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ソフィアは自分の命を救えない――高校時代





「すごい。まるで太陽だ…」


船の上の男が言葉を漏らす。


「島の上に太陽が出来た」

もう一人の男が、言う。


「いま、夕方だよな…」


「昼みたいに明るいな…」



後に彼らは、あの日をそう語った。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「分かんないんだけど!」


ここは高校の中庭。


マヒルは、ローズの前の机に論文を投げ捨てる。


投げたのはソフィアの論文。


マヒルは襲撃され、ソフィアがそれを助けた。


ソフィアは今、入院中。


「読んでも意味不明。教えなさいよ」


「すごいですわね。

 あなたの国の言葉でも、この国の言葉でもないですのに」


「あたしは、外務大臣の娘。

 これくらいなら読めるわよ。

 それより、この論文。

 あたしの国の名前、一切書かれていないんだけど」


マヒルが出した論文は、2つ。


あの男にもらったものと、ローズに渡されたもの。


その2つのどちらにも一切、マヒルの国の名前が書かれていない。


なぜ、この2つの論文が島と関係しているのかつながらない。


「わたくしも分かりませんもの」


「あんた、説明してたじゃない」


「聞いたことを伝えただけですわ」


微笑みながらローズは答える。


「あんた、真実は自分で確認しろと言ってたじゃない?」


「わたくしは、その論文以外に外交資料、軍事会議の記録、

 通信障害の解析を拝見しました。

 それで、判断いたしましたの」




「ところで、マヒルは、ソフィアを許すか、許さないか決まりましたの?」


マヒルは、グッと答えに詰まる。


「それは、まだ、わからない…」


小さな声で答える。


「あたしは、この論文すら分かっていないのよ

 本当にあの男が言ったことが間違っているのかどうかも分かってない」


ソフィアが、あのとき黙ったまま何も言わなかったのは、正直まだ腹立たしい。

しかし、ソフィアは、自分をかばって怪我もしている。


「時間をかけて、決めてくださいまし。

 自分で決めた選択は、自分で責任を取らないといけませんわ」


ローズは、飲み干したカップを置く。




「ところで、わたくしは、これからソフィアのところに行く予定です。

 マヒルはどうしますか?」


マヒルは少し考える。


ソフィアを許すかも決めていない。


でも論文のことは聞きたい。


もう一つ聞きたいこともある。


ローズと一緒なら足を運びやすい。


「いくわ」 と答えた。


「それにしても、なんか、あんた今日、声低いわね」


よく見ると口は笑っているが、目は笑っていない。


「あんた機嫌悪い?」


「気のせいですわよ」


手には、ハリセンがある。


いつもの扇子はない。


「それ何?」

 

「東の国では、悪い子をこれで叩く文化があると聞きましたの。

 あの子の自分だけは計算に入れない考えを改めさせようと思いまして。

 東の国の教育器具ですわ。」


バシン!彼女は、手にたたきつけ音を鳴らす。


「いや、教育器具じゃないだろ」




――――――――――――――――――――――




病室の中、ローズがソフィアにいう。


「今回取った行動についての確認ですわ」


バシン!とハリセンがなる。


「確認というより、拷問ね…」


ソフィアは、もともと小柄だが今は更に小さく見える。


「コルチゾール及びアドレナリンの血中濃度の急上昇は、血圧を上昇させる。

 ローズは、深く息をするべき」


ソフィアが言う。


意に介さず、ローズが言う。


「まず、単独で現場に行ったことについてですわ」


「マヒルの車には位置情報発信器がついていた。

 あの場所と屋敷の位置から到着時間を計算した。

 ハンツの車の性能は高い。

 自動走行も可能。

 防弾加工も施されている。

 あの車であれば、部隊より早期に到着可能。

 単独で対応可能と判断した」


「説明が長いわね」


マヒルが言う。




ローズは、ハリセンを机に打ち付けた。


またもバシン!という音が鳴る。


その音に反応してソフィアが体を震わす。


マヒルは、それがちょっとおかしかった。


「次に銃撃戦ですわ」


「相手側から、撃ってきた。

 威嚇発砲は必要事項。

 それに発砲の訓練は、近日行なった。

 対して、彼らの習熟度はそれほど高くないと判断した」


「また、長いわね。

 ソフィア、あんたもしかして、焦ってんの?」


ローズが、ハリセンを握りつぶす。


ソフィアが珍しく体をこわばらせているのが分かる。


「なんか、かわいいわね…」




「最後に、ハンスの車にマヒルだけ乗せて発車させたことですわ。」


「車の後方から確認したところ、運転手はハンドルに寄りかかっていた

 しかし、運転手の背部が規則的に上下に動いていた。

 呼吸がある状態と見た。

 あと、車内に出血を確認した。

 負傷し動けないと判断した。

 一方マヒルは、錯乱している状態だった。

 外傷はなし。

 運転手は、わたしの力ではすぐには動かせない。

 応援部隊も二分程度で到着する計算だった。

 まず、ハンスの車にマヒルをのせ、自動走行で現場を離れさせる。

 マヒルの安全確保実施。

 次に現場にわたしが現場に残り運転手を守る。

 この選択が、二人の生存確率が最も高い値となった。」


「もう、何言ってるか、分からんわ」 とマヒル。


「なるほど、よお~く、分かりましたわ」 とローズ。


「え、今の分かったの?」 とマヒル。


「それでは、ソフィア、覚悟はよろしいですわね」


ハリセンをバシバシ言わせながらローズが近づく。


更に小さく縮こまるソフィア。


肩が小さく震えている。

 

バシン!!!


ソフィアの頭にハリセンが直撃した。




「外傷が…増加した…」


ソフィアが言う。


「しませんわ!

 そう言う仕様です」


「ソフィア。

 あなた、自分の命をカウントしないそのくせ、何とかなりませんの?」


黙るソフィア。


そして、ローズはマヒルを振り返る。


「マヒルもです。

 あなたも自分の命を軽視するところがありますわ!」


「なんで、あたしも怒られてんの?」


「二人とも、子供過ぎます」


ローズは、マヒルにもハリセンを浴びせる勢いだ。


「自分が死んで、はい、終わりではありませんのよ。

 自覚を持ちなさい」


「ええ~?」




「マヒル、その手に持っている書類は?」


ソフィアが割って入る。珍しく、声が大きめだ。


「ああ、そうそう、あたしこれについて聞きに来たんだけど

 いいでしょ?」


ソフィアの論文を出す。


ローズは、深呼吸をした。


ゆっくり、椅子に座る。


「助かった」 マヒルがつぶやく。


「今、何か聞こえましたわね?」 とローズ。


無視して、マヒルが続ける。


「この論文、あたしの島のこととか一切書かれてない。

 なんでこれが、あたしの国と関係するわけ?」


ソフィアは、一瞬沈黙。


「それは、プログラムを走らせないと理解出来ない」 と言った。


「プログラム?」



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