第017話「派遣勇者ドワーフに会う」
第一章【レグナ王国編】
第017話「派遣勇者ドワーフに会う」
ビル・レマーレに入って俺達はすぐ宿を決めた。オカコットの時のように街の人におすすめされた宿は獣人の親子三人で切り盛りしている宿だ。初めて目にした獣人族は兎人と呼ばれるウサギの獣人で日本にいたころ有名な映画でこんなウサギの警察官が活躍する奴があったなと思い出す見た目だ。
宿の看板娘といった感じのアルメイと同い年くらいの兎人店員に聞くとこの街にも冒険者ギルドはあるとのことなのでこの街でも冒険者稼業をすれば長期滞在もできそうだ。
とはいえ、まずは武器工房に行ってアルメイの事や俺の武器の事を解決させなければならないので今日は宿でゆっくり旅の疲れを癒し、明日武器工房を訪ねたり街の散策をすることに決めた。
ちなみに宿の食事は兎人の宿だが肉と野菜のバランスのとれた美味しい食事だった。
「よし!朝食も食べ終えたし、武器工房に行くとするか。」
宿の食堂で朝食をすませた俺達は最大の目的である武器工房へ向かう。工房は街では有名らしく場所を聞くとすぐ教えてもらえた。
(流石王国騎士団お抱えの武器職人の工房だけあるなぁ…。)
工房は武器・防具店も営んでいたので、俺達はまず店の方へ入った。
「いらっしゃーい…。」
何とも気の抜けた店員の挨拶に迎えられ入った店はオカコットにあるアルメイの実家の倍以上のスペースに所狭しと武器や防具が陳列されていた。
「コラッ!気の抜けた店番してんじゃないよ!バカ兄貴!」
「へぁ!?ア、アルメイ!?」
「そんな感じならそうゆう風にお母さん達に手紙書くよ!!」
「それは勘弁してくれ!!ってなんでここにいるんだよ!?」
「家からウルグライムさん宛に手紙が行ってるの聞いてないの?」
「いや…。特に…。」
「まあいいか。兄貴、ウルグライムさんいる?」
「いや、朝から領主様の館に呼び出されていないな。工房も先輩たちで回してるし。」
「いつ帰ってくるかも分からない?」
「わからんな。師匠に用事なら明日以降にした方がいいぞ。来たのは俺から伝えておくから。」
「わかった、ありがと。また明日にする。シンキチ、ルーちゃん行こ。」
「アルメイ、その人とエルフの子は?」
「私はシンキチです。」
「ルーだよ。」
「アタシこの人たちと旅することにしたから。詳しくは家からの手紙で師匠に伝わってるだろうけど。今日はそれで挨拶に来たの。」
「えぇ!?」
「まっそうゆうこと。また明日来るから。二人とも行こ。」
「あ、あぁ…。」
「お、おい…。」
アルメイに促されて挨拶も早々に店を出た。
「お兄さんと仲悪いのかい?」
アルメイの店での様子が気になり聞いてみた。
「嫌いとかではないんだ…。ただ武器職人として才能があるはずなのにあんまり真面目じゃなくて。昔は二人で実家の武器屋を継ぐなんて話してたのに、大人になるにつれ職人としても武器屋としても不真面目な部分が目につくようになってなんか見ててイライラするって言うか…。」
アルメイは武器職人として真剣だからこそ兄の体たらくが許せないのだろう。この問題は家族の問題で俺達がどうにかできることはほとんどない。
(今の俺に出来るのはアルメイに出来る限りの事を教えたり、経験させる事だけか…。)
その後俺達は街の散策をした。大きな街だけあって市場も活気があるし雑貨屋や服屋、飲食店も非常に多い。主に女の子二人の買い物観光に付き合う形になったが、これも旅の醍醐味でもある。
その日の夜、宿で夕食を食べていると隣のテーブルで飲み食いしている客も会話が聞こえてきた。
「聞いたか?最近領主様んとこの跡取り息子が冒険者ギルドに登録したらしいぞ。」
「ほー。もうそんな歳なのか。」
「領主様みたいに領民の暮らしを知った良い領主になってくれるといいねぇ…。」
「まったくだ。」
「領主様ももう良い御年だったろう?」
「去年の祭りの挨拶で顔を見たけど年取ってたなぁ…。」
「そうか…。」
ビル・レマーレの領主は領民に慕われたいい人の様だ。確かにこの街は活気があるし、住んでいる人達にも活力がある。領民にとって暮らしやすい統治をしているのだろう。街の中だけでなく外周も衛兵が見回りしているしこれなら安心して滞在できるというものだ。
次の日もう一度工房に足を運ぶ。今日の店番はお兄さんではなかったが昨日の内に俺達の事を伝えておいてくれたのか、アルメイの名前を出したらすんなり奥へ案内してもらえた。
案内してくれたお弟子さんと思われる人は部屋の扉をノックする。
「師匠、ウルラスの妹さん達がいらっしゃいました。」
