第010話「派遣勇者と害虫駆除」
第一章【レグナ王国編】
第010話「派遣勇者と害虫駆除」
ギルド長権限でシルバーへランクアップした次の日。
俺とルーは早速冒険者ギルドで新しくシルバーランクの依頼を受けた。
今回の依頼は俺達が最初におばけニワトリやワイルドボアを狩った畑の近くの森を入っていった所に、大型のアリの魔物が巣をつくり大量に繁殖しているとのことでその駆除が目標だ。
本来この手の魔物は森の掃除をする魔物なのであまり駆除の依頼は出ないようだが、今回は巣自体が町の近くでしかも結構な大きさの巣になっているということで駆除することになったそうだ。
「さて、依頼書によるとそろそろ巣の場所が見えてくるはずだな。」
森を進んでいくとそこには一軒家程の大きな土の山が見えてくる。周りには中型犬程の大きさのアリがうろうろしている。
(うわぁ…。)
想定していたサイズ感や数を超えていた。これだけ大きなコロニーとなると、巣の中から出てくる数も相当なものになるのだろう。
(ルーを守りながら駆除するとなると骨が折れそうだなぁ…。)
とりあえず巣から離れた所でルーと戦闘の打ち合わせをする。
「今回は魔物の数がどれだけ多いかわからないし、ルーの安全をしっかり確保しながらやるからね。まずは俺が防御陣を張ってルーはその中から魔法で攻撃していこう。陣の中には魔物は入ってこれないから俺も集中して戦いやすいしね。」
「おっけー。」
「じゃあ魔法陣を展開するからすぐに入ってね。」
俺は巣から少し離れているところに魔法で防御陣を構築し、ルーがその中に入ったのを確認したので一気に巣へ近づく。
一番手前のアリを倒すと他のアリたちが騒ぎ出した。防御陣に守られているがルーの方へアリが向かって敵が分散するのも面倒なので全てこちらに挑発スキルで引き付けることにする。
「こっちだ!虫ケラ!!〈挑発〉!」
俺を外敵とみなしたアリ達が顎をガチガチと鳴らし向かってくる。
(それじゃ、害虫駆除の時間だ!)
このアリの魔物はそれほど強くはない。ただ今回この魔物討伐がシルバーランクの依頼になっているのは数が非常に多く、巣の殲滅という事が討伐の難易度を高めている。その証拠に先ほどから単純作業のようにアリを切り飛ばしているが、魔物は巣から無尽蔵に湧いて出てきている。
「ルー!魔力はまだ大丈夫かい!?」
「まだいけるー!」
ルーもシルフを召喚してアリと戦わせているが、こうも多いと流石に先に魔力が切れるかもしれない。
(どうするかなぁ…。)
なんとか一気にケリをつけたいので巣の入り口に向けて連続で炎の魔法を放つ。
入り口にいたアリが火だるまになり、その炎は瞬く間に隣のアリ、また隣のアリへと燃え移り巣の中のまだ出てきていないアリにも連鎖していく。
巣の中のアリにどんどん引火しているのか次第に巣の入り口から煙が上がってくきた。
(これで倒しきれると楽なんだけど…。)
アリも出てこなくなり、煙の量が増えてきたので入り口の穴を土魔法〈クリエイトクレイ〉で塞ぐ。これで巣の中は奥まで煙で充満するはずだ。魔物も呼吸をしているのでこれで大部分は弱ってしまうだろう。
巣の周りの残党を狩っていると崩した入り口が動き始める。どうやら生き残りが出てくるようだ。
(さて、残りはどれくらいかな?)
