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氷血の皇帝は俺の料理を手放せない ~追放された料理人ですが、幼い日に救った少女が皇帝になっていて離してくれません~   作者: ジモンヌ
第5章 異端の料理人と、名前を失った聖女

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第76話 聖女の本当の役割

「中継者に近い」


 その言葉を、セレスティアは一晩置いた。


 翌朝、祈祷室へ入った時も、最初に祭壇へは向かわなかった。


 集まった治癒師たちを見る。


 イレーネ。


 若い治癒師が四人。


 地方から来た二人。


 ラウル。


 そして、少し離れたところにタクミたち。


「今日から、変えたいことがあります」


 聖女の声はよく通った。


「祈りを、私一人で受けません」


 ざわめきが起きる。


「治癒も、私一人で抱えません」


 グレゴリウスは壁際で聞いている。


 止めない。


「私は、祈りと皆さんを繋ぎます」


 セレスティアは一度息を吸った。


「できない時は、できないと言います」


 ラウルの喉が動いた。


「祈り前の断食も、今日でやめます」


「聖女様」


 古参の治癒師が思わず声を出す。


「感覚が鈍れば」


「鈍るかどうか、記録します」


 オルガが答えた。


「食べない方が良いという前提から測るな」


 セレスティアは頷く。


「食べた私で、試します」


◇ ◇ ◇


 昼食は、治癒師たちと同じ卓だった。


 豆と麦の煮込み。


 柔らかく煮た根菜。


 小さなパン。


 タクミだけが作ったわけではない。


 教団厨房の料理人たちと一緒に、大鍋を分けた。


「聖女様の分だけ、薄くしますか」


 厨房の女性が聞く。


 セレスティアは少し考える。


「皆と同じものを、少なめに」


「承知しました」


 皿が一枚だけ特別になることはなかった。


 タクミはそれを見てから、自分の分もよそう。


「今日は食べるんですね」


 ミアが言う。


「今日は、ではありません」


 セレスティアがパンをちぎる。


「明日もです」


 ミアが頷いた。


「いいと思う」


 それだけで会話は終わった。


◇ ◇ ◇


 午後、最初の分担祈祷が始まった。


 セレスティアは中央に立つ。


 けれど、全部を引き受けない。


 祈りの光が一本に集まる前に、複数の治癒師へ細く分かれる。


 イレーネが一つ。


 隣の治癒師が一つ。


 さらに二人。


 セレスティアはそれらを繋ぐ。


 タクミには、光の術式は分からない。


 ただ、食事をした後のセレスティアの身体は、以前より自分の輪郭を保っているように見えた。


「今のところ、残滓の流入は少ない」


 オルガが測定紙を見る。


 イレーネが次の治癒へ移る。


 その瞬間。


 若い治癒師の膝が折れた。


「止めて!」


 イレーネが叫ぶ。


 光が乱れる。


 倒れた治癒師の手から、杖が落ちた。


 新しいやり方は、最初から成功しなかった。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

今日の一皿はいかがでしたでしょうか。

少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価、感想で応援していただけると、とても励みになります。

また次の一皿で、お会いしましょう。

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