3-1.七星が天使
あの花火の日から4日後
七星が帰って来た。
帰って来て1日後、連日恋愛ゲームで現実逃避をしていた僕の部屋に七星が押しかけて来た。
妹が余計な計らいをし、僕の部屋へ七星の侵入を許してしまったのだ。
七星は僕の勉強机の椅子に座って、机を見ながら、僕はベッドで横になって壁を見ながら、会話をしている。
会話、というか、七星からの説教のような、諭しを僕は聞いていた。
七星は加代子さんから、この夏の一連の話を聞いたそうだ。
「カヨちゃんにも言った。カラダとか、安売りしちゃダメだって」
七星から改めて、加代子さんが僕を好きであることを聞いた。そして加代子さんが焦って僕に色仕掛けをして、近づこうとしたことも聞いたのだと言う。
加代子さんはその気になれば、キスの先も辞さない構えだったという。僕もそうだった。
「アンタさ、たぶん、色々整理ついてないよ」
無言の僕。
「ラブアシスト制度の欠点ね。アンタ、ちょっと恋愛に対して、キャパオーバーしてるんだよ」
キャパオーバー?
「高嶺さんとか、カヨちゃんとか、私とか」
私とか?
「たぶん、今までの生き方とガラリと変わっちゃって、色々整理がついてないの」
僕は考える。
恋愛ゲーム。
恋愛ゲームは、決められた道が複数存在するだけだ。多くても100。いや、それ以上あるかもしれない。
好きな場面をセーブし、ロードする。
好きなタイミングでボタンを押し、テキストを送る。聞き逃した会話を読み直せる。
じゃあ、いま僕が生きていて直面する恋愛はどうだろう。
決められた道などなく、挙動、発言のひとつひとつが分かれ道となる。そう考えれば、天文学的な数字の生き方、恋愛の仕方があるのだ。
セーブやロードなどないし、テキストをじっくり読む、なんて事はない。矢継ぎ早に過ぎる時間に、ただ、行動しなくてはならない。
改めて僕は思う。
恋愛って、どうしてこんなに難しいのだろう。
「しばらく、考えたくない」
僕は壁に向かって喋る。
「それもいいかもよ」
七星も机に向かって喋る。
「僕は最低だ」
「私には、最低だとか最高だとか、よく分からないけど」
無言の僕。壁の模様が、よく見れば迷路みたいで、それをなぞる。
「ま。人間ってカンジで羨ましいよ」
七星が言う。
僕にはその言葉が、とても悲しく聞こえた。
僕は七星が天使じゃなかったら良いなって、思うことが多々ある。
七星も、本当は人間になりたいのかな、と僕は思った。
「こういう時は、気分転換だよ。ゲームばっかりしてないで、水族館にでも行こうよ」
「え?」
「いいじゃん。ダメ?」
「い、行く」
僕はベッドから起き上がり、七星を見る。
久しぶりの七星は、可愛いし、夏の服はおっぱいを強調しているではないか!
おっぱい!!!!!
いや、今はおっぱいではない!
とにかく僕はカッコいいと思う服に着替えて、七星と家を出る。




