第014話「派遣勇者力を見せつける」
第一章【レグナ王国編】
第014話「派遣勇者力を見せつける」
酒場での打ち合わせの次の日、俺達シルバーランクの三チームは冒険者ギルド横の訓練広場に集まった。
ここは冒険者同士が技を披露したり教授したりする用にギルドが作った広場だ。
「それで、ルールはどうするのかしら。」
「武器は木剣で致命打判定もしくは相手が降参で終了にしようか。あとは俺からの条件提示はないよ。もちろん強化スキルや魔法も使ってもらって構わない。」
「大きく出たわね。相手は私でいいのかしら?」
「んー。なんなら四人同時でもいいかな。」
「「「「はぁ?」」」」
俺の言葉に明らかに怒っている”四枚の葉”の一同にルーや五月雨のメンバーはオロオロしていた。
「私たちが女のパーティーだからって舐めてると痛い目見るわよ。」
「いやいやそんなつもりはないよ。折角だから皆さんの連携とかも見せてもらいたないなと思ったんだ。」
「…。ならお望みどおり見せてあげるわ!行くわよ!」
あちらが戦闘態勢に入ったのでこちらも身構える。
「ミミン、アル!」
「はい!〈スピードアップ〉〈ガードアップ〉!」
「〈マジックアップ〉〈ファイアーアロー〉!」
魔法使いのアルが自身に強化魔法と俺への先制攻撃を、僧侶のミミンが前衛二人に補助魔法を掛ける。アルの攻撃魔法を合図に身体強化された前衛が切り込んできた。
(うん。連携が良く取れたいいチームだ。)
俺はアルのマジックアローを剣で切り飛ばし、続いて距離を縮めてくるリリアンナとピクムの攻撃を躱す。その間にも僧侶のミミンは前衛二人に追加の補助魔法を掛けているし、俺と前衛の距離が開けばアルから攻撃魔法が飛んでくる。
俺は攻撃魔法を受け流しても被害が出ないところへ弾きながらレンジャーのピクムを体術で放り投げ、リリアンナの剣撃は剣で受けつつ軽く打撃を入れていく。
「いやー。この前見たとはいえ嬢ちゃんの父さんは本当に強いな。」
「ふふん。」
「女のみのチームとは言え彼女たちもシルバーランクだ。それを四人全員相手にしつつ、まるで子供の訓練でもに付き合っているような立ち振る舞いだもんな…。本当に何者なんだあの人は。」
後衛も遠隔魔法や前衛の回復をしていたが魔力が尽きた後は手も出せず、ただただ自分達を寄せ付けない前衛の戦いを呆然と見ている。
「無理無理っ!降参よ!」
リリアンナがそう言うとレンジャーのピクムも力尽きていたのかその場にペタンと座り込む。
「お疲れ様。俺は合格かな?」
「合格も何も強すぎでしょ。今回の討伐も貴方一人で十分なんじゃない…。」
「いやいや、娘を連れて行く以上何かあっては困るから、”五月雨”の皆さんと”四つの葉”の皆さんの力も必要です。ただ本命の魔物は俺に任せてほしいなとは思ってますけどね。」
「わかったわ。今回の討伐の指揮はシンキチさんお任せします。」
「ありがとう。」
「こちらこそ。失礼な事言って悪かったわ。」
「冒険者として俺達は新参者ですから。その辺は気にしていませんよ。」
そういって腰を下ろしているリリアンナに手を差し伸べる。彼女は俺の手を取って立ち上がる。
「…。少しカッコイイじゃない。」
ボソッとリリアンナが呟くがこの娘少しチョロ過ぎるんじゃなかろうか。
「どうだい。娘っこシンキチさんは強ぇだろ!」
「シンキチすごい。」
我が事のように俺を自慢するラムダとルー。エルフの里でもそうだったが一人旅が長かった所為もあって多勢に褒められるとむずかゆい。しかも気づけば広場の周りには随分とギャラリーが増えており、皆口々に俺達の戦いに賞賛をくれていた。
「なんかだいぶ目立ってしまったから場所を変えて話をしようか。」
四枚の葉の面々は俺との勝負に熱くなり過ぎたのか、体力や魔力がずいぶん減ってしまったので討伐に行くのは明日と決めた。その日は冒険者達から技や魔法の質問攻めにあってしまったが、俺の知識や技術が彼らの糧になるならと出来る限り教えてあげた。
