3-3.七星が人間
僕の知りうる知識では、というかカードゲームやテレビゲームで得た情報では、天使の羽が無いだとか、片方しかないだとか、こういうのって、よく無かったと僕は思う。
七星は、自分は片方しか羽根がないと言った。
「か、片方って、もう片方はどうしたの?」
僕は問う。
「ちょっとね。昔ルール違反をしちゃって、取られちゃったのさ」
「ルール違反?」
「ま、アンタには関係ない事。だから、タイムリープなんかも悪用しちゃダメだよ?もう片方もがれたら、アウトだし」
「アウト?」
「そそ、アウト。天界強制連行で、羽根が無くなったら大天使になれないし」
「大天使?」
七星の事は、聞けば聞くほど訳がわからない。いや、僕は今まで七星の天使に関する事は聞かないでいたのだ。
なぜなら、七星が人間じゃない事を確認してしまうからだ。
それにしても、聞けば聞くほど分からない。
「そう。大天使。まぁ、役職付きの天使ってとこかな?」
「ヤクショクツキ?」
「まぁ、偉くなるわけ。それで大天使は与えられた使命を全うすれば、願いが叶う」
「願いが叶う!?」
「そう。凄いでしょ?でも、大天使になって使命を果たすのは一握り」
今日の七星は、よく喋るな、と思う僕。
「使命って?」
「ミッションって感じ?」
なんとなく僕は理解する。
「七星は願い事とかあるの?」
自由奔放で、祝福が使える天使に、願い事などあるのだろうか?
「人間になりたい」
ここは水族館で、目の前にはあざとく存在するペンギンがいて、僕と七星が立っていて、そして、七星は静かに泣いていた。
初めて見る、七星の涙。
なぜ、泣くのか、この時の僕は理解できなかったけど、加代子さんの涙も見たし、僕は女泣かせの男のような気分だった。
「どうして、泣いてるの?」
その問いかけに、七星は答えない。
そのまま少しの時が経ち、七星が口を開いた。
「ごめん。嘘ついた」
「え?」
「ほら、シケっぽくなったし、あっちのイルカショーを見に行こうよ!」
七星、湿っぽい、だ。
僕は言及をやめて、イルカショーのあるステージへと歩き出した。




