第009話「派遣勇者の初仕事」
第一章【レグナ王国編】
第009話「派遣勇者の初仕事」
依頼書に記載された町はずれの畑地帯を訪れた。
今回の依頼は収穫を控えた畑地帯を荒らす鳥獣系の魔物の討伐だ。
(この辺に出るおばけニワトリとワイルドボアを十体討伐って依頼だったな。)
おばけニワトリもワイルドボアも大きく気性の荒いニワトリとイノシシの魔物だ。どちらも草食性で危険な魔物という程ではないのだが、困った事にどちらも群れで行動することが多く畑や森の実りを食べ尽くしてしまうという困った魔物だ。
「これから俺は対象の魔物が棲んでいるだろう林に向かっておびき寄せる魔法と攻撃を俺に集中させるスキルを使うけど、ルーは俺の挑発に乗らなかった魔物を精霊魔法で狩っていってくれるかな?」
「わかった。」
「よし!じゃあ行くよ!〈誘魔香〉」
林の入り口で魔物をおびき寄せる魔法を放つ。少しするとマップにはこちらへ向かってくる多くの魔物が反応してきた。
林の入り口から少し開けた所に移動した俺は離れた所で準備するルーに合図を送る。
「来た!」
林から飛び出してきたのは今回の標的のおばけニワトリとワイルドボアが出てくる。マップではこの後ろにも魔法で引き寄せられた魔物が向かってきているようだ。
「こっちだ!〈挑発〉!」
挑発のスキルで魔物の大半をこちらに向かわせるが、スキル範囲外の数匹の魔物はそのまま畑の方へと走っていく。
「ルー!そっち行った奴は頼むよ!」
「うん!〈シルフ〉!」
俺は向かってくる魔物を切り倒しながらルーに目をやる。シルバーウルフよりも格下の魔物なので順調に倒して言っているのが見える。
その後も、標的ではないがおびき寄せられたグリーンワームなども退治する。
「ふー…。こんなもんかな。ルーもお疲れ様。」
「頑張った。」
終わってみればおばけニワトリが二十五羽、ワイルドボアが十八体、グリーンワーム七匹でそこそこの収穫だ。
「よし、魔法鞄に入れてギルドに戻るか。」
今回この依頼を受けた理由はいくつかある。
一つは依頼場所が町から近いが人が少ない場所であること。これはルーの身元がなるべくバレないようにするためだ。
もう一つはおばけニワトリとワイルドボアが食用になる魔物だからだ。素材として比較的高値で取引されるのはレベルが高く強い魔物が多い。しかし食用の魔物に関してはそこそこ需要があるため素材として売れる部位が多いのだ。
俺とルーは冒険者ギルドで教えてもらったグリーンワームの討伐部位を切り取り、おばけニワトリとワイルドボアは血抜きだけして魔法鞄に収納した。
ギルドへの帰り道、町の洋服店に寄り、銅貨三枚で毛糸の帽子を購入した。
「この帽子はルーへのプレゼントだよ。」
「シンキチありがと。」
「これで耳も隠せるからフードを被らなくても良くなるしね。」
「あったかくて、かわいい。」
これで、当面は何とかなるだろう。
(ルーがエルフだとバレても安全面で問題なくなる方法があればいいけどなぁ。)
冒険者ギルドへ戻ってきた俺たちは受付へ依頼達成の報告へ行く。
「おかえりなさい。もう終わったんですか?」
「はい、依頼が終了したので報告に来ました。」
「わかりました。では討伐数等の確認をしますので、倉庫へご案内しますね。」
討伐した魔物の数が多かったり、サイズが大きい場合は倉庫で確認してもらうようだ。受付嬢についていき、ギルドハウスの隣の倉庫へやってきた。
「ドモンさーん!」
受付嬢が倉庫で声を掛けると奥からスキンヘッドに鉢巻、前掛けを掛けたイカつめのオジサンが出てくる。
「おっす。アマンダ。」
「討伐の確認をお願いしたいの。」
「おうよ。兄ちゃん、ここに討伐した魔物を出してもらえるかい?」
俺はルーと倒して魔法鞄に入れてきたおばけニワトリとワイルドボア、グリーンワームの討伐部位を出す。
「おいおい!すげぇ量だな!」
「シンキチさん!その魔法鞄はどこで買ったのですか!?」
「この魔法鞄、そんなに珍しいですか?」
「魔法鞄そのものは少し高級品ですけどたくさん出回っていますよ!でもシンキチさんの物のように荷車一、二台分も入る魔法鞄なんて見たことないですよ!」
「そうだぜ兄ちゃん、魔法鞄はその内側に空間魔法を留めることで内容量を上げてるからな。空間がでかいってことはそれだけ強力な空間魔法を使えて、鞄に仕込む技術もなきゃいけねぇ。そんな魔法や技術を持ってるやつは鞄職人なんかしないで宮廷魔法師や国のお抱え技術者とかになるからなぁ。」
「これは旅の途中のダンジョンで手に入れたので、非売品なんですよ。」
「まぁ、そうだろうな。」
「そうですよね。このレベルの魔法鞄が販売されていれば噂になりますもんね。」
「商人たちがこぞって買い求めるだろうよ。」
(実際前の世界のダンジョンボスがドロップした鞄だから嘘は言ってないしね。)
その後さらに討伐した魔物数にも驚かれたが、魔法で誘い込んだ結果たくさん討伐できたと説明して報奨金を貰って今日は宿へ帰る。
「おや、今日も泊まってくれるのかい?」
ひまわり亭の女将さんは今日はそんなに忙しくないのか昨日よりやんわりと迎えてくれる。
「えぇ、何日か泊まらせてもらいたいと思いますが先払いした方がいいですか?」
