第021話「派遣勇者とルー二―事件(後編)」
第一章【レグナ王国編】
第021話「派遣勇者とルー二―事件(後編)」
「クソ!なんであいつ等がアジトに攻めてきてんだ!」
「襲撃班の奴らはどうしたんだ!」
「とりあえずお頭呼んで来い!!」
賊は襲撃が成功したと思っていたためレックス達の出現にかなり動揺している。
こうなると鍛錬を積んだ兵士とは違い戦力が大きく下がる。とはいえレックス達も万全の状態ではないので早めに後方から賊を退治しなくてはならない。
「ルーニー様行きますよ。しっかりついてきて下さいね。」
「は、はいっ!!」
ルーニーが捕まっていた部屋から出るとすぐに数人の賊と鉢合わせする。しかし突然の遭遇に賊は驚くばかりで隙だらけだ。俺は簡単に懐へ入り込み素手で意識を刈り取っていく。
来た道を戻りながら進むと聞こえいる戦闘音が徐々に大きくなってくる。出入り口付近でレックス達が賊と戦闘しているのだろう。
後方からそっと出入口の方を除くとレックス達が六人程の賊と対峙していてその賊の後方にはルーニーのミスリル剣を構えた賊が立っている。
(アレを持っているという事はあいつが盗賊のリーダーだな。最優先で捕縛しなきゃな…。)
俺は後方からリーダーらしき人物へ近づき、手刀で沈める。
そしてリーダーの撃沈に気付きもしていない残りの賊も一気に片づけていく。
「シンキチ殿!!」
「お待たせしました。」
全ての賊を倒し終えるとレックスが声を掛けてきた。
「ルーニー様は!?ご無事で!?」
「あちらにいますよ。」
「レックス!!」
「ルーニー様!よくぞご無事で…。」
「レックスさん賊の捕縛をお願いします。案内役は何処にいますか?リーダーを確認してもらわなければいけません。」
「あいつは向こうの木に縛りつけてあります。こっちの捕縛は任せてください。」
俺は案内役の賊を引き連れて戻ってくると縛られた賊を見せ、質問に答えさせた。
「どれがお前達のリーダーだ?」
「こいつがリーダーです…。」
ビクビクした案内役が指したのはやはりルーニーのミスリル剣を持っていた奴だった。
「やはりコイツか…。」
俺は案内役の時と同じようにリーダーを起こし、恐怖の魔法をかける。もうリーダーの男には抵抗する気力はない。
「今回の人攫いは誰に指示されたんだ?」
「…。」
「ビル・レマーレの領主補佐ロイセン・ビクセルフだ…。」
その一言に俺達は「やはり…。」というリアクションだが、ルーニーだけは聞かされていなかったのか唖然としている。
「今回の件に関してお前の知っている事を話すんだ。」
「俺達はこの近辺で活動していた盗賊の集まりだ…。裏のルートで知り合ったビクセルフ準男爵から時々表には出せない依頼を受けて俺達がこなしていた…。最近になって領主の跡取りの暗殺依頼があったんだが報酬の半分は前払いで残りは暗殺完了後に貰う手筈だった…。」
「なるほどな。なら何故ルーニー様を攫ったんだ?目的は暗殺だったんだろ?」
「ビクセルフ準男爵には息子という後継者を排除するよう言われただけだったからな…。そこの小僧は闇商に売るつもりだったんだ…。」
(闇商…??)
