「 私 」のやり直し
早速1ヶ月以上間が開きましたw
「ぃよっしゃー!レイドボスクリアー!」
薄暗い部屋の中、私はマウスを持ったまま跳ねて部屋の中で叫ぶ。
『おっつー』
『お疲れー。あーあ、またフレイにLA持っていかれたー!』
PCに繋いだスピーカーからは、一緒にプレイしていた友達の声が聞こえる。ちなみにフレイは私のハンドルネームだ。
「ふっふっふー、廃課金勢を舐めてもらっては困るのですよ〜」
『くっそがあああ!次は俺が持っていくからな!』
フレンド君はとても悔しそうに叫んでいる。とてもいい気分だ。
「頑張りたまえ若者よ〜」
『俺ら同い年だろw』
「むふふ〜、細かいことは気にしない方がいいのだよ〜」
そんな風に談笑し、勝利の余韻に浸っていると、手元に置いておいたスマホのアラームが鳴り出す。
スマホの画面には〈ラノベ発売日〉と表示されている。
「あ、やっば!急用思い出した!ゴメン、アイテム分配私の分もやっといて!」
『どうせラノベかなんかだろw忙しいやつだな〜まったく・・・共有ストレージに放り込んどくぞ〜』
「さんきゅー!」
リアの呆れた声を最後に、私は手早くメニューを操作してログアウトをし、タンスを漁り始める。
(髪は・・・そのままでいいや!服・・・ジャージでおっけ!顔・・・ああもう!んなことより初版特典!)
私は普段使わない運動能力をフルで使って準備を済ませて家を飛び出す。
15分後、いつも行ってる本屋でラス1の初版特典付きのラノベを手に入れた私は、鼻歌交じりで自宅へ帰っていた。
「はあーー、幸せ〜」
パッと見、不審がられる程のにやけ顔でラノベ《戦利品》に頬擦りする。
周りの目がかなり冷たいけど、今はそんなものどうでもいい。
早く家に帰って読もう、そんなウキウキ気分で信号を待っていた。
突如、全身に激痛が走る。
「ぇ・・・・・・?」
驚く程掠れた声で、私は声を発した。現状を理解するべく、周囲を見渡すと、周りの人はなにやら私の方を指さして戸惑っている。
(あぁ、眠い・・・そしてなんか寒い・・・今日の気温、何度だったっけ・・・?)
意識が途切れる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
周囲の寒さで、私は目を覚ます。
「あれ?ここどこ?私のラノベは?」
何も無い真っ暗な空間で目を覚ました私の第一声はそんなものだった。
「起きて第一声がソレって、相当ヤバくない?」
「正直自分でも引いてるよ・・・って・・・誰?」
気づいたら真横に、金髪の美少年が立っていた。
なんか頭に輪っかあるあたり、天使っぽいな。
「あのー、私、現実の美少年は目に毒だし耐性ないしで正直キツいんで別な人対応に当ててもらっていいすか?」
「初対面の人にかなり失礼だね?!」
現実の美少年とか引きこもりオタクの私に対しては有毒でしかない。本当に勘弁して欲しい。
「というか、あなたそもそも人じゃないと思うんだけど」
「間違ってないけど!間違ってないけど!傷つくの!心が!」
面白いな天使。
「えーと、説明していいかな?」
「どうぞ」
半泣きで言われたらどうぞとしか言えんだろ。
「まず簡潔に言うと、あなたは死にました」
まあ、知ってた。何にもない真っ暗な空間にいて、買ったはずのラノベが消えてることからすれば、多分死んだんだろう。
全身が若干痺れてるあたりから、車にでも突っ込まれたか。
「そーっすか」
「あまり驚かないんですね、珍しいです」
「まあ、人生何が起きるか分かりませんですしおすし」
まあ正確には、ラノベとかの転生ものの定番の展開だからっていうメタ事情は伏せておこう。
「話を続けますね。あなたには2つ選択肢があります。1つ目は、今の記憶を持ったまま転生することです。この場合、本人の望む才能を持っているよう転生することが出来ます。2つ目は──」
「転生で」
即答した。
「早いですね・・・・・・理由を聞いても?」
「単純に、やり直したいことありすぎるんで」
私が生きた17年と6ヶ月はろくなものじゃなかったと言えるだろう。
運動もできず、勉強もできず、誰かと話すのも苦手で、ゲームしかしなかったから友達も少なかった。
これらのことがあり、学校には小5以来行っていなかった。
そんなダメ人間がやり直す機会を貰えるんだ。これに乗らない手は無い。
「では、どんな世界に転生しますか?あなたが今まで生きてきた世界でも構いませんし、現世で言うところのファンタジー系の異世界なんてのも──」
「異世界でお願いします!」
異世界とかオタクなら1度は夢見るはずだ、そこに転生できるというのなら拒否する理由がない。
「分かりました。では、しばらく目を閉じていてください」
私は指示どうりに目を閉じる。
「異世界への転生で得られる才能はランダムになります。では、良い来世を」
その声と共に、意識が途絶える。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
意識が戻り、目を開けるとそこは巨大な門の前だった。
私が呆然と立ち尽くしていると、門番と思しき男に話しかけられる。
「そこの者、入国希望者か?」
「え?あ、は、はい」
思わず肯定してしまった。
「そうか、出身国を証明する物はあるか?」
「な、無いですけど・・・」
やべえ、開始早々詰みそうなんだが・・・明らかに不審人物だと思われてるだろ。あれ?てことはこのまま連行される?
