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氷血の皇帝は俺の料理を手放せない ~追放された料理人ですが、幼い日に救った少女が皇帝になっていて離してくれません~   作者: ジモンヌ
第4章 帝国料理人と、選び直す王女

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第41話 王国からの招待

 共同記録の写しを国境へ送り出してから、五日後。


 今度は、金貨ではなく白い封蝋の手紙が届いた。


 封には、翼を広げた金色の鳥と麦穂。


 アルディア王国の王印だった。


「僕に、ですか」


 タクミが尋ねると、リディは手紙を机へ置いた。


「半分はな」


「半分?」


「残りは国への正式な申し入れです」


 執務机の向こうで、シィルヴィアがすでに二枚目を読んでいる。


 内容は二つあった。


 一つは、ヴァルハイト帝国で始まった共同食堂と食事記録の視察。


 もう一つは、アルディア王国第一王女の食事相談。


 王女は長く体調を崩し、最近は食事そのものを受けつけない日が増えているらしい。

 温かいものでも、匂いが立つ前に下げられる。


 何を出しても、匙は置かれたままだ。



「治してほしい、とは書いてないですね」


 タクミが言うと、オルガが頷いた。


「そこは評価できる。『食べられる条件を一緒に探してほしい』だ」


 灰銀の髪を肩の後ろへ払い、手紙の一節を指で叩く。


「お前の報告書を読んでいる」


「じゃあ、行ってみたいです」


 答えるまでに、それほど時間はかからなかった。


 知らない国の食卓を見てみたい。


 それ以上に、食べられない人がいるなら、その理由を見てみたかった。


「行く」


 シィルヴィアが言った。


 タクミが顔を上げる。


「はい。行ってきます」


「違う」


 手紙が畳まれた。


「私も行く」


 リディが目を閉じた。


「誰がですか」


「私が」


「皇帝陛下が?」


「そう」


「隣国へ?」


「そう」


 確認するほど、答えが短くなる。


 オルガは興味深そうに二人を見ていたが、口は挟まなかった。


◇ ◇ ◇


 その日の午後、話は本当に御前会議へ持ち込まれた。


 当然、反対は出た。


「陛下が帝都を空ける必要はありません」


「料理人と実務官を派遣すれば足ります」


「王国側から皇帝陛下への招請は出ておりません」


 机の上には、国境警備、税務、裁可待ちの案件が積まれている。


 シィルヴィアは一つずつ聞いた。


 反論は急がない。


 代行できる裁可を分け、軍務は留守居の将へ、日常行政は宰相へ預ける。緊急時に使う伝令魔法の範囲も確認した。


「十日」


 最後に言う。


「往復を含めて十日で戻る」


「王都までなら十二日は必要です」


 リディが訂正する。


「十日」


「道を凍らせないでください」


「十二日」


 会議卓の端で、タクミは小さく息を吐いた。


 隣のミアが袖を引く。


「行く気だね」


「うん」


「皇帝も」


「……行く気だね」


 会議の最後、リディが招待状をもう一度開いた。


「一点だけ、確認しておきます」


 細い指が、派遣対象の行を示す。


 ――ヴァルハイト帝国より、共同食事政策に携わった料理人一名の派遣を願う。


 タクミは二度読んだ。


「僕だけですね」


「そうです」


 全員の視線がシィルヴィアへ集まる。


 シィルヴィアは招待状を受け取り、同じ行を見た。


「皇帝は来るな、とも書いてない」


 リディのこめかみに、細い筋が浮いた。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


今日の一皿はいかがでしたでしょうか。


少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価、感想で応援していただけると、とても励みになります。


また次の一皿で、お会いしましょう。

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