「おい、闇商とはなんだ?」
すかさずレックスがリーダーの男へ質問する。
「お前たちは知らないのか?奴隷商人さ…。しかも普通の奴隷商人ではなく訳アリを奴隷として捌く奴らだ。貴族の不義で出来た子供とか通常の奴隷市場に出回ったらマズイ人間なんかを取引するのさ。俺達はそういった奴隷商人達を闇商と呼んでいる。貴族の出身の子は愛玩奴隷として人気が高いから売ろうとしたのさ…。」
「なんという…。しかしその判断のおかげでルーニー様が助かったのだから複雑だな。」
(その通りだこの賊たちが欲をかかず依頼に忠実であればルーニーは襲撃された場で殺されていた可能性が高い。)
「とはいえお前たちとビクセルフ準男爵の繋がりを示す証拠はあるのか?責任逃れの為に嘘をついている可能性だってあるからな。」
「う、嘘なんかつかねぇよ!そうだ、依頼が成功して無事ビクセルフ準男爵が領主の実権を握った時は俺達を裏の用心棒にする約束なんだ!約束状だってある!」
「何!?シンキチ殿!それが本当ならロイセンを糾弾できます!」
「そうですね。その書類は何処にあるんだ。」
「こ、こっちだ…。」
リーダーから渡された紙にはお互いの悪事に関して他言しない事、お互いをゆすらない事等を条件にビクセルフ準男爵がビル・レマーレ領主になった暁には盗賊団を一種のお抱えの裏用心棒として雇用するという内容だった。
紙にはリーダーの男とビクセルフ準男爵のサインがしっかりと記入されていた。
「こ、これは完全に奴の野心が盛り込まれたものだ…。」
「領主様にご報告しなければ!」
「それが良いでしょうね。」
俺達はその後捕えた賊の残党と共にビル・レマーレへ戻った。衛兵へ引き渡した賊の処分は領主の判断を仰いでからという事なので、ルーニーやレックス達と共に領主の屋敷へと向かう。
「おぉ!ルーニー!無事でよかった…!」
「お父様…。心配掛けてごめんなさい…。」
再開を喜ぶ伯爵を余所に後ろに佇むビクセルフ準男爵の顔色は悪い。
「レックス達も、ご苦労だったな。」
「領主様、我々の護衛が力及ばずルーニー様に身の危険が及んでしまった事を改めて謝罪させてください。」
「うむ…。確かにそうなのかもしれないが、元々は私が冒険者活動に許可を出した事にも原因はある。ルーニーが無事戻ってきた今、その件はもう良い。」
「ありがとうございます。」
「衛兵からの報告によれば三十人程の盗賊と戦闘があったのだろう?身体をしっかり休ませるのだ。」
「いえ、まだ仕事が残っております。」
「何?」
そういうとレックスは例の書面を領主へ渡す。
「なんだこれは?」
「これは盗賊のアジトで見つけた物です。ご覧になってください。」
流石にここまで来ると書面の正体に気付いたのか、ビクセルフ準男爵が書面を取り上げようと動いてきたので俺はすかさず動いて準男爵羽交い絞めにする。
「シンキチ殿!?何事かね!?ロイセンに何をするのだ!!」
「レマーレ卿。無礼をお許しください。ですがまずはその書面をご覧になってください。」
俺やレックスに促され伯爵は書面を広げて読み始めた。
「…なんだ。…なんなんだこれは。」
伯爵は予期せぬ内容に言葉を失っている。
「レマーレ卿、それは今回の事件の実行犯と首謀者の証拠の文書です。」
「領主様。ルーニー様を亡き者にしようと盗賊を雇ったのはここにいるロイセンです。」
「なんという事だ…。」
伯爵は信頼していた部下に裏切られたショックからかガックリと肩を落とす。
「ピアザ、シャント、オズ…。ロイセンを地下牢に連れて行け…。」
「畏まりました…。」
「伯爵!それは盗賊らの罠です!ビル・レマーレを混乱させる事を目的としたに違いありません!私は無実です!」
「それは調べればはっきりするだろう。ロイセン…。」
「…。」
「連れて行け…。」
「はっ…。」
「レックス、シンキチ殿…。詳しく話をしてくれんか…。まだ状況が良く飲みこみきれんのだ。」
「順を追ってご説明いたします…。」
俺達は今回の顛末、そしてロイセンと夫人に関係があるかもしれない事も含め全てを伯爵に説明した。伯爵は信頼していた部下と妻に裏切られたという事実に始めこそ嘆いていたものの、前妻の忘れ形見でもあるルーニーを殺害しようとしていたという事実を噛み締めると途中からは怒りに震えながら俺達の話を聞いていた。
「レックス、シンキチ殿。よくぞ今回の件を暴いてくれた。あとは私が動く。」
「お願いいたします。」
こうして領主の息子ルーニーが攫われるという事件は一応の終息を見せた。
初執筆作品です。
四、五日ペースで更新できるように頑張ってます。
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