「ありがたいねぇ、こっちとしては先払いしてくれると助かるよ。何泊する予定なんだい?」
「とりあえず四泊分払っておきますね。その後また追加するかもしれないですけど。」
「あいよ。」
今回くらいの依頼と報酬なら十分稼げる上にルーのレベル上げにも最適なことが分かったので数日でしっかり稼ぎつつ、冒険者ランクをカッパ―まで上げておこうと思う。
夕飯までの時間は部屋でルーと今後の予定を話し合い、ニット帽でルーの耳が隠せるようになったので今日から夕飯は宿の食堂で食べることにした。
「シンキチさん、お疲れ様でした。無事カッパ―ランクへの昇格になります。」
「ありがとうございます。」
初仕事から二日で三回目の上位ランク依頼を達成し、俺は無事にカッパ―ランクへ昇格した。
「それでシンキチさんにウチのギルド長がお会いしたいそうなんですけど、このあとお時間大丈夫ですか?」
「えぇ、かまいませんが。」
そう答えると受付嬢は俺たちを応接室らしき部屋へ案内する。その後少し時間をおいてギルド長が入ってきた。
「はじめまして。私がここのギルド長のログナントです。」
「私はシンキチです。こちらは娘のルーです。」
「よく来てくれました。まぁ、おかけになってください。」
そう促されて、俺とルーは応接のソファーに座りなおす。
「今回貴方をお呼びしたのは貴方の冒険者ランクの事でお話ししたいことがございまして。」
(カッパ―になるのが早過ぎるとかそういうやつだろうか。)
「聞くところによるとシンキチさん、貴方は大変お強いとか。」
(んん??)
俺が驚いているとログナントは話を続ける。
「別に問題があるとか貴方の事を根掘り葉掘り調べるつもりとかそういう事ではないのですよ。たまたま貴方が討伐系の依頼をこなしているのを他の冒険者が目撃してまして、非常に手練れの動きで魔物を倒していたとお聞きしました。それで受付のアマンダや倉庫番のドモンに聞けば毎回依頼された数を大きく超える討伐数の魔物を持ち込んでいるとも聞きました。」
俺がどう答えるか迷っているとログナントは今回の本題を提案してきた。
「単刀直入に申し上げますと、シンキチさんにはシルバーランクの依頼を受けていただきたいのです。」
「シルバーランクですか…?」
「そうです。ウチとしても高ランクの冒険者は多い方が助かります。最近近くの森の中の様子が変わってきている様で強めの魔物が森や町の周辺に目撃されることが増えてきました。ですがオカコットをホームにしている冒険者はゴールドが一組、シルバーも三組しかいません。なかなか高ランクの依頼が消費できず困っているのです。」
「なるほど。でも私たちも旅人ですのでここをホームにする予定はないのですが…。」
「でもすぐに経つ予定でもないのであればシルバーになっていただいて少しでも高ランクの依頼をこなしていただけると助かります。町の方からも強い魔物討伐の依頼は出来るだけ早くこなす様にお達しがありまして。」
「私たちは今日カッパ―になったばかりなんですが、その辺はどうなるのでしょう?」
「実は昇格に関してはギルド長が承認した場合、ギルド長権限でシルバーランクまでは上げることが出来るのです。ただそれ以降のランク、たとえばゴールドに関しては通常の昇格試験同様、一定の依頼達成ののちゴールドランク依頼を三回連続達成で昇格となりますし、最高ランクのダイアモンドに関しては特殊でゴールドランク期間が三年以上でギルド長の推薦を貰った冒険者が王都の試験で合格するとなれます。ちなみにレグナ王国ではダイアモンドランクは四組しかいません。」
「ということはここでこの話を受ければ私は今日からシルバーランクという事ですね?」
「そうなります。シルバーの認識票は明日お渡しする形になりますが、今日からシルバーになれます。どうでしょう?シルバーランクになって依頼をこなしていただけませんか?」
(ルーのレベルもこの二日で結構上がってきてるし、俺がフォローすれば問題ないしな。なにより上のランクは報酬額が魅力的だ。これは受けるしかないな!)
「わかりました。急ぐ旅ではないのでしばらくシルバーの依頼をやっていきます。」
「ありがとうございます。それと娘さんも冒険者登録しませんか?貴方方を目撃した冒険者から聞きましたが娘さんも戦闘には参加されているのでしょう?冒険者登録に年齢制限はありませんし。シンキチさんと一緒にシルバーランクで登録しましょう。」
「えっ?いいんですか?」
「まぁ二人の実力をこの目で見ていませんが、ウチのお願いに付き合っていただけることですし、その辺りはサービスということで。」
そう笑顔で話すログナントに今回は甘えることにして、俺たちはシルバーランクへ一気に昇格した。
「できれば明日からでもシルバーの依頼よろしくお願いしますね。」
「頑張ります。」
「がんばるー。」
沢山依頼を消化してほしいみたいだし、明日からはガンガンこなして報酬をがっぽり稼ごうじゃないか!
初執筆作品です。
一応は四、五日ペースで更新予定です。
確認はしていますが誤字脱字等ありましたら気軽に教えてください。
評価点だけでも入れていただけると励みになります。




