第011話「派遣勇者と発明家」
第一章【レグナ王国編】
第011話「派遣勇者と発明家」
武器屋から飛び出してきた少女をルーと二人で追いかけると、少女は公園のような広場の片隅のベンチに俯いて座っていた。
俺達は少女に歩み寄り声を掛ける。
「大丈夫かい?」
少女は知らない男に声を掛けられ一瞬ビクッと肩を震わせたが、隣にルーがいることでそれほど警戒もされていないようだ。
(こういう時ルーがいると本当に助かるな。)
「アンタ達はウチの横にいた…。」
「俺はシンキチ、こっちは娘のルー。冒険者をやりながら旅してるんだ。」
「なんかかなしい?だいじょうぶ?」
「俺もルーも君のことが心配になってね。追いかけてきてしまったんだ。嫌でなければ何か力になれないかと思ってね。」
「そっか…。アタシはアルメイ。親父とちょっと喧嘩しちゃってね…。」
「ルーもシンキチとけんかするよ。」
(まぁ、主にルーの我儘が原因なんだけどね…。)
「喧嘩の理由は話せる内容なのかい?」
「大したことじゃないんだけどね。アタシはあの武器屋の娘なんだけど、アタシが考えた武器を武器職人の親父に店で作って売ってみたらどうかって話をまったく取り合ってくれなくてね。」
「へぇ…。それは武器になにか問題があったとか?」
「親父は売れない武器は作れないって言うんだ。」
「ちなみにどんな武器なんだい?アイデアを盗んだりはしないから差支えなければ聞かせてくれないかい?」
アルメイは少し考えてアイデアを話してくれた。
「まず鉄の筒の中に鉛の弾を入れる。そのあとその筒の中で〈破裂〉の魔法を発動させること事で弾を弾き出すんだ。口で説明してもわからないかな…。」
(もしかしてこれは銃なのか?)
「詳しくは理解できてないかもだけど、要は鉛の塊を魔法で弾き飛ばして相手に当てる武器ってことであってるのかな?」
「まぁ、そうだね。」
「俺は画期的だと思うけど、お父さんはなぜ売れないって言ってるのかは聞いたのかい?」
「親父は…。」
渋い顔でアルメイは父親のダメ出しを解説してくれた。
①魔法を込めた武器ならばロッド系の方がダメージが大きい事。
②アルメイの設計では連射に時間が掛かり、連射力は弓矢以下である事。
③当てるのに練習が必要で、メジャーな弓矢とは違い敬遠されるだろうという事。
④威力、連射力、扱い易さ等の項目で既存の武器を超えられず、商品アピールがしにくい事。
(たしかに魔法のあるこの異世界では魔法を打ち出すロッド系の武器は玉を持ち歩かなくて済むし威力も高めだから銃の需要は厳しいかもしれないな。)
「たしかにお父さんの言い分も良く分かるね。魔物討伐をやってる冒険者目線でも威力や連射力の乏しい遠距離武器だとなかなか買おうとは思えないかもしれないしね。」
「でもロッドと弓矢の中間くらいの武器だからそれなりに使えると思うんだ!」
(たしかに現状で聞く限りだと「魔法版火縄銃」に近い仕組みみたいだから使い勝手は悪そうだけど、近代銃に近い構造となればルーのサブウエポンになるかもしれないな。)
「アルメイ、これは俺からの提案なんだけど。アルメイの武器を一つためしに作ることは出来ないかい?」
「え?」
「アルメイの考えた武器を実際に使ってみてその中で改良していけばより戦闘に利用しやすい形になっていくと思うんだよ。その武器はお父さんしか作れない、アルメイには作れないものなのかい?」
「いや…。鉄の筒の部分以外ならアタシにも作れるよ!筒は小さいころから仲良くしてる鍛冶屋の爺ちゃんなら話せば作ってくれると思う…。」
「わかった。なら材料費は俺が持つから作ってみないかい?」
「そんな!会ったばかりの人にそんなの悪いよ!」
「実際俺達が使ってみる物だから費用はこっちが出すよ。ただ設計図を見せてくれるかな?使う以上は少しだけ仕組みに口出しさせてほしいんだ。」
「…。」
「わかった。家から設計図持ってくるよ!」
「そしたらひまわり亭に来てくれないか?俺とルーはそこに宿をとってるんだ。」
「うん。すぐ行くね!」
「またねー!」
俺達は先に宿でアルメイを待つことにした。
「それで、これがアタシの考えた武器の設計図だよ。」
そう言って机に広げた設計図には細部は違うもののやはり火縄銃のような武器が描かれている。
「アルメイ。ちなみに弾の補充はどうするんだい?」
「ここが折れるようになっているからここから弾を入れる感じかな。」
(この辺はダブルバレルショットガンと同じような構造なんだな。)
「筒の中で魔法を発動するのはどういう仕組みなんだ?」
「この弾の入る接地面に破裂の魔法陣を刻印するんだ。これだけだと魔法は発動しないからこの弾き金に魔力を蓄えた魔石を取り付けて魔法陣にぶつければ〈破裂〉が起こって弾が飛ぶって感じだね。」
