第013話「派遣勇者決断する」
第一章【レグナ王国編】
第013話「派遣勇者決断する」
「忙しい中お集まりいただきありがとうございます。」
俺達はギルドに着くと以前シルバー昇格の件で通された応接室へ案内された。中にはギルド長のログナントや冒険者と思われる人物が三名座っている。そのうちの一人は“五月雨”のリーダーラムダさんだ。
俺が着席すると呼び出した面子が揃ったのか、ログナントが冒頭の挨拶を始めた。
「皆さんの耳にもすでに入っているかと思いますが、近隣にミラーリザードが出現しました。知っている方もいるとは思いますがこの魔物は大型の肉食獣というだけでなく、非常に硬い鱗で覆われその鏡のような鱗は低位の魔法を跳ね返します。その特性から討伐難易度も高く本来はゴールドランクに相当します。」
「それは分かるがここには“十六夜”の奴らがいないじゃないか。」
そう口を挟んだのはラムダさんだ。会話から察するに“十六夜”というのはこの町唯一のゴールドランクのチームの事なのだろう。
「今“十六夜”の皆さんは依頼の関係で王都に行ってましてしばらくオカコットへは戻ってこれないのです。ですがミラーリザードは大変危険な魔物な上、住処の洞窟は王都沿いの街道からも遠くありません。ですので今回は特例ではありますがシルバーランク数組でこの依頼を行けていただけないかと言う事でギルド側の方針が決まったのです。」
「ちなみに何組で行けばいいんだ?」
「それはシルバーの方々にお任せします。ただ報酬は一定額なので参加チームが増えればそれだけ一組辺りの報酬は少なくなってしまうのでそこはご勘弁ください。」
「この依頼、俺らが行かせてもらうぜ!」
そういって手を上げたのは体格の良いいかにも冒険者といった風貌の男だ。
「他のチームの方は?」
「いやいやギルド長!この依頼は俺ら“牙狼”だけで十分だ!他の奴らの手は借りねぇ!」
「一組で大丈夫なのですか?」
「正直シルバーの依頼には飽きてきてたんだ。ゴールドになろうにもこの街じゃ”十六夜”の奴らがゴールド依頼を掻っ攫ってなかなか昇格もしにくいしよ。久しぶりに手ごたえのある魔物を狩らせてもらう良い機会だぜ。」
「他のチームはそれでよろしいですか?」
(ゴールドランクの依頼は魅力あるけどこの“牙狼”の人達と共闘するのは気が引ける。なにより荒くれ者感が強いのでルーを近づけたくないな…。)
その後“五月雨”のラムダさんももう一人のリーダーの冒険者も異を唱えなかったのでこの討伐依頼は牙狼のチームが単独で受けることになった。
会議が終了しギルドのメインフロアに戻るとソファーで待っていたルーの隣にアルメイがいる。
「シンキチさん、また弾用意してきたよ!」
「本当に早いな。」
「この武器を商品化させるのはもうアタシの夢になってきたからね。そのためにやれることは全力でやるよ!」
「そしたらアルメイ。これもう一丁作ってくれるかい?もちろんお金の心配はいらないからさ。」
「え!?どうして!?」
「ルーの予備って側面もあるけど、一応俺も持っておきたいからね。」
そういって前回ルーの銃作成で掛かった費用と同じくらいの金額をアルメイに渡す。
「銃の新規作成は急がないし、弾もこれだけ作っておいてくれればしばらく持つから無理しないで作るんだよ。」
最近ワーカーホリック気味のアルメイに釘を刺しておく。こうでもしないとまた無理をして物凄い速度で作ろうとしてしまうだろう。アルメイの気持ちもわかるが年頃の娘にあまり無理をさせたくない。
「了解了解!!」
分かっているのか不明だが嬉しそうに帰るアルメイを見送って俺達はまた依頼をこなすのだった。
次の日事件は起こった。
午前の内に朝の依頼を終了させてギルドに戻るや否や、また応接室に呼ばれる。部屋に入ると前回と同じ顔ぶれが座っていた。いや“牙狼”のリーダーを除く面子が揃っている。
(これはなんかあったな…。)
「昨日の今日でお集まりいただきありがとうございます。早速ですが“牙狼”の方々が依頼を失敗してしまいました。被害としてはチーム六名の内二人が死亡、リーダーのグッソさんは左腕を欠損したそうです。」
それを聞いた“五月雨”のラムダさんともう一人の冒険者リーダーはため息をうつ。
「もうひとつ悪い知らせなのですが、牙狼の方によるとミラーリザードではなく上位種のグレートミラーリザードの可能性が高いとのことです。」
「「…。」」
(上位種って何が違うんだろ。)
「あのー、グレートと普通の違いってどんな感じなんでしょう?」
「本来ミラーリザードは光沢のある灰色の鱗なんですが、稀に生まれる上位種は体長も通常より大きく獰猛で鱗は光沢のある白色なんです。ちなみに通常のミラーリザードは低位の魔法を反射しますが上位種ともなると中位の魔法すら弾き返すと言われています。」
「なるほど。」
「報告してくれた牙狼の方が言うには洞窟内で薄暗かったものの、体躯も大きく白色だったのでほぼ間違いないだろうとのことでした。」
一通り話し終えたログナントにラムダが問いかける。
「で、ギルド長どうすんだい?」
「この案件に関しては皆さんとしっかり相談させてもらいたいと思っています。この討伐依頼対象が上位種に格上げとなった為ゴールドランクとしても難易度が高く通常であればゴールドとシルバー数組が協力して行うレベルの依頼になります。ギルドとしては依頼を受注し早急にこの脅威を取り除いてほしい反面、ゴールド不在の状況で無理に依頼を受けていただきたくはないという状態です。」
