第012話「派遣勇者とルーの新武器」
第一章【レグナ王国編】
第012話「派遣勇者とルーの新武器」
新設計図の製作から数日、アルメイから必要な作成費用の算出が終わったので費用を預けた。完全オーダーの武器制作なので高額になる予想だったが、アルメイでは作れない銃身の部分以外は殆どが素材代で済む形となった。タダ働きの様で申し訳なくアルメイにも謝礼を渡そうともしたのだが、
「アタシのワガママに付き合ってくれてるのに謝礼なんか貰えない!」の一点張りなので何かしら別の形で返していくことにした。
作成には一週間ほど掛かる予想だったので、それまで俺とルーはおとなしくギルドの依頼をこなし続ける。その数日間は町の手前で出会った冒険者チームの“五月雨”が護衛の任務を終えギルドに戻ってきていて彼らがこの町の数少ないシルバーランクチームであることが分かったり、俺達が数日でシルバーランクに昇格した事に驚かれたり、彼らに護衛されていたバリーズさんのお店で格安で道具や地図を購入させてもらったりしたが、特別詳細を語るようなこともないので割愛する。
とはいえそんな出来事が起こる間にあっという間に期間が過ぎ、ついにアルメイが武器を持ってきた。
「これが出来上がった新しい武器だよ。とはいえ弾に魔力が込められてないから使えないんだけどね。」
「アルメイありがとう。弾の魔力充填はこれからやるから大丈夫だよ。」
「今、やるの?見てもいい?」
「構わないよ。ルー、ルーにも出来るようになってもらいたいから見ててね。」
「んー。」
俺はアルメイが持ち込んだ弾を一つ握り、弾に魔力を充填する。弾を握った拳が放出される魔力でボヤっと光る。
「「おぉぉ…。」」
アルメイとルーから声が上がる。
「はい、一個終わり。」
充填する魔力は多くないのでその後も淡々とこなしていく。アルメイが用意した三十個の弾丸の魔力充填はあっという間に終わった。
「次からはルーにも教えるからね。」
「わかった。むずかしい?」
「ルーはもう精霊魔法を普通に使えるから難しくはないはずだよ。」
「あ、あの!」
作業をじっと見ていたアルメイがおもむろに口を開く。
「これ、アタシにも出来ないかな!?」
「アルメイは魔法使えるかい?」
「使えない…。」
「なら習得には時間が掛かるかもしれないね…。」
「そっか…。」
異世界の人々は皆少なからず魔力を持っている。しかし魔法使いは生まれつき保持魔力が多かったり魔法の才能を持っている人がなる。才能に乏しい人でも魔法使いや魔法を生活に役立てたりもできるが、修練に時間が掛かってしまうため各々が魔法以外の才に時間を割くようになるのだ。
「時間は掛かるかもしれないけど訓練すれば出来るようになると思うよ。」
「―――っ!そっかそっか!」
「アルメイ、この弾もう少し作れないかな?実戦で使うには事前に練習しなきゃいけないからもう少し数がほしいんだけど。」
「わかった!ただアタシも練習も含めて使われるところは見てみたいんだけど。」
「練習するときはアルメイにも同伴してもらうよ。改良が必要な場合は君がいた方がいいからね。」
「じゃあアタシは弾を作るから、練習する日が決まったら声を掛けてほしいな!」
「了解。」
そう言ってアルメイは帰っていった。彼女の事だから数日で大量の弾を作って持ってくるに違いない。
次の日宿を出ると、外でアルメイが待っていた。
「シンキチさん!ルーちゃん!弾作ってきたよ!」
抱えた袋には大量の弾が入っている。昨日俺が渡した弾作成分の費用ですぐに材料を買って作ったそうだ。
「おぉ…。相変わらず仕事が早いね。今日はこのままギルドで依頼を受けるつもりだったけど、折角アルメイが弾を用意してくれたから、町はずれまで行って武器の動作確認と練習しようか。」
「やった!ありがとシンキチさん!」
町はずれにやってきた俺達は、周囲に人がいないことを確認して武器の動作確認を始める。
「まずは的を作らなきゃな。〈クリエイトクレイ〉」
俺は土でできた的を魔法で数個作成する。
「とりあえず俺が動作確認するからね。大丈夫そうならルー達にも使ってもらうから。」
アルメイや鍛冶屋のお爺さんの腕に疑念があるわけではないが、小規模なりに顔の至近距離で魔法が発動するこの銃が安全に使用できることを確認できないと女の子二人に使わせることは出来ない。
(仮に銃が暴発しても俺なら肉体強化のスキルで怪我を負わずに済むだろうしね。)
銃身内に弾を込めて的へ狙いを定める。
緊張しながら引き金を引くと銃は「パンッ」という破裂音と共に比較的静かに弾を打ち出した。
(火薬じゃないからほとんど音が出ない…。)
弾は何とか的には当たったようで、土塊には穴が開いている。