「ほー…。じゃあ弾き金に付いてる魔石が魔力切れを起こしたらどうするんだ?」
「あー…。やっぱそう思うよね…。」
「もしかして…。」
「魔法で魔力を補充しないといけないかな…。」
「魔法を使えないと弾はあるのに打てない状況が出てくるってのはマズイね。」
これは欠陥と言っていい。
この武器は魔石に魔力を込められる者、つまり魔法使いしか上手く扱えない事になる。しかも魔法が使えるのならこの銃ではなく威力や弾の補充の必要のないロッドを購入するだろう。
「あはは…。やっぱこの武器ダメかー。」
目に見えてガッカリするアルメイに助け船を出すことにする。
「でもこの問題は発想を変えれば解決するんじゃないかな?」
「えっ!?」
「弾の方に魔力を貯めておけばいいんじゃないかな?そうすれば弾はあるのに打てないという問題は解決できるよ。」
「でも使い捨ての弾に魔石を取り付けるのは無理だよ!魔石はそれなりに高いですから…。」
「それなんだけど、一発を発射する分に必要な魔力はとても少なくていいから何も魔石である必要はないよ。これくらいなら魔砂でも十分なはずだ。」
魔砂とは魔石を砕いて砂状になったものだ。魔石を加工する際に必ず出るものだが、その使い道はほとんどないに等しい。
(前の世界でも魔砂は掃除用のスライムのエサとかになっていたくらい使い道が無かったしな。)
「魔砂って魔力込められるの!?」
「おいおい、元は魔石なんだから大丈夫だよ。ただ本当に少ししか込められないから使い道がなくてゴミみたいな扱いになってるだけさ。」
「そうなんだ!それならここをこうして…。」
アルメイはこれを切っ掛けにアイデアが浮かんだのか設計図に直接書き加えていく。
「シンキチさん!ありがとう!なんだか上手くいきそうな気がしてきたよ!」
「それは良かった。作る前にまた見せてくれるかな?」
「うん!書き直した設計図が出来たらまた見せに来るから!」
「あぁ。俺達はまだしばらくこの宿に泊まっているから夕方位に来てくれればいると思うよ。」
そういってアルメイは帰っていった。あの様子なら数日中に新しい設計図を持ってくるに違いない。
俺とルーはそれまで毎日シルバーランクの依頼を消化しながら銃の制作資金を用意しておいてあげればいい。
「さっ!明日も依頼が待ってるし、ご飯でも食べてゆっくり休もうか。」
「おなかへったー。」
「シンキチさん!新しい設計図見てくれませんか!?」
次の日の夕方アルメイは宿にやってくるなり設計図を出してくる。
「昨日の今日でもう書いてきたのかい!?」
「あはは…。創作意欲が湧いてしまって…。」
テヘへとはにかむアルメイの表情は年相応の女の子だ。
早速新しい設計図を見てみる。基本構造には大きく手を加えず、弾の方に魔力を込めた魔砂と一部分の欠けたの破裂の魔法陣、弾き金に欠けた部分の魔法陣が仕込んであり引き金を引くと弾き金が弾にぶつかり魔法陣が完成、魔砂の魔力を使って魔法が発動し弾を打ち出すという機構に変化していた。
「これなら、使えるかもしれないね。」
「そっか!ただ問題が一つありまして…。」
「ん?」
「これだと弾に一つ一つ魔力を込めないといけないので生産に向いてないのかなって…。ウチは普通の武器屋だから魔法を使って弾に魔力を込める作業が出来る人間はいないんです。私も設計図ではこういう形で設計はしましたけど武器本体と弾の方は作成出来ても弾に魔力を込める作業が出来なくて…。」
この世界には作成する物質が揃っていないのか、はたまたその知識が誕生していないのか火薬が存在していない。マッチも大砲もなく火属性や破裂の魔法で補われていた。
(現状代わりの物がある以上、火薬を生み出すことは躊躇われるな。まぁ材料は知っていても硝石なんかは何処で採れるかとは知らないし…。)
「弾に魔力を込めるのは俺がやろう。もともと俺達が使わせてもらうものだから試作品の弾の作成は手伝わせてもらうよ。」
「いいの!?」
「こうみえても魔法は得意なんだ。そうしたらこの設計図で作成してみようよ。アルメイは作成にどのくらいの費用と期間が必要かわかったら教えてくれるかな?」
「了解!!やったー!!」
「わーい。」
両手を上げて喜ぶアルメイに釣られて一緒にルーが喜ぶが、ルーの方はなぜアルメイが喜んでいるのかはよく分かっていない。
(ルーの武器制作の話なんだよ…?)
武器作成はアルメイに任せて、もうしばらくは依頼をこなし続ける日々が続くかな?
初執筆作品です。
一応は四、五日ペースで更新予定です。
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