忘却という名の処刑(第1ステージ・第1問)
新作始まりました。
他にも多数作品公開しておりますのでどうぞお立ち寄りくださいませ(^ω^)_凵
https://mypage.syosetu.com/1467772/
「……う、ぐ……」
強烈なLEDの光が網膜を焼き、佐藤公康(50)は割れるような頭痛とともに意識を浮上させた。最後に覚えているのは、銀座の冷たい雨。泥酔してタクシーを待っていたはずが、今、彼が拘束されているのは、眩いほど白い解答席だった。首にはずっしりと重い金属製のカラー。
『さあ、始まりました! 視聴者数1億突破! 究極の審判! クイズで殺しまSHOW!!』
地鳴りのような拍手と、無数のスマホのレンズ。モニターに映し出されたタキシード姿の「沈黙の司会者」が指を鳴らすと、無機質なルールが読み上げられた。
『ルールは単純です。これから現れる10名の出題者が、あなたに関わる問題を各3問ずつ出題します。公康氏、あなたが**1問でも間違えれば、即刻、この世から退場(死)**していただきます』
『そして、あなたが脱落した瞬間、賞金10兆円は出題者の女性たちに全額、分配されます』
「退場……? 10兆円……?」
公康が混乱する中、ステージの反対側に一人の女性が現れた。
安物のカーディガンを着た初老の女性。彼女は公康を、汚物でも見るような目で見つめていた。
「……あ、ああ。君は……確か、ええと……」
公康は必死に記憶を弄った。見覚えはあるが、名前が出てこない。
「……ユミ? いや、アキコだったか?」
その瞬間、女性の顔が怒りで真っ赤に沸騰した。
「……アキコ? 誰よそれ! 私は恵子よ! 30年前、あなたの子供を身籠った私に、『勝手に産めば?』って言い放って逃げた、恵子よ!!」
恵子の絶叫がスタジオに響き渡る。
彼女たちは、公康が正解すれば「自分が消される」ことなど知らされていない。ただ、公康を間違えさせれば、自分たちが10兆円を手にし、人生をやり直せるとだけ信じ込まされている。
「ごめん、恵子……そう、恵子だ。思い出してきた」
「嘘おっしゃい! 名前も忘れていたくせに! ……いいわ、10兆円のために、あなたには今ここで死んでもらう」
恵子は震える手でボタンを押し、最初の問題を突きつけた。
「第1問。……30年前の夏休み、私たちが初めて旅行に行った旅館の名前。そして、そのロビーに飾られていた花の名前を答えなさい」
公康の心臓が、早鐘を打つ。
(旅館……? どこだ。熱海か? 箱根か? 花なんて、飾ってあったか……!?)
恵子にとって人生の絶頂だった記憶は、公康にとっては「数ある情事」の薄っぺらい1ページに過ぎない。
「……どうしたの? 早く答えなさいよ。10秒経てば、あなたは死んで、私にはお金が入るのよ!」
10、9、8……。
カウントダウンが始まる。公康は、自分の命を繋ぎ止めるため、泥沼のような記憶の底へと指を突っ込んだ。