「やった!成功だよ!!」
喜ぶアルメイと一緒に的を見に行く。土の的には穴が開いており貫通している。威力も十分ありそうだ。今回は30メートルくらい先に的を用意したのでこのくらいの距離なら十分武器としては使えるだろう。
「動作も威力も問題なさそうだね。これだけ離れた所の土の的を貫通するなら十分かな。」
「すごいよ!これなら武器として合格かな!?」
「大丈夫なんじゃないかな。」
「やったー!」
(なにより音が静かなのはいい。火薬の代わりに魔法を代用しているから音はそれほど大きくない上、反動も思っていたより弱いから遠距離武器としては十分合格点なんじゃないだろうか。)
俺は前世、現実世界で火薬式の銃を海外旅行先で一度だけ撃った事がある。あのときは音と反動が想像よりも大きくて驚いたものだ。それに比べるとこの魔法銃は初心者向けといった感じで非常に良い。
「それじゃあ、ルーとアルメイにも撃ってもらおうかな。」
「やるー!」
俺とアルメイの銃の話には全く食いついていなかったルーも実際に使われている場面を見て興味を持ったようだ。
俺はルーに、弾の込め方や構え、狙い方などをレクチャーする。
「狙いが定まったら引き金を引くんだよ。」
「ん。」
パンっ!という音と共に発砲したが、ルーは尻餅をついてしまう。
反動が来るのを説明し忘れていた。
「おしりいたい…。」
「ごめんごめん。打つと今みたいに反動が来るから負けないようにね。」
「もういっかいうっていい?」
「いいよ。今のは的から外れちゃったみたいだしね。」
二回目のルーの射撃は反動にも負けずしっかり打ちきれた。
ただ的の下の方に当たっているので引き金を引くときに銃身が下に向いているのだろう。この辺は練習あるのみだ。
その後アルメイも試射したのだが、これがまた筋が良い。俺なんかよりもずっと狙いが定まっている。
それを見たルーも悔しいのか練習に精が出ているようだ。
午前中は弾が無くなるまで二人の練習に付き合うことになったが、二人とも打つのが楽しそうで良かった。
「俺達はこのあと午後から冒険者の依頼を受けてくるよ。また弾の作成をお願いしといていいかな?」
「任せてよ!いっぱい作るね!」
弾作成代金を持ったアルメイと別れてギルドへ行く。ルーには魔法銃を持たせてあるので今日は出来れば実戦で銃を使わせてみたい。
その日の依頼はシルバーの中でも比較的難易度の低い討伐依頼を受けてルーの狙撃訓練にしたのだが、子供は吸収が早いのか、ルーに才能があるのかあっという間に実戦でも使えるようになってしまった。
(子供と言っても実年齢は俺より年上だし、今回は素早すぎない魔物討伐を選んだわけだけど。まぁそれでも動く魔物を狙って当てられるようになっているからもうルーのサブウエポンはこれで決まりかな。)
依頼をこなして夕方ギルドへ報告しに帰るとギルドの受付には珍しくギルド長のログナントがいる。
「お久しぶりですね。シンキチさん。」
「えぇ。ログナントさんがこのフロアにいるのは珍しいですね。」
「たまにはコチラに顔を出さないとと思いましてね。シンキチさん達がシルバーの依頼を大分消化してくれているおかげでギルドも助かっていますよ。」
そんな他愛のない会話をしているとギルドに勢いよく入ってきた冒険者が息を切らしながらギルド長のもとへと走ってくる。
「ハァハァ…。ギルド長っ!大変だ!ミラーリザードが出た!」
そのセリフを聞いてギルド内の人達がざわめく。ログナントの表情も真剣な顔つきだ。
「それは確かなのですね?」
「間違いない。俺達も何とか逃げ切って帰ってきたんだ…。」
「出現場所は?」
「王都方面の森の中の洞窟だ。依頼の鉱石を取りに行ったら住処だったようなんだ…。」
「そうですか…。ありがとうございます。あとはギルド側で考えますので貴方は休んでください。」
「シンキチさん、これから職員で会議をしますのでこれにて失礼しますね。」
そういってログナントは奥へ入っていった。
俺達も依頼達成の報酬を貰い宿へ帰ることにした。
次の日宿の食堂で朝食を取っていると、ギルドの受付嬢のアマンダさんが尋ねてきた。
「シンキチさん、すいませんが朝食を済ませたらギルドの方へ御越し頂けますか?」
(どう考えても昨日のミラーリザードの件だろうな。)
「わかりました。朝食を食べたら伺いますね。」
それを聞いてギルドへ戻るアマンダさんの後姿を見ながらこれから起こるであろう出来事に頭を巡らせてルーとパンをほおばるのだった。
初執筆作品です。
四、五日ペースで更新を予定しております。
最近閲覧が増えてきたので引き続き頑張ります。
読んでいただいている方ありがとうございます。