グレートミラーリザード討伐決行日。
「それじゃ、ここから洞窟のある森に入っていくけど、洞窟にたどり着くまでに遭遇した魔物との戦闘は三チームでそれぞれ対処していこう。」
「了解だ。」
「オッケー。」
流石に俺たち以外の二チームもシルバーランクなので森で遭遇する魔物程度に遅れはとらない。
各自上手く連携も取れているし、人数が多いので無駄に魔力や体力、補助アイテムなどを消費する事はなかった。
しばらく森を歩き続けると目的の洞窟を発見する。
「ここが報告のあった洞窟ね。」
「入り口は鉱山のような感じでキチンと整備されているんだな。」
「ここは元々天然の洞窟だったらしいんだが、石炭や鉱石が取れるってんで一度はしっかり整備したらしいぜ。ただ次第にまとまった量が取れなくなったから入る人間も減って魔物が棲みつくようになったみたいだ。」
「それにしてはそこそこ綺麗じゃない?」
「まぁ完全に閉鎖したわけじゃないからたまに冒険者を雇って魔物を退治しながら掘る奴がいるんだよ。実際まだ資源は少ないなりに出るらしい。」
「それで今回も掘りに来たやつらがリザードに出くわしたのか。」
「そういうこったな。」
「まぁ、今回はこの洞窟の地図があるってのが楽な所だな。」
「そうね。完全に天然の洞窟だと地図は普通ないものね。」
“五月雨”と“四枚の葉”の面々の会話が途切れた所で俺は皆に今回の洞窟探索の確認をする。
「それじゃあ洞窟内での行動だけど、リザードと遭遇しそうなエリアは報告のあったこの奥の方になるだろうからそこまでの前衛は戦士のラムダさんとリリアンナさん、盗賊とレンジャーのザスマンさんとピクムさんにお任せします。」
「「おう!まかせろ。」」
「「がんばるわね。」」
「俺は基本手を出しませんが、危ないときはもちろん助勢します。後衛はルルムンドさんとアルさん、ミミンさん、ルーで戦況を見ながら前衛をフォローしてください。」
「うっし。」
「「「はーい。」」」
今回目的のグレートミラーリザード戦までは俺以外のメンバーで戦闘を行ってもらうことにした。これは俺が楽をしたいとか、メインの魔物まで体力を温存したいとかではなく報酬を均等に三等分するためにも彼らも仕事をしたという事にしないと取り分を遠慮するのではないかと考えたからだ。
“五月雨”も“四枚の葉”も皆いい人ばかりだ。だからこそ今回の報酬は平等に気持ちよく受け取ってほしいと思っている。
(俺は地図の他に自前のマップを見ながら進めるから不意に上位種が飛び出してきて被害が出るなんて心配もないしね。)
洞窟内はそれほど広くないが、元々ブロンズクラスの冒険者が護衛に着くレベルの洞窟なので遭遇する魔物は楽勝のレベルだ。実際後衛は殆ど何もしていないし、前衛も順番を決めたりしながら交代しながら魔物と戦っている。こうして俺達はガンガン先へと進んでいった。
「そろそろグレートミラーリザードの遭遇ポイントになりますね。」
地図を見ながら進むミミンがそう言うと、さすがにチーム全体に緊張が走る。戦うのは俺なのだが他のメンバーも今までで遭遇した魔物の中で間違いなく上位に位置する強者との遭遇を前にすると緊張がうかがえる。
(マップ探索によるとこの先少し広くなった広間の様な所の奥の通路に上位種がいるようだから戦闘はその広間ですることになるだろう。)
「この先はどんな感じなんですか?」
俺が地図役のミミンに問いかけると、
「この先は採掘の作業場みたいで少し広くなっているみたいですね…。」
「ならその辺りで本命と戦闘ってこったな。」
「えぇ、本命のリザードが出てきた場合は事前の打ち合わせ通り俺が最前衛として対処します。相手は中位魔法を跳ね返すらしいですし直接の肉弾戦で相手をします。その間他の魔物が出てきた場合は今の陣営で対応してください。あと補助系の魔法は俺には必要ありません。自分で掛けられますから他の方へ回してください。」
