいて魔物が襲いかかるのを防いだのだった。
ルー以外の全員があっけに取られていたが、そのおかげで少年は無傷で済んだ。
しかし当然の事ながら突然の乱入に四人組の一人から声が上がる。
「何者だ!」
「ヤバい!逃げるぞ!」
俺達は草むらに姿を隠していたので咄嗟にルーとアルメイを小脇に抱えてその場からダッシュで逃げてしまった。
「シンキチ逃げちゃって良かったの?」
「まぁ厄介ごとに巻き込まれるよりはいいだろ。それにあの四人組からは完全に死角になってて俺達は見えてなかっただろうし。」
「それもそっか。」
「それにしてもルー良く気付いたね。」
「たまたま。」
咄嗟の乱入ではあったが間違ったことはしていないのでルーの頭を撫でる。ルーもご満悦の様だ。
次の日、俺達は領主の館に来ていた。
何故か冒険者ギルド経由で領主の館へ来るようにと伝言があったためだ。
(これはもしかして…。)
豪華な客間に案内され、ソワソワとするアルメイと部屋中に視線の泳ぐルーに挟まれソファーに座って待っていると部屋に六十代くらいの小奇麗な男性と俺と同年代位の若い男女が入ってくる。その後ろには昨日の少年が今日は貴族服を着てついてきていた。
「ルー二―。この人達か。」
「はい。」
(怒られるのかなー…。)
「初めまして。私はこのビル・レマーレを含む一帯を治めているルーカス・ワイズ・レマーレ伯爵。隣は妻のアンナ。こっちは私の補佐をしてくれているロイセン・ビクセルフ準男爵、そして私の息子ルーニーです。」
「アンナ・ワイズ・レマーレですわ。」
「ロイセン・ビクセルフ準男爵と申します。」
「ルーニー・ワイズ・レマーレです。」
「ご挨拶が遅れました。私はシンキチ、こちらはルーとアルメイ。三人で冒険者をしながら旅をしています。」
「ア、アルメイです…。」
「アレミア・ルー・アリアドール…。」
「ほう、たった三人。しかも幼い子を連れて旅をするとはなかなか凄いですな。」
「い、いえいえ…。それで今日はどういったご用件でしたでしょうか…。」
「昨日息子を助けてくれたのでしょう?親としてそのお礼を申し上げたくてお呼び立てしました。」
(やっぱりバレていたか…。)
「シンキチ…。バレてるじゃん…。」
「死角だったと思うんだけどなんでわかったのかな…。」
アルメイとヒソヒソと話す。
「それで息子を助けていただいた方々に何かお礼をしたいと思いましてな。」
「旦那様、その辺の実務的な事は私が…。」
「そうだなロイセン。頼む。」
「ではシンキチ殿こちらの一覧から恩賞として差し上げたいと思っておりますのでお選びいただけますでしょうか。」
そういってロイセン準男爵は紙のリストを渡してくる。そこには金銭や装備品、調度品等が記されていた。
(装備品はどれもイマイチだな…。かといって金銭も意地汚く見えそうだし…。調度品とか貰っても旅では全く使わないしな。)
「ルーはなんか欲しいものある?」
「んー。おいしいおかし?」
(それでいいか。)
「あのー。ルーニー殿を助けたのはこのルーでして。この子に美味しいお菓子を食べさせてあげたいのですが…。」
俺の申し出に伯爵も準男爵も目を見開く。
「ルーニー殿を狙う魔物に気付いたのも倒したのもこの子で、そもそも私たちはお礼を期待して助勢したわけではないので…。」
俺の申し出に準男爵の表情は少し険しくなる。
(なんか失礼な事を言ってるんだろうか…。)
「そうですか。なら我が家御用達の菓子をアレミア嬢に差し上げましょう。ロイセン用意してあげなさい。」
「かしこまりました。」
そう言って準男爵は席を外し、部屋を出て行った。
その後、準男爵がお菓子を持ってくるまで六人、正確には伯爵と俺で世間話をしてお菓子を受け取り俺達は伯爵の屋敷を後にする。
「よかったねルー。」
「はやくたべたい。」
「ルーちゃんアタシにもちょっと分けてもらえないかな…?」
「みんなでたべる。」
「ありがとー!!」
こうして宿へ戻り、お土産のお菓子を三人で食べた。流石貴族御用達のお菓子だ。日本では甘いものはいつでも食べれたが異世界に来てからは久しく食べてない美味しい甘味に舌鼓を打つことになった。
初執筆作品です。
四、五日ペースで更新できるように頑張ってます。
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皆さんの暇つぶしになるように頑張って書きます。
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