「まぁ“牙狼”が失敗して実質壊滅してるしここで私達になんかあればこの町のシルバーは全滅だしねぇ…。」
「そういう事です。ですから今回はここにいる全シルバーランクチーム合同で討伐に向かうか、誰も行かずゴールドの”十六夜”帰還を待ち、その後チーム編成して討伐するかの二択としたいと思っております。」
俺を含む冒険者側はお互いの顔を見渡す。
「俺は行ってもいいと思ってますよ。」
「「「!!」」」
「まさか、シンキチさんが一番に決断するとは思っていませんでしたよ。」
「そうですか??」
「えぇ、お強いのは知っているつもりでしたが、貴方の所のメンバーは二人。しかも連れているのは幼い娘さんですから。」
(最初は危険度高そうだしルーには早いかなー。って思ったけど上位種のリザードは一体だけの様だし、俺が相手をすればルーには防御陣張って遠隔から援護させれば問題ない。問題があるとすれば俺がリザードと戦っている間に他の魔物が大量に出てきた場合にルーの補助を出来ないかもしれないという事くらいだ。)
「世話になってる町の近くに危険な魔物がいるのは放置できないですし。」
そして俺は女神との約束も果たしていかないといけない。グレートミラーリザードのいる洞窟は鉱石等の素材が出る場所らしいので早めに退治しないと被害者は増えるかもしれない。
「シンキチさん達が行くなら俺達“五月雨”ももちろん行かせてもらおう。恩もあるしな。」
そういってラムダは快く同意してくれた。
「なら私たちも同行しよう。」
俺とラムダさんの意見を聞いてもう一人の冒険者リーダーも決断してくれた。
「宜しいのですね?」
「「「あぁ。」」」
「わかりました。ではこの三チームで討伐に向かうということでよろしくお願いします。出発の打ち合わせ等に関しては皆さんにお任せしますので決まったらギルドの方へ報告してください。それでは会合はこれで終了させてもらいます。」
そういってログナントは部屋から出ていく。
「んじゃ、打ち合わせと顔合わせは夜に酒場でするかね!」
「わかりました。」
「メンバーに伝えてくるわ。」
そう言って俺達もギルドを後にする。
その日の夜ラムダの指定した酒場の一角に俺達は集まった。
「んじゃ、軽く自己紹介と打ち合わせを飲みながらしようぜ!つっても二組共知った顔なんだけどな!俺達は“五月雨”俺がリーダーのラムダで戦士、コイツが魔法使いのルルムンド、こっちが盗賊のザスマンだ。」
「私たちは“四枚の葉”。私がリーダーで戦士のリリアンナ、こっちから魔法使いのアル、僧侶のミミン、レンジャーのピクムよ。」
「こいつらは珍しい女性チームなんだ。でもシルバーで腕も立つ。すごいだろ?」
そういってなぜかラムダが自慢げだ。最後に俺達が自己紹介する。
「俺達は特にチーム名は無いんだ。俺はシンキチ、魔法戦士でこっちが魔法使いで娘のルーだ。」
「ルーだよー。」
「「「かわいい!!!」」」
女性陣から黄色い声が上がる。
「見てみて!おめめクリクリ!」
「ほっぺも柔らかそう!」
「髪もサラサラで可愛いー!」
「////。」
四枚の葉のメンバーから沢山の賞賛を貰ってモジモジとするルー。
(可愛い。)
「ちょっとみんな!今日は打ち合わせに来てるんだから!」
「えー?リリだってルーちゃんが来たときめっちゃソワソワしてたじゃん!」
「自分だって可愛い物好きのくせにー。」
「ちょっと///!」
女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので盛り上がる女性チームだが、あまり長くなるとルーがおねむになるので早めに打ち合わせをしないといけない。
「あのー。話進めてもいいかな…。」
俺が切り出すと我に返った女性たちははしゃぎ過ぎに恥ずかしくなったのか顔を赤くして黙ってしまった。
「あー…。じゃあ討伐に関する話を進めるぜ。魔物の情報や出現場所は各リーダーからメンバーに伝わっているだろうから問題の戦闘に関しての話をさせてもらおう。」
「それなんですが、リザードの討伐は俺にやらせてもらえませんか?」
「シンキチさん一人でか!?」
「えぇ、なのでルーを含めて他の皆さんにはバックアップをお願いしたいのです。」
「ちょっと!相手はゴールドクラスでも手こずる相手なのよ!?」
「いや、リリアンナよ。このシンキチさんはやれるんじゃないかと思うぜ。」
「ラムダさん!」
「流石に信じられないわ…。」
ラムダさんは一度俺達の戦闘を見ているからなのか俺の提案にあっさりと乗ってくれた。だが“四枚の葉”の面々は流石に疑心暗鬼の様だ。
(彼女たちからすればポッと出の親子冒険者だし無理もないか。)
「どうしたら俺の技量を信じてもらえますかね?」
「そしたらリリアンナ!明日シンキチさんと模擬戦をしてみればいい。そしたらこの人がただの大口たたきじゃない事はわかるさ。」
「そうね。仮にも命を預ける者同士ですし、お互いの技量は知っておいた方がいいわ。」
といった感じで“四枚の葉”との模擬戦をして実力を披露することになった。
初執筆作品です。
四、五日ペースで更新できるように頑張ってます。
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皆さんの暇つぶしになるように頑張って書きます。
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