「入ってもらってくれ。」
中から少しかすれた野太い声が返事をする。
中に入ると、背丈は低いが太く逞しい手足にもはや食事に支障が出るのではと思えるほど立派な髭を蓄えた男性がこちらを見る。隣には昨日店番をしていたアルメイの兄もいた。
(おぉ…。生ドワーフ…。)
「よぉ。ジーラスんとこの嬢ちゃん。デカくなったなぁ。」
「あっ!初めましてアルメイです!」
「おう!嬢ちゃんが生まれたばかりの時に一度ジーラスんとこで会ってるが、覚えてるわけねぇし初めましてだな!知ってると思うが儂がウルグライムだ。」
「あっあの!」
「分かってる分かってる!!嬢ちゃんがなんで来たかもジーラスの手紙で知ってるからな!まぁ掛けろって。」
そう言われて俺達は全員部屋に用意された椅子に掛ける。
「それで、ウチで修業せずに旅をしながら学びたいっつうことだが、そこのアンちゃんと駆け落ちではねぇのか??」
ニヤニヤしながら話すウルグライム氏にアルメイは顔を真っ赤にして、兄は顔を真っ青にする。
「アルメイ!?そうなのか!?」
「ちちち違います!本気で旅の中で勉強したいんです!!この人達と一緒なのは私の作った武器を使って貰っていて!その改良とかもしたくて…!!!」
「ガハハハっ!冗談だ!冗談!ウルラスと違って真面目な嬢ちゃんだなぁおい!」
「――――っ!!!?」
おちょくられていたことに気付いたアルメイは真っ赤な顔のまま下を向いてしまった。
しかし突然馬鹿笑いしていたウルグライムは真剣な顔つきになり。
「んで、作ったって言う武器…。見せてもらえるかい?」
「あ…。ど、どうぞ…。」
急に真剣な職人の顔に変貌したことに驚きつつもアルメイは銃を手渡す。
ウルグライムは銃を手に取り、外装や内部、各部品の動き、弾までをじっくりと見る。それほど長い時間ではなかったが彼の真剣な様子、雰囲気が部屋を一気に包み込み全員が息を飲んでその様子を見ていた。
「なかなか良くできているな。」
その一言で空気が弛緩する、アルメイの表情も心なしか明るい。
「だが、パッと見ただけでも改良箇所が五、六か所はあるなぁ…。」
(そんなにあるのか。俺にはよく分からん…。)
「アルメイ、教えてほしいか?」
「…。」
「いや、それを自力で見つけるもアタシの仕事だと思う…ます。もしアタシが完璧だと思える状態になってもまだ直ってなければダメ出ししてください。」
(おぉ!アルメイカッコイイ!!)
「ガッハッハ!!よく言った!オメェさんやっぱジーラスの子供だよ!!ガッハッハ!!」
また職人の顔から陽気な表情へ戻ったウルグライムは大きな声で笑った。
「そんで、そっちの兄ちゃんも儂に用事があるらしいじゃねぇか。」
「はい。俺はシンキチという旅人でアルメイと一緒に旅をするこのになったのですが、ウルグライムさんに剣の制作をお願いしたくて来ました。これはお世話になったオカコット冒険者ギルドのログナントさんからいただきました。」
そう伝えて俺はログナントさんの書いた紹介状を渡す。
「ほう…。ログのやつの紹介か…。」
紹介状を読んだウルグライムは少しだけ困ったような顔をする。
「ログの頼みの上、アルメイの旅の同伴者だからな。もちろん武器は作らせてもらう。ただ申し訳ねぇが先に一件だけ領主からの依頼があるからその後になっちまう。なんでも息子に持たせる武器を作れってことでな。昨日はその話で領主の家に呼ばれてたんだ。」
「師匠、領主様の息子ってこの間冒険者登録したばっかりの御曹司のですか?」
「あぁ…。その息子の為にミスリル製のロングソードを作ってくれってんだと。俺は持ち主が使いこなせる武器しか作りたくねぇのは知っているだろう?だがここの領主にはずいぶん世話になったからな。息子の身の丈に合わないのは分かっているが作ることにしたんだ。」
「だから兄ちゃんの剣はそれが作り終わった後になるがいいかい?」
「しばらく滞在する予定ですし、全然構いませんよ。」
「ウチはオーダーメイドの場合素材は客が用意することになってるんだ。だから領主の武器が出来るまでの間に剣用の金属インゴットを調達しといてくれ。」
「わかりました。」
金属のインゴットは自分で採掘しても、街の金属専門の業者から購入してもいいとのことなのであとで見に行ってみたいと思う。
こうしてこの街での目的であるアルメイの工房への挨拶は無事終了し、俺の剣の製作依頼は製作前までに素材を探しておくことになった。
初執筆作品です。
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