塞がれた入り口を突き破って出てきたのは、他のアリの十倍程大きなコロニーの女王アリだった。
「げっ!でかっ!」
「おっきー!」
ガチガチと顎を鳴らす象を超える大きさの巨大なアリは煙にまかれた所為か動きがずいぶんと鈍い。
「今のうちにサクッと倒させてもらう!」
一気に女王アリとの距離を詰め、頭と胴体の間の細くなっている部分を一刀する。あっけなく頭を落とされた女王アリの身体が地面へ落ちた。
その後も巣穴から若干のアリが出てきたが、先ほどの炎と煙で大多数が死んだようで残党狩りに時間はそれほど掛からなかった。
「ルー、お疲れ様。今日も頑張ったね。」
「ぶい!」
ルーもこの数日間の魔物討伐でずいぶんと戦闘慣れしてきた。今回は防御陣内という安全地帯で魔法を行使していたがこれまでは相手と距離を取りつつ、集中力のいる精霊魔法をしっかりとコントロールできている。
レベルも上がってきているようだし、一緒に戦っていて心配になる部分はずいぶんと減ってきた。
「じゃ、女王アリの頭だけ回収してギルドに一度帰ろうか。」
「あら、シンキチさんもう終わったんですか?」
「はい。巣のアリもコロニーの女王アリも退治したのであの辺りはしばらく大丈夫でしょう。」
「討伐証明は倉庫に持って行って置いてください。」
「わかりました。報酬はまた明日依頼を受けるときにいただきますね。」
「準備しときますね。お疲れ様でした!」
ギルドを出た俺たちは町の食堂で昼食を食べた。そこで俺はルーに提案したかったことを切り出してみる。
「ルーは魔法以外にも戦える力があったほうがいいかもね。」
「?」
「たとえばダグやリムは俺と同じように剣を鍛えていたでしょ?流石にルーが剣を振り回すのは難しいけど弓矢なら小型のものなら使えると思うんだ。」
「ゆみはすこしダグにおしえてもらったことあるよ。」
「そっか!ならこのあと武器屋に見に行ってみようか。」
「まほうだけじゃダメ?」
「基本は魔法でも大丈夫だけど、今後魔法が効きにくい魔物や戦闘中に魔力が切れてしまったら戦えなくなっちゃうからね。そういう時のために練習しておいた方がいいと思うんだ。」
「わかった。」
こうして午後は武器屋へ向かうことにした。
「いらっしゃい!」
武器屋へ入ると武器屋には少し似合わないさわやかなお姉さんが迎えてくれた。
「すいません。子供用か小型の弓矢は置いてませんか?」
「小型の弓?もしかして横の子が使うようなサイズってことかしら?」
「そうですね。ありますか?」
お姉さんは弓矢がまとめて飾ってあるコーナーへ案内してくれた。
「んー弓矢はこの辺かしらね。盗賊職やハンターが使う小型の弓はあるけど、どれも大人用なのよ。小型で威力もそれなりを求めるとどうしても弓を固く作らないといけないからとてもそこのお嬢さんが引ける重さじゃないわね…。」
「一応、この子に触らせてもいいですか??」
試しに小型の弓をルーに引かせたが「んにーっ!!」と引っ張るルーを余所に弦はほとんど動かない。しかし柔らかめの弓はサイズ大きくなってしまいルーが一人で持ち運ぶには不便すぎた。
「ありがとうございました。ちょっと考え直してみますね。」
「他の子供用武器や小型のの短剣はあるからそっちにするときはまた来てね!」
武器屋を出た俺たちはお店の横の路地にあるベンチで一休みしつつルーの武器について話し合うことにした。
「ルーはアリアドールにいる時少し弓矢の練習したって言ってたけど、どんなやつで練習したんだい?」
「んー、こんくらいのやつ。」
そう言ってルーは両手を広げた。その大きさは大体一メートルほどだ。
「その弓矢は弦を引けた?」
「うん。ひっぱれた。」
「それはどのくらいまで矢が飛んだか覚えてるかい?」
「うーん。ここから…。」
そういって路地の奥へと走っていく。
「ここくらい!」
(だいたい四メートルくらいか。射程がそれほど長くないから子供の練習用かなんかだったんだな。)
「ありがと!戻っておいで!」
戻ってきたルーをベンチに座らせて考える。
(ルーの腕力だと短く殺傷能力のある弓は引けないな。だが大きいサイズになればそれはそれで通常時の戦闘では邪魔になるだろうし、どうしたものかな…。)
ベンチに二人座って頭を悩ませていると先ほどの武器屋の中から声が聞こえてくる。お店の方ではなく店の裏手からの様だ。
「だからお前のお遊び工作に構ってる暇はないんだよ!」
「お遊びじゃないって!これが実現すれば武器の幅は広がるじゃん!」
「ウチは武器屋だ!売れねぇ武器作ってどうすんだ!」
「うぅー!!この分からず屋!」
その直後武器屋の裏口から一人の少女が飛び出してくる。その目は潤んでいるが泣いてはいない。
「ふー…!」
少女は大きく息を吐く。すると緊張の糸でもきれたのかポロポロと涙が落ちてきていた。
(あらあら…。)
少女は俺達二人の視線に気づくと泣いているのが気まずかったのか路地を俺達と反対方向へ走っていった。
「シンキチ?」
「ん?」
「あのこ、ないてたよ?」
「ルーは心配かい?」
「うん。」
「じゃあ、声を掛けてみようか。」
二人で少女のあとを追いかけることにした。
初執筆作品です。
一応は四、五日ペースで更新予定です。
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