3-2.七星がペンギン
斜め前には加津代食堂。加代子さんがいる。
僕と七星は時間差で家を出て、駅に集合する。
2人で電車に乗る。
僕と七星の時間だった。
久しぶりの感覚である。
七星と、ウソだけど付き合っていたんだ。
こうやって2人で、帰ったりしていた。
僕はそれを思い出していた。
電車に揺られながら、僕は高嶺さんの別荘の話だとか、高嶺さんの庭の話だとか、加代子さんの話題を避けながら話をしていた。
こうしてたどり着く、水族館!
僕らの住む街の隣の水族館は、最近改築されており、とてもお洒落で綺麗だった。
チケットを購入し、中に入る。
水族館の料金がこんなにも高いだなんて、僕は知らなかった。
やはり、七星といると、知らなかった事に出会える。そんな、感じがした。
小さなお魚の水槽が並んでいる。
群れをなして泳ぐ魚、水槽にひとりぼっちの魚、神様がどんな基準で着色したのか分からない、奇抜な色の魚もいる。
口をパクパクしている魚が、七星とにらめっこしていた。
「魚の正面の顔って、案外マヌケで可愛いね」
僕も水槽を覗いてみた。
確かに、魚の正面の顔はどこかおかしい。
僕たちは普段、左向きの魚を横から見る事や、そういったイラストが多いから、その顔に慣れてしまっていたのだ。
そんな七星のおっぱいは逆に、正面から見るより、横から見るとその大きさをより堪能できる。
いや、今はおっぱいではない!!!
「む、向きによって、見る角度によって、印象が異なるのは、人間みたいだね」
「そう?」
「うん。見た目だけじゃなくてさ」
「ふ〜ん」
七星が水槽に人差し指を押し当てると、魚が寄ってきた。指を動かせば、その方向に向かってくる。
「ふふ、かわいい」
そんな、七星が可愛いと思う僕だ。
水槽が並ぶコーナーを抜けると、ペンギンさんたちがあざとく存在している。
岩場と深めの水槽が、何処かの岸壁を再現しているらしい。岩場には白い何かがベチャっと垂れていた。
あるペンギンはぼーっとしたり、毛繕いをしたり、泳いだり、檻の中で、皆が自由に過ごしている。
「昔、飛べたんでしょ? ペンギンて」
七星がペンギンを見ながら言う。
よく聞く話である。退化なのか進化なのか、ペンギンの先祖は昔飛ぶことが出来て、知らぬ間に飛べなくなって、今は海を飛ぶように羽根を動かして泳いでるのだ。
「うん。でも僕は今の姿の方が好きだな」
「わたしも。こんなの飛んでたらびっくりする」
僕は、ふと思いついたことを七星に聞いてみる。
「天使って飛べるの?」
「羽があるだけ。そんで、重力が無いだけだよ」
「重力がない?」
「天界は重力がないの。だから羽を使って、推力にしてるんだよ」
「へぇ〜。じゃあ、七星もパタパタと飛べるんだ」
「飛べるけど、私は片方しか無いから上手く飛べない」
ふ〜ん。
って、え?片方だけ?