俺の最終確認に対して全員が頷く。
「それじゃ、進みましょう。」
進んだ先は地図通り少し広い空間になっていた。岩などが散らかっていて少しばかり足場が悪いが大きい魔物と戦闘するにはちょうどいい広さだ。
(リザードはあの奥の横穴の中だな。こっちから魔物は見えないが、向こうはもうこちらを認識しているようでコチラが油断するのを待っているような感じだ。上位種なだけあっておつむも悪くない。)
「なんもいねぇな…。」
「えぇ、もう少し奥なのかしら。」
「いや、あの横穴の中にいますよ。こちらの様子を見ています。」
「「え!」」
「アルさん、穴の奥に潜むリザードをここまで引きずり出したいのであの穴に一発ファイアーアローを打ち込んでくれませんか?」
「はい!〈ファイアーアロー〉!」
アルの放った魔法の矢が横穴の奥へ吸い込まれていく。すると穴の奥からドドド…っと巨大な魔物が走ってくる音が聞こえ始めた。
「来ますよ!打ち合わせ通りお願いします!」
『ゴォアァァァァァァァァァァッ!』
穴から顔を出してきたのはドラゴン種と見間違えそうなサイズの真っ白に輝くミラーリザード。その咆哮に驚いたのか広間の様々な横穴から蝙蝠系や昆虫系の魔物が飛び出してくる。リザードと他の魔物が混ざっての混戦は危険度が増してしまうので俺は一気に本命と距離を詰めて勝負を決めることにした。
「〈縮地加速〉!」〈一閃〉!」
加速スキルでリザードの足元まで一気に到達し首元に一撃を食わえる。俺のレベルでの〈一閃〉なら一太刀で首を落とせるはずだ。
しかし。
バキッ…。
刀身と鍔の境目から剣が折れてしまった。
(アレ…。)
今俺が使っていた剣は前の世界の序盤で使用していた市販の普通のロングソードだったのだが、どうやら強くなり過ぎた俺の攻撃スキルの威力に耐えられなくなっていたらしい。リザードの鱗に当たった瞬間に根元からあっけなく折れてしまった。
(新しい世界で目立たないように普通の武器に切り替えていたのがこんな形で仇となるとは…。)
魔法鞄の中には前の世界の後半で使っていた勇者用でないレジェンド級の武器もあるのだが、見た目が特別感ありすぎの逸品なのでここで取り出すのは少しまずい。
(しかたない…。殴るか。)
「〈肉体超強化〉!〈鋼鉄拳〉!」
〈肉体超強化〉はその名の通り身体を強化するスキルの上位スキルだ。全身の筋肉が膨れ上がり常人を遥かに超えるパワーを発揮するようになる。
〈鋼鉄拳〉は自分の身体の一部を鋼のように硬化させるスキルだ。
その極限まで強化した肉体から繰り出す鋼鉄の拳でリザードの頭部を殴り飛ばす。
『――――!?』
ズドンと鈍い音と共に殴った場所は固い鱗ごとはじけ飛んだ。すかさず俺はリザードの頭部の下へ潜り込み今度は顎を打ち抜く。
連続で上下から打撃を受けたグレートミラーリザードは脳が揺れて激しい脳しんとうで倒れこんだ。
他の皆はまだ魔物と戦闘中だったので今のうちに止めを刺しておく。皆から見えない位置に移動して魔法鞄から先ほど出すのを止めたレジェンド級の剣を取り出しリザードの首を一太刀で切り飛ばす。その剣はすぐに鞄に戻しておく。
皆の方も戦闘は無事に終了したようだ。強い魔物はグレートミラーリザードだけだったとはいえ、あの大量の魔物を相手に重傷者なしで依頼を完遂できたのは素晴らしい。幸い俺の剣が初手から壊れてしまったのは誰も見ていなかったようで最後首を落とした際に壊れてしまったことにしておいた。
(俺のスキルやパワーに耐えられるけど目立たない見た目の剣を早めに調達しなきゃなー。)
こうして俺達はランクオーバーの上位種魔物討伐依頼を死者、重症者なしで達成という偉業を成し遂げたのだった。
初執筆作品です。
四、五日ペースで更新できるように頑張ってます。
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