そんな思考を巡らせていたが、
「それならここで身分証を発行していくといい。手続きをするからついてきなさい」
「あ、ありがとうございます・・・(ホッ)」
優しい人、というか国?街?で助かった。どうやらここでは身寄りのない者も歓迎してくれるようだ。
「君の過去を探る気は無いが、少なくともこの国、ロージェス・リィに居れば生活に不自由は無くなるはずだ」
「そ、そうですか」
どうやらここは、マジの異世界らしい。
ロージェス・リィとかいう国は少なくとも地球には無かったはずだ。
私は門番の人について行き、身分証を発行しに行く。
10分後。
手続きは驚く程に簡単なものだった。
名前と年齢を答えて、契約の儀式的なものをしたらあっさり渡された。(尚、異世界の文字なのか、なんて書いてあるかは読めない。)
だがその際、面倒臭い事を知らされた。
「この国では職を持たない18歳以下の人間は通常、学園に通わなければならない」
「え"?」
「編入試験は場所によっては軽いものもあるから、自分に合う場所を選ぶと良い。それと、君は初入国だったね。紹介状を書いてあげるから持って行きなさい。ある程度優遇はされるはずだよ」
「は、はい・・・ありがとうございます・・・(勉強嫌だアアア!!)」
私は半ば絶望しながら紹介状を受け取る。
まさか日本みたいなクソルールがこんな異世界にまで存在するとは...全くもって計算外だった。
「まあ、やり直すって決めたんだし、行ってみるか」
ここでやり直すと決めた以上、切り替えは大事だ。
転入生という立場を上手く利用できれば友達も作りやすくなるはずだ。しっかりしろ私。
私は門番さん達にお礼を言うと、門を通って国に入る。
私は、中の景色を見て、目を見開いた。
「おお・・・これぞ、異世界って感じね!」
立ち並ぶ家は木かレンガで出来ていて、大通りには馬車が行き交っている。そして道行く人は武器を持っていたり、耳の長い人もいる。the異世界って感じだ。
「とりあえず、学園ってのに行ってみようかな」
門番さん曰く、街の大通に出て真っ直ぐ進むと、列車の駅があるらしいので、そこで紹介状を見せれば学園に運賃タダで連れていってくれるらしいので、私は駅を目指す。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「そういやこの腕輪ってなんなんだろ」
電車に揺られながら、右腕にいつの間にか付けられていた腕輪について考える。
腕輪は、銀色の輪に、とても綺麗な青い宝石が一つ嵌め込まれているものだ。
少なくとも、こっちに来る前までは何もつけていなかったはずだし、誰かに付けられた記憶も無い。
あくまで予想だが、あの天使が言っていた『才能』に関するものだろうか。
私は試しに、腕輪の宝石に触れた。
直後、腕輪に関する知識が頭の中に流れ込んでくる。
『この腕輪は、自分専用の"武器"』
『この腕輪は、条件を満たすことでこの世界の魔法を全て使用することができる』
『この腕輪は、発動させたい魔法を思い浮かべ、魔法名を唱えるるだけで発動できる』
『この腕輪は、同等以上の道具以外では破壊されない』
『この腕輪は、どれだけ離れていても持ち主の手元に戻る』
『この腕輪の現在の所有者は宇良雅穂火』
急激に締め付けられるような激痛が頭に走る。
少しずつ痛みが引いていくと同時に、叩き込まれた知識が脳内を巡る。
「な、なんだったのよ、今の・・・」
理解が追いついていないのに追いついている、そんな不思議な感覚に困惑している私を他所に、突如、列車が急停止する。
私は急停止の勢いで後頭部を壁にぶつける。
「ぃっつー!なんなのよ!?」
私は窓を開け、列車の最前列の方を見て、驚愕した。
手足が異様に細く、背中にはボロボロの羽の生え、気味の悪い赤眼の化け物が、列車の車両一つをを握り潰していた。
「まさか、あれがこの世界のモンスター?」
恐怖しているにも関わらず、私は少なからず──いや、かなりワクワクしていた。
私は、窓から飛び出し、モンスターに向かって走って行く。
後方から呼び止める声が聞こえたが、そんなことお構い無しに走る。
モンスターから10mくらいの所まで行くと、私の接近に気づいたのか、モンスターは首をこちらに向け、左手を向ける。
すると、モンスターの左手から薄紫色の魔法陣が展開される。
私は嫌な予感がしたが、あえてモンスターに向かって走った。
何故だか知らないけど、なんでも出来そうな気がした。
私はモンスターにほぼゼロ距離まで近づくと、生前にやっていたゲームで愛用していたキャラをイメージし、モンスターに右手を向ける。
すると、目の前に薄く単語が浮かび上がる。
私は浮かび上がった単語を、唱える。
「─ファイア」
直後、私の掌から魔法陣が生成され、巨大な蒼い炎が噴射された。噴射された炎はモンスターを一瞬にして飲み込み、跡形も残さず消し飛ばした。
「これが、魔法・・・ふふっ」
他の乗客達が唖然としている中、私は自分の力に驚きと喜びを感じていた。
「この世界、面白い!!」
今回は脳筋の方の視点でした




